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食い違い

 俺は今、涙実のクラスであるE組に顔を出している。

 どうなっている状況なのかだけを確認するためにやってきた。

 別に催促するつもりなんてこれっぽっちも無い。

 あくまでも、「そっか、頼むわ」という頭を下げるスタイルを突き通すつもりである。


 涙実と目が合ったのでこっちに来てくれと手招きすると、ひょいひょいとこちらにやって来てくれた。


 「涼風の進捗って今どうなってる?」

 「進捗? どういうこと?」

 「ほら、頼んだろ? 俺と希愛が付き合ってないってことを説明してくれってさ」

 「え?」

 「ん?」


 お互いに顔を見つめ首を傾げる。


 「待って待って」


 涙実は手を大きく振って1度話を纏めようとする。


 「あぁ」

 「良い? まず、私は龍二からお願いされたよね。説得して勘違いを正して欲しいって」

 「そうだな」

 「その後ね、私涼風ちゃんのところに行ったんだよ」

 「おう」

 「そこでしっかりと話したんだよ。涼風ちゃんのは誤解で、本当はあの2人付き合ってないってこともしっかり言ったんだよ」


 涙実は「あれれ」と言いながら改めて首を傾げる。

 この様子を見る限り特に嘘を吐いているようには見えない。


 「そうか……。でも、あれから涼風と接触はないし、連絡も来ないんだよな」


 今の状況を包なく伝える。


 「あれれ。おかしいな。ちゃんと説明出来たと思ってたんだけどね」


 涙実は今、俺の目の前で不思議そうな顔をしながら頭を搔く。

 かなり困惑している様子ではあるが、困惑するのも仕方ない。

 少なくとも俺だったら困惑するし、変な汗だってドバドバ出てくると思う。


 「いやぁ……。アハハ。こりゃまいったなぁ」


 涙実は天を仰ぐ。


 「私じゃ力不足だったのかもしれないね。うーん……。龍二ごめんね、あんな大口叩いてたのに力になれなかったや」


 恥ずかしそうに縮こまりつつ、白い歯を見せて照れ笑いをする。

 何この子、可愛いなと思いつつ、涙実が謝る構図に違和感を覚える。

 あくまでも、俺が頼んだ立場だ。


 「いや、別に涙実が謝ることじゃないだろ。むしろ、俺が謝るべきだ。変に巻き込んですまん」

 「じゃあ、とりあえずお互いに悪いってことで」


 水掛け合いになりそうなタイミングで涙実はスパッと話を一旦ちょん切る。

 このままだと、日が暮れるまで責任をお互いに請け負おうとしかねないので涙実の判断は正しい。


 「でも、解決できませんでした。で、終わるのは悔しいからさ、もし良かったら今から涼風ちゃんと会わない? 強行策みたいになっちゃうけれど、私が会う約束すれば会うだけ会えると思うんだ。どうだろう?」

 「なるほどな……。悪くない話だね」

 「そうでしょ?」


 涙実は少し小悪魔っぽい笑みを見せる。

 悪いとは思いつつも多分この子今の状況を楽しんでいるのだろう。

 その硬いダイヤモンドみたいなメンタルが羨ましい。

 もし、宜しければそのメンタルを僕にいただけないでしょうか。

 いや……。やっぱ俺はいらないから俺じゃなくて、涼風に分けてあげて欲しい。


 「それじゃあ、行こっか。これで、涼風ちゃんに私と龍二が付き合ってるってまた勘違いされちゃったら面白いね……。アハハ」


 涙実は頬を薄らと赤く染めて、スっと目を逸らす。


 「あー、今からちょっと連絡取るから待っててね」


 涙実は勢いに任せながらスマホを取りだし、素晴らしい勢いで指を滑らす。

 希愛にも言えたことだが、女子高校生のスマホタイピング技術は優れすぎている。


 「オッケー。約束出来たよ。放課後、図書室で会う約束したから放課後一緒に行こうね」

 「分かった。じゃあ、放課後教室行くよ」

 「うん。待ってるね」


 こうして俺は自室へと戻った。

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