肉を焼く
串の用意が終わりバーベキューが始まる。
「おいしーねっ!」
花音は満足そうにパクパク食べていく。
1人何本だとか制限は付けていないがこのままのペースだと花音にほとんど持っていかれるのではと不安になってしまうぐらいのペースである。
「はい。涼風。焼けたよ」
「あ、うん。ありがとう」
涼風に串を手渡すと、手が触れてしまう。
「あ、すまん」
「……。ううん。大丈夫だよ」
顔を真っ赤にし、目を逸らしながらしっかりと串焼きを受け取る。
そして、顔を隠したいのかそっぽを向き、川の方向を1人向きながら串焼きを食べ始めた。
希愛みたいにガミガミ言ってくるとなんてことないのだが、あんな初心な反応されてしまうと、こちらまで恥ずかしくなってしまう。
「あれー? 加賀くん顔真っ赤だよ。熱いのー? 変わろっかー?」
串焼きを2本口に突っ込んでいる花音がこちらに近寄ってきた。
申し訳ないが君にはここを任せられない。
危ないとかじゃなくて、単純に焼いた瞬間に胃の中へ流れていきかねない。
「花音は大丈夫だよ。食べるの頑張ってね」
何も刺さっていない串だけを口にくわえた涙実がこちらにやって来て、花音を食べることに集中させる。
「大丈夫? 変わろっか。なんかずっと食べてるのも申し訳ないしね」
「顔赤いのは別件だから気にしなくて良いぞ」
「はいはい。それでもせっかくのバーベキュー1人だけずっと焼き係ってわけにもいかないでしょ。少しぐらい甘えたって良いんだよ」
ニコっと微笑むと、俺の手にあったトングをサッと奪い取り、トングをヒラヒラさせる。
「それじゃあ、これは私が回収しちゃうからね。はい、行った行った。楽しんでおいで、皆待ってるよ」
背中を優しくテーブルの方へ押す。
後ろでは涙実が鼻歌を歌いながら串焼きを焼いている。
まぁ、嫌々交代したってわけでもなさそうだし良いだろう。
ここまで言うのだから罰は当たらない、当たらないよね。
「瀬名波くーん! こっちこっち! はいっ! あーん」
花音は俺の口へ無理矢理串焼きを突っ込む。
無理矢理突っ込まれようがなんだろうが串焼きは串焼きなわけで、普通に美味い。
自分のペースで食べたいという1点以外は文句無しだ。
「どうっ? 美味しい?」
「あぁ。美味いな」
「そっかー。良かったー。皆と作って食べる串焼きってなんだか特別だよねー」
手元にある串焼きをまたパクリと食べる。
そして、頬を抑え、蕩けそうな程幸せそうな表情を俺に見せたあと、「もう1本食べる?」と余った串焼きを提供してくれた。
ありがたく受け取り、もう1本胃の中へと流し込む。
「えへへ。なんだか、こういうのって楽しいよね。あたし、瀬名波くんとまた会えて良かったよ。これからもよろしくねー!」
花音は「お祝いの串焼き!」と言って、涙実から焼きたての串焼きを回収してくると、1本また俺に渡してくる。
この子の胃はブラックホールか何かでできているのだろうか。
高ペースなのも相まって、結構胃が重たくなってきている。
それだというのに、花音はまだ余裕そうな表情をしつつ、串焼きに食らいついている。
「……。元気なのは何よりだな」
太るぞという言葉をグッと堪えて遠回しに優しく表現した。
何はともあれ、食欲旺盛なのは良い事だ。
いや、本当に食べてばかりで運動しないと太るけどな。
この後ひたすら俺たちは食って、焼いて、食った。
時々川で水遊びをし、飽きたらまた焼いて食う。
こう、好き勝手に動き回るのも悪くは無い。




