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26.皇帝陛下のパパ、正体は!?

「我だけ仲間外れか」


 しょんぼりした感じが、叱られた巨大熊みたいで哀れを誘う。申し訳ない気がして、小さな手を目いっぱい伸ばして頭を撫でようとした。が失敗して、届いたのは顳だった。それでもいいと撫で続けたら、周囲の生ぬるい眼差しが刺さる。


「優しい子だ。リディが惚れ込むのもわかる」


 妻が見知らぬ幼女に惚れ込んでいいの? 得体の知れない異世界産で、しかも彼女らの言葉を借りるなら何か混じってるらしいけど。こてりと首を傾げたら、「うっ、これは勝てぬ」と額と目元を押さえて呻かれてしまった。


 勝つも負けるも勝負すら始まってないよ。じっと見つめる私を、皇帝陛下は真っ直ぐ見下ろした。真っ赤な髪に真っ赤な目、好戦的な感じがするね。ガタイは大きくて威圧感あるけど、お顔はよく見たら可愛いかも。撫で撫でと頬をさすっていたら、後ろから「羨ましい」とエルの声が聞こえた。


 後でエルも撫でるね、心の中でそう伝えた。立候補でアランとリディも追加されちゃった。何だか、聖獣って可愛い。すぐに競って、まるで子どもみたい。ふふっと笑った私に何を思ったのか。皇帝陛下は私を頭上高く掲げた。いわゆる、高い高いのポーズだ。固まってしまった。


「我も契約するぞ」


 脳裏で響いた契約成立の声に、もう反論すら出ない。こちらの意思を無視する契約って、有効なのかしら。むぅ……と唇を尖らせたら、ぎゅっと抱き締められた。


「し、ぬ……っ、くるし」


 タップタップ! 息が止まりそうになり、慌てて皇帝陛下の肩を叩いた。全力で叩いて、ようやく緩む。真っ赤な顔で、はあはあと呼吸を整える私の頬に髭がじょりっと触れた。好青年な外見のエルより、皇帝陛下の方が熊って感じ。


「我は熊ではないぞ、サラ」


 いつもながら勝手に心を読む聖獣様。ではどんな動物かな? どきどきしながら期待の眼差しを向ける。ついでに言葉でも催促してみた。


「皇帝陛下は何の聖獣?」


「我はそなたの聖獣だな。それとパパと呼ぶがよい」


 いや、リディもママと呼べって言わなかったっけ? 似た者夫婦なのね。それは置いといて「何」の部分をそう解釈して返事されたのは、天然なの? それとも誤魔化し?


「パパ? 何の動物なの」


 直球でもう一度尋ねた。気になるじゃん? 気になるよね。だって、熊じゃないみたいだし。体がこんなに大きくて、毛皮のある動物って、あとゴリラくらいしか知らないもん。


「ゴリラ……って何?」


 エルがこてりと首を傾げる。この世界にゴリラいないの?! 似て非なる世界、一つずつ覚えていこう。じっと見つめる先で、皇帝陛下のパパがにやりと笑った。なんていうか、コワモテ系の悪役顔だった。あの話し方が似合う感じ。


「見せた方が早いな」


 皇帝陛下は私を下ろすと、ぶわっと巨大化した。あの大きな体がさらに膨らんで、あっという間に鳥が現れる。勉強不足でごめんね、この鳥って何?

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