ハズレの光属性魔法を覚えた勇者は無能だと言われ勇者パーティを追放されたが、影属性の女勇者と出会い最強のSSSタッグになりました⁉俺、このユニークスキルで無双します!
「ていうかさぁお前の属性、なにに使えんの?」
ダンジョン攻略中、そう俺に言う勇者パーティの一人、火属性使いのアレク。赤い短髪に赤い鎧で身を包み、自分の火の熱に耐えられるような断熱仕様になっている。彼は戦闘の時はいつも先陣に立ち、火力役に徹している。そうだよなぁ、火は爆発とか威力も高いし、料理の時も使えるし・・・・・・
「そうだな、お前のスキルは眩しい。敵に少しは有効かもしれんが、俺たちの方にデメリットが大きい気がしてならない」
氷属性使いのヒュウガ。青い長髪にローブを羽織っている。彼のスキルは足止めをしたり防御壁や足場を作ったりと何かと便利だった。
「ま、まぁまぁ。このダンジョン暗いですし、明かりがあって助かってますよ……?」
「そんなものは俺の火でもどうにかなる。火の方が目に優しいだろう」
緑のショートヘアー、草属性のサリアが間に入ってくれたが、アレクに諭されてしまった。
堅物ゴリマッチョ土属性のゴレンは黙って頷いているだけだ。
「悪いが天城、お前はもう俺たちのパーティにいらない。出ていってくれ」
アレクが俺、天城にそう言った。悔しいが今役に立っていないのは事実だ。反論できる余地もない。
「わかったよ、だけど後悔しても遅いからな! 俺はもう戻らないぞ!」
俺の言葉を聞き四人が一斉に笑う。
「必要になったら声掛けてやるよ! まぁそんな時はないだろうがな」
こうして俺は勇者パーティの一行から外れることとなった。
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同日夜
「くっそぉぉぉぉぉぉぉ!」
中肉中背で腰に短剣を携え、白髪に白金色のローブを羽織った18歳になったばかりの天城は酒場の机を思い切り叩き、顔を擦り付ける勢いで突っ伏した。今は痛みなんて全く感じなかった。
「なんで俺の属性、光なんだろう……」
そう嘆くがどうしようもないのは分かっていた。生まれ持った時の体内のコアによって属性は決まるのだ。そのコアにあった属性守護神が体内に宿る。今更変えようと思って変えられるものでは無い。
ちなみに同じ属性魔法を使えるものはこの世に居ない。光魔法を使えるのは世界でたった俺だけだ。もちろん他の属性もそうだけど……
「これからどうしよう……」
生きていくにはもちろん、お金も必要だ。だが勇者パーティを外れた俺に稼ぐ手段はそう多くない。
突っ伏していても仕方がないことに気づいた天城は、募集中の仕事が貼られている掲示板の方へと歩み寄った。
「何か俺に出来そうなものは〜……」
近場の魔物退治や輸送の護衛などの戦闘系は今の俺には無理だった。だって周りを激しく照らすフラッシュの魔法くらいしか使えないんだもん。
「お、これなら!」
目に付いたのは、壊れた外灯がある地域の照明係だった。これなら道具も何も必要ないし、俺のスキルだけでもどうにかなりそうだ。
「よし! 早速お金を稼ぐぞー!おー!」
そう意気込んだ天城は意気揚々と酒場を後にしたのであった。
「天城くん、本当に照明機はいらないのかい?」
仕事現場で依頼主にそう聞かれる。
「はい、大丈夫ですよ。っと、ほら。明るいでしょう?」
得意のフラッシュの魔法で辺りを煌々と照らす。すると依頼主は大変驚いた様子で、感動していた。
「ほぉ〜! 夜にこれほどまで明るい光を見たのは初めてじゃ! まるで太陽みたいじゃの〜ほっほっほっ」
「ハハッ、ありがとう。これくらいしか使い道ないんだ……」
そう謙遜するがここまで感謝されるのは気持ちがいいものだ。俺の転職はこれなのかもしれない。
しばらく無言で当たりを照らし続けた。四時間は経っただろうか、もう深夜だ。あたりを通る人も少なくなってきた。
人がいなくなってきて気づいたが、俺のフラッシュの魔法に反して異様に暗いところがある。俺の光だとあそこまで照らせているはずだが……。
なぜだか気になりその場所に近づいていった。しかし近づいていってもその場所だけは、ほとんど明るくならなかった。
「な、なんだ……?」
かなり近くまでやってきて分かった。人がいる。その暗い場所の真ん中に人がいた。
「あ、あの〜。そこで何をしているんですか?」
「そこに光があったから……」
何を言ってるんだこいつは。ポエマーにでもなったつもりか?あいにく俺は国語の成績が悪いんだ。お前が何を言いたいのかさっぱりわからん。
ポカーンとその人影の方を眺めていると
「あなたの光、暖かい」
あ、そうですか。まぁ光は熱っていいますからね。自慢じゃないけれど、俺の光は暖かいよ〜。母さんの温もりっつって。
「あ、ありがとう。でも早く帰った方がいいですよ」
「……そうですね、そうします。またどこかで」
そう俺に言い残し、先程までいた場所にいた人物はもうそこにはいなかった。その後その場所に明かりが行き渡った。
「なんだったんだ……それになんで、ここだけ暗かったんだろう」
変なことに遭遇したもんだと、天城は脳内のオカシな出来事目録にその1ページを刻み込みながら、仕事を最後まで全うした。
翌朝、初めての夜勤にクタクタの体を無理やり動かしながら俺は街を歩いていた。
「さて……追い出されてギルドにも行きづらいしなぁ。今日からどこに泊まろう」
ギルドには魔王討伐をする為の多くの勇者がいる。そこにはそれぞれの属性守護神に選ばれた者が集まる。もちろん俺のいたパーティもだ。一人で行って笑われるのも癪なのでひとまず避けることにした。
そんな風に今後のことを考えながら朝食に何を食べようか市場をうろついていた。手ごろな値段のアップルパイを購入し、市場から少し離れた花壇の近くにあるベンチに座り込み食事を始めた。
「あぁ美味い……! 労働のあとの飯はこんなに美味いのかぁ!」
ダンジョンや狩りでの途中に食べる食事とはまた違った美味しさがあった。安全な場所で安全なご飯。まずいわけがない。
そんな風に感動しながら黙々と食べていると、あたりが少し暗くなったような気がした。
「あ、あれ……? 空は晴れてるのに、なんで……」
そう呟いたその時、後ろから声がかかった。
「昨夜ぶりです、天城」
後ろを振り向くと、ブラックホールのような暗闇がそこにはあった。真ん中に向かっていくにつれて、闇が一層暗くなっている。そのど真ん中に一人の女性がいた。彼女は夜空のように綺麗な色のマントで口元を隠していた。
「な、なんだこれ!?」
「驚かれるのも無理はありません。私は影の属性守護神に選ばれた夜宮と申します。昨夜は私を照らしていただきありがとうござました」
髪は肩にかかるくらいの長さで、色は深夜の空のような透き通った紫色をしていた。瞳は皆既月食のような赤色をしている。
「あ、あぁ昨日の……あなたも勇者だったんですね」
「はい。ですが勇者ギルドには登録していません。私の属性は、光がないとあまり活躍できませんから……」
なるほど。光あるところに影ありってことね。たしかにこの属性だとあまり勇者パーティからは歓迎されないかも。
「そっか。だから僕の後ろから現れたんだね」
アップルパイの美味しさに感動して、光が体から漏れていたらしい。その光が影を作っていたんだろう、彼女はそこから出てきているようだ。
「あの、昨夜の酒場の様子を伺っていました。まるでダンジョンの途中で勇者パーティ一行から、あなたの属性は必要ないと言われたような顔をしていたので」
「そこまでわかっちゃうなんて、君エスパータイプ? 影じゃなくて念の属性じゃないのかな」
「いえ、あの様子を見ていれば大体わかりますよ」
なんかそこまで言われちゃうと恥ずかしいな。そんなに醜態晒してた……?
「そっか……。で、俺に何か用があってきたんだろ?」
「はい。もしよければあなたと勇者パーティを組みたいと思って声をかけさせていただきました」
「え、お、俺と? 俺の魔法あんまり使い物にならないよ?」
そう謙遜するが、謙遜でもなんでもなく本当に使い物にならない。
「一度組めばわかると思います。是非一度パーティ登録をしてみませんか」
夜宮は意味ありげにそう言った。まぁ、これからどうしようもないし組むだけ組んでみるか。
天城はパーティ登録用の紙をポケットから取り出し記入を始めた。あの時破り捨てなくてよかったぁ。
【パーティ登録、光属性天城及び影属性夜宮のパーティ登録を認可します】
――ステータス――
天城
筋力:30
知力:200
魔力:200
スキル:フラッシュ
―――――――――
――ステータス――
夜宮
筋力:10
知力:350
魔力:350
スキル:シャドウシーク・シャドウバインド
―――――――――
天城はユニークスキル「月光環」を取得しました。
「ユニークスキル…?聞いた事がないスキルだな」
「やっぱり……光と影がパーティを組むことで、光属性守護神の本当の力が目覚める、と古書に記されていました」
夜宮は予想通りと言わんばかりにふんすっと鼻息を荒らげふんぞり返っている。
しかし、このスキル一体どんなものなんだろう。
「この月光環っていうスキルに、何か心当たりは無いのか?」
「古書によれば、特定の属性が共になることで発動する伝説のスキル、とありました。炎や水にはこの様なユニークスキルは無いらしいです。」
「ってことは、俺ら今最強なのか!?」
「それはわかりませんが、試してみる価値はありそうですね!」
ヨミやは出会って一番の笑顔を振りまいた。その笑顔は影属性とは思えないほど輝かしく、太陽のようだった。これも光の俺とパーティを組んだからなんだろうか。
その可愛い笑顔を瞼にやきつけつつ、俺たちはこのスキルを試せる場所へと向かった。
あれから俺たちは三時間ほど歩き、月光環のスキルを試すのに丁度良さそうな初級ダンジョンへ来た。ここにはスライムよりかは少し強い、リザードマンや骸骨剣士がいる。
ちなみにヨミやは影のないところではダメージを受けるらしく、傘を差しながら歩いてきた。夜や屋内以外ではなかなかに面倒らしい。そう愚痴を零していた。
「さて、ここなら丁度いい腕試しになりそうだな。でも攻撃魔法かどうかもわからないし、ちょっと不安だな」
「いざとなったら私のシャドーシークで安全な場所まで逃げましょう」
彼女の使えるスキルは今のところ、自他の影を操る物のようだ。これなら安心して戦える……のか?
「おらぁ! 誰でもかかってこいやぁ!」
ユニークスキルを手に入れた俺は、とんでもなく強いスキルなんだろうなぁと浮かれていた。その証拠にいつもは最後尾から二番目の位置を歩いていた俺だが、先陣を切って歩いている。夜宮はそんな浮かれる俺を温かい目で見守っていた。
「一応気を付けてくださいね~」
そうだな、あまり気を緩めていても危ないかもしれない。そう気を引き締めたその時、奥の曲がり角から下級魔族の骸骨剣士がフラリと姿を現した。
「で、出たな! よし、行くぞ。月光環!」
……ダンジョンに俺の声が響き渡った。しかし、なにもおこらなかった。
「あ、あれ?」
「天城さん……?」
何もしてこないとわかった骸骨剣士は、ゆらゆらとこちらに近づいてきた。
「な、なんでも何も起きないんだ!?」
「わかりませんが、何か条件が必要なのかもしれません。私はお先に失礼します」
そう言い残すと彼女はシャドウシークで影の中に隠れてしまった。
「ちょ、ちょっと! 置いていくなよ!」
「ウオオオオオン!」
俺は今来た道を全速力で戻った。後ろからカラカラと骨と剣が擦れる音を立てながら骸骨剣士が追いかけてくる。
「なんでこの骸骨こんなに足が速いんだ!? 骨はノロマってイメージだろうが!」
そう泣きべそをかきながら俺たちはダンジョンの外まで帰ってきた。
「あ~、大変な目にあったなぁ……」
「そうですねぇ、何がいけなかったのでしょう」
当たりは薄暗くなってきており、日は沈みかけていた。俺たちはダンジョンの入り口で反省会中だ。火を起こし、簡単なスープを飲みながら何がいけなかったのかを話し合っていた。
「このスキル、思ってたけど攻撃スキルじゃなさそうだよな」
「名称が他と異なりますからね、パッシブスキルのような感じなのでしょうか」
「でも俺の体調はいつも通りだぞ」
ラジオ体操のような動きをしながら変化がないことを確かめる。
日も落ち、夜宮はようやく傘を畳んだ。
その後、休憩を続けあたりはすっかり暗くなってしまった。今夜は少し雲がかかっていて、あまり明るくなかった。俺は夜宮の為にあまり強いフラッシュは使わずに、自分の視界だけ確保できる分のスキルを使っていた。
「あ~今日はここで野宿かなぁ」
「私は影の中で眠れるので、快適です」
「そうなの!? どこでも宿屋じゃん!」
なんてくだらない話をしていると雲が晴れ、満月が姿を現した。
――ユニークスキル月光環が発動しました。ステータス向上。スキル「ライトニングブレード」「ライトシールド」「」「清浄の光」「重圧洗礼・白き十字架」を獲得しました」――
「「……え?」」
俺たちはほぼ同時に、そう呟いた。満月の光を浴びた瞬間、俺の周りを光が包み込み声が聞こえた。
「なんかスキル発動したんだけど!?」
「おめでとうございます! そのスキルは潜在スキルだったんですね」
潜在スキル、とある条件下において発動する上級スキルだ。このスキルの発動条件は満月の光を浴びることだったらしい。
「よっしゃぁ! なんか攻撃魔法っぽいやつも手に入ったし、もっかいダンジョン行こうぜ!」
「はい!」
夜中にも関わらず、俺たちは一睡もすることなく再びダンジョンへと足を踏み入れた。
さっきの骸骨剣士だろうか、同じ場所にまたそいつがいた。俺のことを見つけるとすぐにこちらに向かってきた。
「よし、まずはライトニングブレード!」
そう叫ぶと腰の短剣に光が宿った。剣を抜くと、短剣にもかかわらず長い光が剣の先から一直線に伸びていた。長さで言うと刀くらいありそうだ。
「す、すげぇ…」
夜宮は信用していなかったのか、シャドウシークで壁から頭だけ出してこちらの様子を伺っていた。
そう感動していると骸骨剣士がもうすぐ近くまで来ていた。俺はその光の剣を骸骨剣士目掛けて振り下ろした。
「どりゃぁぁぁぁぁ!」
ガシャァァァン!
激しい音をたて、骸骨剣士はバラバラとなり一撃で沈んだ。魂ごと浄化したようにも見える。アンデット族には一層威力が高まるようだ。
「うおおお!俺も敵を倒せた~!」
「やりましたね! これでもう一人前の勇者ですよ!」
「これも夜宮のおかげだ~!」
初めての魔物討伐に俺は歓喜する。彼女もそれなりに喜んでくれているようだ。
「よっしゃ! これで堂々とギルドに行けるぜ。 夜宮も来るだろう?」
「は、はい。 天城さんと一緒なら……」
少し照れたような様子でそう答える。頬を赤らめるその姿は、まるで夜空に輝くベテルギウスのようだった。
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