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29.いつでも会えるなら召喚も悪くないね

 アランにお風呂に入れてもらい、濡れた髪をエルが乾かしてくれる。至れり尽くせりって、このことかも。温かなお湯は贅沢らしく、自宅で湯船に浸かれるのは金持ちの特権なんだって。


「じゃあ、街の人は水で洗うの?」


 心配になって尋ねたら、違うみたい。


「大浴場があります。小さな村でもお風呂はありますが、屋敷に風呂を持つのは成功者の証ですよ」


 アランの説明は丁寧で分かりやすい。エルはわりと途中を省いて結論だけ投げるし、リディもそういう傾向あるよね。あれかな、きっと逆の立場なら私も同じ気がする。リディ達が私の世界に来たら、何が違うのか分からない。そうしたら尋ねられるまで答えないと思うんだ。


 互いの常識が違うと疑ってかからないと、とんでもない騒動に巻き込まれそう。声に出して尋ねる癖をつけよう。子どもの外見を生かして、今のうちに尋ねまくらないと、育ったら馬鹿のレッテル貼られそう。


「そんな失礼なことは誰にも言わせませんよ。何か分からなければ任せてください」


 にこにことアランがお茶を差し出す。受け取って飲みながら、隣で服を選ぶエルを見つめた。明日着る服の候補らしい。


「アゼスの背に乗るなら、このパンツ姿」


 好みではないが、パンツ丸見えで飛ぶよりマシだろう。そんな感覚でイチゴパンツを指差す。ところが、思わぬ提案があった。


「裾の長いスカートなら、座った時に巻き込めば捲れないと思うんだ」


 だから可愛いドレスにしよう。エルの提案の前半はいいけど、後半は使えない。だってドレスは危険だもん。


「いえ、ドレスなら布が多いので落下時間が稼げます。万が一の場合、逆に安全かと」


 え? そんな理由? 落ちた時、パラシュート効果があるって意味ね。それに落下地点も発見しやすいかも? あ、違う。毒されてるわ。落下した時点で私はバラバラじゃん。


「やはりドレスか」


 うーんと唸るエルに選択を一任し、私はごろんとベッドに横たわった。シーツはすべすべで柔らかくて気持ちいい。ハーブっぽい香りがする。上掛けは柔らかくて軽い。羽毛だったりして。


「アランはいつ来るの?」


「仕事が終わり次第、すぐ追いかけます。離れるのは辛いですが、明日には会えますよ」


「明日、お仕事終わるの?」


 だったら一緒に行けばいいのに。首を傾げた私に、アランが「ああ、そうなのですね」と呟いて説明を足してくれた。


「我々は主人を持つと、その居場所へ一瞬で召喚されることが可能です。方法は朝ご説明しますね。召喚されれば、毎日会えます」


 召喚……あまりいい単語じゃないね。私がこの世界に呼ばれたのも、聖女の召喚ミスでしょ? でも、皆と会えるのはいいな。


「朝、絶対に教えてね」


「もちろんです。さあ眠りましょう」


 ぽんぽんと上掛けの上から叩くアランのリズムと、他愛ない雑談。皇帝陛下の宮殿のことを聞いていたら、いつの間にか眠ってしまった。ふわふわした気持ちで眠ったからか、空を飛ぶ夢を見た気がする。

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