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バーベキュー

 というわけで!

 バーベキューにやってきた。

 会場は近所の河川敷。

 誰もが知っている……、というわけじゃないがここらでは有名な河川敷で近くには宿などの宿泊施設も設置されている。


 少しだけ時期が早かったのか、大盛況とはとても言い難い感じだが、それでも人が居ないわけじゃない。

 川釣りを楽しむ年配の方や、親子で楽しく川を散策していたりする。

 ちょっとヤンキーっぽい見た目のお兄ちゃんたちが音楽をガンガンにかけて行っているバーベキューを横目に俺たちは少し離れたところで陣取る。


 ここのバーベキュー場は予約制ではないし、区画が決められている訳でもない。

 好きなところで好きなようにバーベキューをするシステムだ。

 もちろん利用料金みたいなのは取られないし、見回りをしている管理人さんらしき人物もいない。


 組立式の机と椅子を不安定な河原に設置し、そのままの勢いでグリルも準備する。

 未成年集団なのでアルコール製品は持ってきていないが、飲み物は持ってきているので石で囲いを川の中で作り、自然冷蔵器を作成する。


 「お肉っ! お肉っ!」


 花音はビニールから一目散に肉を取りだし、焼こうとする。

 それを見た涙実が「まだ準備出来てないから待ってて」と宥めていた。

 希愛は俺と一緒に準備をしてくれている。


 「この野菜とかはどうする? もう切っちゃうわよ?」

 「あぁ………頼む」

 「それで、予定は決めてくれた? 忘れたなんて言わせないわよ」


 人参に対して音を立てて包丁を入れる。

 目がギラギラしていて恐ろしい。

 殺意がムンムンに湧き出ている。


 「そ、そうだな。遊園地なんてどうだ? 親が無料チケット貰ったらしくて」

 「遊園地ね。アンタにしては良いセレクトじゃない」

 「そりゃ、どうも」

 「いつ行く予定なの?」

 「今俺バイトとかしてないし、希愛の時間に合わせられるぞ。逆に何時ならいけるんだ?」

 「そういうのも決めるのがアンタの仕事でしょ……」


 呆れたようにぶつぶつ文句を垂れながら、人参を肉の間にぶっ刺す。

 手際よく、野菜と肉を交互に刺していき、串焼きの元を作成していく。


 「明日でも良いわよ。バイトぐらい変わってもらえば良いんだもの」

 「簡単に言うけどそんな簡単に休めないだろ」

 「そう? 休めるわよ。なら、ちょっと待ってなさい」


 串焼きを作る手を止めて、スマホを手馴れた手つきで操作し、耳元にスマホをあてる。


 「もしもし。お疲れ様です。山岸です。ちょっと明日外せない用事が出来てしまったので休ませて欲しいのですが大丈夫ですか? はい。はい。ありがとうございます。よろしくお願いします」


 満足気な顔をしてスマホをしまう。


 「ほらね、休むのぐらい簡単なのよ。やっぱり、私が可愛いからかしら」


 休めたからか調子に乗ってそんな大口を叩く。

 だが、あながち間違ってなさそうなのがまたズルい。

 やっぱり世の中顔なんですね、そうなんですね。


 「可愛いからって余り乱用するなよ。そのうち後ろから刺されたりするからな」

 「はぁ? アンタに可愛いとか言われたくないんだけど。キモ」

 「なんでそっちに怒るんだよ。はいはい、俺が悪かったよ」

 「ふん。アンタもさっさとパプリカ切りなさいよ。遅いとアンタのこと切り刻んでこの串にぶっ刺すわよ」


 包丁を縦に持ち、ニヤッと白い歯を見せる。

 包丁の刃が丁度、太陽の光を反射させ、恐ろしさが数倍増されている。


 「分かった分かった。やるから許してくれ」


 殺されたくは無いので、全力でパプリカを切り刻む。


 「りゅうくん、のあちゃん。串の方どのくらい出来た? グリルの方は準備出来たよ」

 「ほら、アンタが無駄口叩くから遅れてるじゃない!」


 電話してたのはアンタだろとは言えず、申し訳ないと頭を下げる。

 なんで、謝ってるんだろうな俺。


 「その、終わったら持ってきてね。のんちゃん生野菜食べだしそうだから……」


 頑張って涙実が花音の暴挙を止めようとしている光景が目に入り、マジで急がなきゃという気持ちにさせられ、串の用意を急いだのだった。

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