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副題の約束

 部屋へと3人の視線を一気に感じる。

 涙実はさっきまでいた場所へ戻り、まるで何事も無かったかのような俺の事をじっと純粋な目で見つめてくる。

 演技力が半端ない。

 もしかしたらさっきまで打ち合わせしていたのは別の人物だったんじゃないかと思ってしまう程不自然さを感じない。

 驚き、緊張色々込みで言葉を失っていると「はいはい。龍二。なんで私たちを呼んだのかな? 今度は邪魔しないから教えて欲しいな?」と手を合わせながら口を開く。

 この言葉にも演技っぽさは微塵も感じない。

 ただ単に嘘を吐くのが得意なのか、人を騙すのが得意なのか、演技力が長けているのか分からない。


 「あー……。うん」


 何はともあれ涙実からこれ以上にない最高のパスを貰ったので素直に受け取り、有効活用することにした。


 「もし、皆が良ければなんだけどさ」


 話をし始めると揃いも揃って頷く。

 提案をする側としてはかなりし易い。


 「バーベキューとか今度しないか? 俺たち5人で」

 「バーベキュー?」


 花音が誰よりも先に口を開いた。


 「あぁ。バーベキュー」

 「良いじゃんー! バーベキュー。お肉いっぱーい食べられそう」

 「うん。私も良いと思うな。龍二と話したいこと皆も色々あるだろうし、良い機会になりそうだね」


 花音の賛同に涙実も乗っかる。

 前2人が賛成し始めたわけで、後の2人も断りにくい状況となった。


 「私も行って良いの?」


 涼風は少し不安げに上目遣いでボソボソっと問う。


 「もちろん。むしろ、5人揃わないと気まずいからな」

 「そーだよ! 涼風ちゃんも強制参加っ! いーっしょに楽しもー!」


 テンションが天井知らずな花音は涼風にバッと抱きつく。

 花音は「えへへ」と今にも蕩けそうな笑顔を見せ、涼風は困惑の表情を見せるのだが、どこか満更でもなさそうである。

 良いものを拝ませてもらっているなと手を合わせたいという衝動に駆られた瞬間に、とんでもない視線を感じ我に戻る。


 「希愛はどうだ?」


 視線を送ってきていた希愛へ問う。

 まだ、少し不機嫌そうだ。


 「これ」


 希愛は片手でスマホを軽く振り、確認しろとジェスチャーしてきた。

 脈絡もなくどうしたんだろうかと、思いつつスマホを確認すると一通のメールが希愛から届いていた。


 「良い雰囲気にするだけして、何もしなかったチキンさん。バーベキューに来て欲しければお詫びにデートかなにか誘いなさい。でなければ、アンタを焼くわよ」


 身震いしてしまうような内容で、希愛を見るとしてやったりというような表情をする。

 雰囲気を作ってしまったことも認めるし、俺も少なからず意識してしまったのも認めよう。

 あの雰囲気の中何も起こらないというのは些か消化不良というものだ。

 スッキリさせるという意味でも2人っきりでどこかに出かけるというのは悪い話ではないと考えた。


 「2人でどこか行こう。どこか分からないけれど……。どこか行こう。だから、焼くのはやめてくれ」


 メールを送信し、希愛のスマホがバイブで揺れて、確認する。

 スマホに視線を落とし、スリープモードにすると希愛は勝ち誇ったように白い歯を見せながら申し訳程度に俺へ向かってピースをしてくる。


 「仕方ないわね。私も行ってあげるわよ。予定はアンタが調整しなさいよ」

 「あぁ。分かった」


 多分バーベキューの話じゃなく、デートの予定だろう。

 少し脅されながらもバーベキューの約束は取り付けることが出来た。

 あれ、本題忘れてねぇーかこれ。

 今更、彼女いらないって話題出すタイミングないぞ。


 「あたしはお肉たーっくさん食べるんだー」

 「のんちゃん……。お肉だけじゃなくて野菜もちゃんと食べなきゃダメだよ」

 「うん。涼風ちゃん。お肉もちゃーんと食べる!」

 「お肉じゃなくて野菜……。あと、そんなに抱きつかないで……」


 困ったような顔をする涼風を見つめながら、俺も助けを求めるように涙実を見つめた。

 涙実は「はぁ……」とこめかみを左の親指と小指で押さえながら、また俺を部屋の外へと招集したのだった。

評価ありがとうございますっ!!!!

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