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28.世間知らずは損をしそうだね

 ドラゴン見物は後日となった。というのも、伝令の魔法鳥が届いたのだ。前世で言う伝書鳩だね。手紙じゃなくて伝言を口頭で伝えるオウムが近いかも。見た目は鮮やかな黄緑のインコなんだけど、すごく飛ぶのが早いらしい。手乗りサイズの小鳥が、小さな嘴で器用に言葉を紡ぐ姿は可愛い。


 手を差し出すと、ぴょこんと私の手に乗ってくれた。ほんわかしちゃう。この鳥は郵便代わりに、気軽に使えるらしい。ちゃんと郵便局に似た会社があって、そこへ行くと鳥を貸してくれるんだって。もちろん、このインコは皇帝陛下の宮殿で飼われてる子だけど。


「伝言を持ってる鳥が襲われたら、どうするの?」


 途中で伝言が途切れちゃう。そう尋ねたら、不思議そうな顔をした聖獣達が口々に教えてくれた。インコを襲う鳥や生き物はいない。なぜなら捕食しても食べるほど肉がないし、襲うと呪われるのだとか。異世界特有の事情があるのかな。襲われないのはいいことだよね。


 頭を撫でると、インコは嬉しそうだった。水を貰い、餌を啄むと飛んでいく。手を振って見送った私を、皇帝陛下が肩車した。


「うわっ、高い!」


「どうやら戻らねばならん仕事が出来た。共に帰ろうぞ、リディも参れ」


 さっきのインコが伝えたのは、聞いた覚えのない言語だった。暗号かも知れない。内容は皇帝のアゼスが言った通り、事件が起きたこと。解決のためにすぐ戻るとか。まさか飛んで帰るの? どきどきしながら覗き込んだら、笑って頷く。あ、八重歯が立派。変な特徴を見つけてしまった。


「いいわよ。じゃあ、あの件は二人に任せるわね」


 奥さんのリディが一緒に帰るのはいいけど、やっぱり背中に乗っていくみたい。そして頼まれた二人は、当然だと拳を上げて答えた。何かお仕事が残ってるのか。皆一緒が楽しいのに。


 領主だからエルはこのバーベナの街に住んでいる。折角仲良くなったのに、別れるのは辛い。この世界で私が仲良しなのは、まだ4人だけだもん。減ると考えただけで、鼻の奥がツンと痛くなった。涙が出そう。


「心配しないで。聖獣と主君の繋がりは強いから。いつでも会えるんだよ」


 頷きながら、社交辞令だろうと考える。よく大人に「また遊ぼうね」というと「今度ね」と返してくれるやつ。実際には長い時間、その「今度」は訪れないの。しょんぼりした私を、リディが笑顔で撫でる。


「安心して。しゃこーじれぇ? はこの世界にないわ。約束は契約と一緒で、必ず守られるものよ。だからサラちゃんは約束するときに注意しなさい」


 こわっ、世間知らずだと苦労するね。リディにきちんと教えてもらわなくちゃ。


「安心いたせ、サラはまだ幼い故……我が権限で契約を無効にしてやる」


「それって暴君?」


「いいえ、親の権利よ」


 意外としっかりしてた。急ぎならこのまま飛び立つかと思ったけど、明日でいいと聞いて安心する。こないだ注文したキュロットならいいけど、スカートだと捲れちゃう。諦めてカボチャならぬイチゴパンツで乗るしかないかも。


「今日はアランとエルと寝る」


 明日から離れちゃうし。そう言って笑ったら、皇帝夫婦は残念そう……じゃなかった。もしかして夫婦で仲良く? 想像して顔が熱くなったら、リディの耳も赤くなってる。そっか、邪魔しないようにするね。

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