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残されたもの

 疲労が俺の体を襲い、うとうとしているとインターホンが鳴り響く。

 親がなにかインターネットで注文したのかと思い、眠たい目をこすりながら玄関へ向かい、扉を開ける。

 道路には配送車はおらず、変わりに死んだ目をした涼風が立っていた。


 「どうしたんだ?」


 インターホンを押して何も口にしない涼風に問う。

 聞いてもなお、涼風は口を開かない。

 機嫌がよろしくないのだなと理解は出来るが、俺に八つ当たりされても困る。

 わざわざ八つ当たりする為に俺の家に来たのなら希愛よりも性格がイカれている。


 「おーい。涼風さーん。聞こえていますかー」


 話してもらわないと俺には何も出来ないので、顔の前で手のひらをヒラヒラと上下させる。


 「なんで?」


 繋がりのない言葉を涼風は発する。

 一瞬何か俺の認識間違いや、聞き間違いなど色々頭を巡らせて可能性を探ったがどう考えても「なんで」と口にしたいたし、その前後では口元が閉じていたので、聞き取れなかった可能性もゼロだ。


 「え? 何が。どういうこと?」

 「なんで……」


 次は声を震わせている。

 涙を目にためており、今にもこぼれ落ちそうだ。


 「なんで。りゅうくんは彼女今いらないんでしょ?」

 「あぁ……。そうだな」

 「そうだよね。言ってたよね」


 間違いないよなとしつこく確認してくる。

 良く分からないがなんだか責め立てられているような気がして、ちょっと申し訳なくなってくる。

 だが、肝心の理由が分からない。


 「昨日……。見たんだけど、なんで2人っきりで。出かけてたの。しかも、すごい楽しそうだった……」

 「あー、もしかして昨日どこかで俺達のことみたのか?」


 涼風は小さく頷く。

 鼻をすすっており、もうこれは泣いていると言って良いだろう。


 そして同時に涼風がなぜこんな顔をしているのかが理解出来た。

 きっと、涼風は俺と希愛が付き合っていると勘違いしているのだろう。

 俺は「今は彼女いらない」と宣言したのに、気付いたら他の女の子と仲良さげに街を練り歩いていた……。とか、そんなところだろう。


 「見た。2人とも顔赤くして歩いてたよ……。なんか、凄いお似合いなカップルみたいになってた……。だから、付き合ってるんだなって。だって、付き合ってなかったらあんなにカップルみたいな雰囲気にならない……もん」

 「いや、でも――」

 「言い訳は聞きたくない……。お似合いだね、おめでとうって言いたい。言いたかったのに、悔しい気持ちが勝っちゃって言えない……。そんな自分が憎い……。りゅうくん、ごめんね。素直に喜べないや」


 涼風は一方的に謝罪すると、俺の言葉なんか聞く素振りすら見せずに走って、帰宅した。

 涼風の家からガチャンという大きな扉の閉まる音だけが響いてきて、俺はただ立ち尽くす。

 勘違いされただけならばその勘違いを訂正させれば良い。

 だが、当分の間は俺の話を聞いてくれ無さそうだ。


 「なんで、変な勘違いされちゃうのかなぁ……。というか、この話希愛聞いたら怒るだろうなぁ」


 どうせ時間か涙実が解決してくれるだろうというかなり楽観的な思考の元、俺は深く考えずに開けっばなしにしていた扉をそっと閉めた。

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