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36.溺愛の証ドレスで装備万全です

 こないだ見たばかりの伝書インコを頼んだ。夜会があることを話して聞かせ、青いインコを見送る。すぐに着くんだって。服装もちゃんとしてきてね、とお願いした。


 召喚は夜会の前に行うことにして、まずは遅いお昼ご飯。謁見の広間で話してる間に、おやつくらいの時間になってた。お腹空いた私を、慌ててリディが抱き抱える。大きな宮殿の中を移動して、到着するとすぐにスープが出された。


「はい、あーん」


「あーん」


 素直に口を開ける。これだけ続くと悟るよ。拒んだら食事が遅くなるし、リディやアゼスが泣くの。子どものうちは食べさせてもらってもいいよね。この手じゃ、ちゃんとカトラリー扱える気がしない。箸があれば何とかなりそう。


「箸……たしか献上品で見たな」


 アゼスがうーんと唸る。さすが皇帝陛下、献上品が届くんだ。ということは、箸を使う文化の国があるのか。行ってみたいな。


「調べておこう、今日はあーんだ」


 アゼスが小さめのスプーンで魚を掬う。ちゃんと骨も皮も取られた身をぱくり。トマト味みたいな酸味があって、さっぱりしてる。塩味がベースかな。あさりの匂いがする。もぐもぐ食べる私の口元に、次は肉が運ばれた。これは皮をぱりっと焼いた鶏肉だね。


 リディがフォークに刺した肉を口に入れて、薄めた果実水で流した。ソースが少し塩辛いかも。こってりよりあっさり薄味の方が好き。私が心の中で呟いた感想は、次々とリディから侍女経由で伝えられていく。料理人さんが怒られないならいいや。


「食べたらドレスね。オーダーしてあるから、どれを着るか選びましょうね」


「オーダー?」


「そうよ、抱っこした時にサイズを測って連絡したの。もう出来てきたのよ」


 それって宮殿からの命令で急がせたの間違いじゃない? 無理を押し通してないといいけど。針子さんの心配をしながらも、新しいドレスに興味はある。前世でそんなにオシャレに興味なかった私だけど、外見が可愛いお人形になら着飾ってみたい。平らな日本人顔で諦めてたのよね。


 好きな服と似合う服は違う。まさに私はその状態だったと思う。平凡な日本人顔で、好きな服はひらひらのロリータ服だった。もちろん似合う子もいるけど、あの頃の私は無理。山登りでゴツゴツした体と日焼けして荒れた肌、短い手足じゃ似合わなかった。


 今なら銀髪美幼女だから、きっと映えるよね。ちらっと見上げるリディが「もちろんよ」と太鼓判を押してくれた。食べ終えた私はすぐに抱っこで移動し、肌を磨かれてドレスの前に座る。色とりどりのドレスは素敵で、どれも選べなかった。


「今回は私が選ぶわね。これと、それ……飾りはこっちのを使いましょう。靴はあれにして」


 あっという間に用意が整った。着飾った私は鏡の中で驚きの変貌を遂げている。昔の記憶があるから、違和感すごいね。


 さらさらの銀髪は、上の方だけ複雑に編み込まれた。ドレスの色は明るいピンクだった。なんて言うのかな、可愛いピンク……語彙がなくて表現できないけど、すこしオレンジ入ってるのかも。刺繍にパールや透明のビーズに似た飾りが混ざってて、ドレスがキラキラ光った。同じ色のリボンが耳の横に垂れて、ウサギ耳みたい。


 小さなティアラを飾り、首にもネックレスが掛かってた。さすがにピアスは穴がないから無理で、代わりに指輪を嵌めてもらう。緩かったのに、着けるとピッタリになった。魔法っぽい。私が着替えてる間に、同じ部屋でリディの身支度も整えた。ワインレッドの胸元際どいドレスは、マーメイドだっけ。


「これでいいわ。さあ、行きましょう」


 当然のように抱っこされたけど、抵抗しない。だって、履かせてもらった靴はドレスの長い裾に隠れて、とてもじゃないけど歩けそうになかった。溺愛の証だから仕方ないのかな?

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