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魔王転生~元魔王と勇者とその他諸々の物語~  作者: Black History
謳歌する一学期
9/28

——改訂版2——開かずの扉はもはや壁

「ほう、なるほど。話を聞く限りでは相手は多人数で間違いないでしょう」


エリックが俺の話を聞いて一言いう。


「そんなひどいことが…シンさん、辛かったですね」


うんうんと涙ぐみながらエマさんが言う。


「そう、ね…じゃあ明日犯人をとっ捕まえましょう!話はそのあとね!今日は解散!」


サンドラがそう言い、議論はまとまったので各々解散した。


「ちょっと待ちなさいよシン」


「あ?なんだ?」


「いつまで私の下着握ってる気?」


「あ、ごめん、忘れてた。」











次の日になった。




その日のサンドラはいつも以上に血気盛んだった。




エリックが言うには「大切な人が傷つけられて許せないのでしょう」ということらしい。




そうか、サンドラはそこまで俺を大切な友達だと思ってくれていたのだな。




嬉しい反面今までそんなことに気づいてなかったことへの申し訳なさもある。




俺たちは更衣室に着いた後、男女で別れた。




さすがに他の客もいるのに男子の俺たちが女子更衣室に入るわけにはいかないだろう。




だから犯人の捕獲を完全にサンドラと蘭に任せる形になった。




犯人は俺たちの下着には興味がないんだ、仕方がない。




ちなみにエマさんもいるが、いつものドジっ子っぷりを鑑みるにいないようなもんだ。




今日はそいつを問い詰める予定なので更衣室に入りはしたものの着替えはしない。




サンドラたちが犯人をとっ捕まえるまで時間が暇なので俺とエリックはそこら辺に腰かけて少し話すことにした。











「シンさんは『ラプラスの悪魔』というものをご存じですか?」




「ん?ああ、話には聞いたことがあるぞ。なんでもこの世の物理現象をすべて計算できれば未来が見えるってはなしだろ?」




「大体そんな話です。でもそんなものが本当に開発されたら凄いことになると思いませんか?」




「すごいこと?まあそりゃあ、技術革新が発展目覚しいだろうな」




「それもそうなんですけど、未来があらかじめわかったら僕たちの自我が根本的に否定されると思いませんか?」




「それは論理の飛躍が過ぎるだろう。なんで未来がわかったら俺たちの自我が否定されなくてはならないんだ」




「だって僕たちはあくまでも計算で表せる物理法則に乗っている存在に過ぎないことが証明されるわけでしょう?つまり僕たちは、僕たちのこの心の働きはただの物理現象に過ぎないってことになるじゃないですか」




「うーん、分かったようでわからない理論だな」




「いや、まあそこはどうでもいいんです。僕が言いたいのはその次のことで、もし仮に僕たちの自我が偽物だったとしていろいろな人、シンさんやサンドラさんやランさん、エマさんに会えたのが必然だったとしても、正義部が結成されたのが必然だったとしてもこの思い出はいつまでも僕の思い出になり続けると思うんです。この友情はいつまでも僕の心の中にあり続けると思うんです。だからシンさん、今回みたいなことがまた起こったら僕だけにでも相談してください。シンさんたちとの絆は僕にとってはそれくらい大事なものなんです」




「ん?ああ、ありがとうな」




「ちょっとシンさん、難しい話だからって適当に流してません?結構大事なこと言ったんですよ?僕」




そう言って笑うエリックの顔に俺は心でこう語りかけたのだった。




お前の話はいつも難しいが、分かったようなわからないような気がするが、それでも俺にとっては大切な思い出だ。




お前との絆だってお前ぐらい、いや、お前以上に大事にしているさ。




そんなお前が俺に頼ってほしいならいくらでも頼ってやる。




ありがとうな、エリック。




それは俺の周りの奴らが予想以上に俺を大切にしてくれていると実感した今の俺にはとても心に沁みるものだった。











あちらから何かギャーギャー聞こえる。




「多分捕まったんでしょうね、犯人が」




エリックが雑談を切り上げ喧噪についての考察を言う。




「そう……か、よし!行くか!」




そして俺たちはその喧噪の中心へと向かったのだ。











喧噪の中心には案の定サンドラがいた。




蘭とエマさんも共にいる。




俺たちは人込みを押しのけ、野次馬たちの輪の中に入るとサンドラたちの輪の中に入った。




「おう、サンドラ、やってるな」


「やっと捕まえたわこの卑怯者!今に見てなさい!けちょんけちょんにしてやるわ!」




俺はその犯人と思われる人を見た。




そいつは少女だった。




容姿はちびで顔に若干の幼さが残り、金髪のショートカットがカールしていた。




しかしなるほど、確かに俺が推理した人物とは特徴があっている。




「離せ!このぶす!」


「っ!何を…!」


「待て待て、とりあえず落ち着けそうなところで尋問するぞ。ここは…あれだろ?」


サンドラは俺の言葉に頭を冷やしたのか辺りを見回して今自分が幼女をいじめているような格好になっていることを理解し


「ふ、ふん!仕方ないわね!とりあえずあっちで話すわよ!逃げだしたら…いいわね?」


と、少し脅してここよりかは若干人の少ない、公園のベンチへ向かったのだった。











「で?なんであんなことしたわけ?」


公園のベンチに幼女を座らせるや否やサンドラが尋問する。


「教えなーい」


幼女が拗ねたように答える。


「っ!あんたねぇ…」


「イーっだ!」


「っ!こいつ一発殴ってもいいかしら。」


「待て待て、そんなことしたらはたから見れば悪い大人が幼女を囲っていじめているみたいになるだろ。」


俺は即座に止めに入る。


「平民は黙っておけ」


「っ!よし!殴ろう!」


「待ちましょうシンさん、そんなことしたら余計に拗ねちゃいますよ」


エリックがそんな俺を止めに入る。


「…」


蘭がすいっと前に出る。


瞬く間にその幼女の後ろに立つとわき腹を掴みくすぐり始めた。




「へ?ちょ!やめて!ひゃ!アハハハハ!」




幼女は身もだえでそれにこたえる。




「…やるなら今」




蘭は俺の眼を見てそう言った。




なるほど、つまり蘭は答えなければこうやってくすぐり続けるつもりなんだろう。




決して拷問ではなく。




決して拷問ではない。




俺は蘭の名案に乗ることにした。




「おい幼女、今からお前にいくつかの質問をする。それに全部答えてくれたらくすぐりから解放してやろう」


「平民が……アヒャヒャヒャヒャ!そこやめてぇ!」


「まず、お前たちの目的は何だ」


「答えるわけが…アヒャヒャヒャヒャ!だめぇ!答えるからやめてぇ!」


蘭は手を止める。


「はぁ…はぁ…それはもちろん、貴族が上で平民が下の世界をもう一度取り戻すのよ」


「それはいったいなぜ?」


「そんなん言わなくたって分かるでしょ。平民が台頭してきた結果、世の中がさらに悪くなったからよ」


そんなことはないと思うが、どうやらこいつらはそう思っているらしい。




ここで本当に悪くなったか、根拠を尋ねても結局は水かけ論争になるだけだろうしここは適当に流そう。




「わかった。では次の質問に行こう」


「へぇ、分かったんだ。普通の平民だったらそこで『根拠は?』って噛み付いてくるんだけどね」


「ではお前たちの本拠地はどこだ?」


「それはいくら何でも教えるわけ…アヒャヒャヒャヒャ!ら、らめぇ!やめてぇ!答えるから!」


蘭は手を止める。


「はぁ…はぁ…紙を頂戴。所在地を書いてあげるから」


そして幼女は紙にアジトの住所を書いた。




思ったんだけどこいつ、こちょこちょだけでここまで打ち明けるなんて結構ちょろくないか?




まあそんなことはどうでもいいとして俺たちは今からこの幼女を連れてその場所に向かうことにした。




渡された紙を見ると結構近くにあるらしかった。











「ふーん、で、ここがあんたらのアジトってわけね」


「おい幼女、お前、教えてくれたのはありがたいんだが本当に良かったのか?組織の報復とか怖くないのか?」


「幼女じゃない!別にそれはいいの。だって……」


「だって?」


「…もう関係ない人たちだから」


幼女はうつむいてぼそっと言う。




関係ない人たち?




俺にはその言葉の真意を把握しかねたが、どうやら幼女の中では別に報復は怖くないらしい。




まあ今大事なのはその言葉の真意ではなくて目の前にある敵のアジトだろう。




サンドラが先陣を切ってその中に入った。











「な!?」




俺たちがそのアジトに入ったときの第一声は俺の驚きの声だった。




なんとそこはもうすでにもぬけの殻だった。




俺は幼女のほうをにらむ。




こいつ、騙しやがったな。




しかし、幼女も驚いている様子だった。




「おい幼女、これは一体どういうことだ」


「ち!ちが!私がいたころはここが確かにアジトだったの!」


「ほう、幼女、ここに来てまだ嘘を突き通すつもりか」


「違うの!本当なの!」


しかしそんな幼女の必死の弁解にも俺たちは甚だ懐疑的だった。




蘭に目配せする。




蘭は俺の意図を把握したようで一瞬で幼女の後ろに回り込み、わき腹をくすぐり始める。




「ひゃ!やめて!アヒェ!アヒャヒャヒャ!」




幼女の笑い声ががらんとした敵のアジトに響き渡る。




「ほんと!本当なの!だからやめてぇ!」




必死で俺に訴えかける幼女の眼には確かに嘘っぽさはなかった。




俺はまた一からかとため息をつきながら蘭に手を止めるように促す。




「ええっと、じゃあこれはどういうことでしょう?」




エマさんが誰もいない大部屋を見渡しながら言う。











俺たちはいったんホテルに帰った。




サンドラの部屋で会議を行っている。




幼女が語るにはこうらしい。




確かに自分は昨日の段階まであそこをアジトとしていたのだ。




集団名をCode:0というらしい。




リーダーにグレナウ・サンズボーンという男を置き、その補佐としてコリンギ・エンデンという男がいる。




しかし今日、幼女は嫌気がさしてそこをやめたのだという。




そういえばと幼女はその組織が転居する予定だったことを思い出す。




そんな重要なことはもっと先に言ってくれよと思ったが俺はそれを寛容な心で受け止める。




いやだって、幼女だしね?




ではその肝心のアジトはどこに行ったのか。




幼女は自分は下っ端だったのでそこまではよく分らないと言うのみだった。




「あと、そろそろ幼女でもない私を幼女っていうのはやめてもらっていいかしら。私にはちゃんとイレイナ・スカーレットっていう名前があるの。イレイナって呼んでくれていいわ」




どうやら幼女は幼女と言われるのが気に食わないらしく、ぶっきらぼうにそう言った。




「あんたらの名前はもう把握してるわ。いけ好かない面しているこいつがエリック、無表情で何考えているかわからないあいつがラン、この性格悪そうな金髪女がサンドラ、で、平民のあんたがシンていうんでしょ?」




「あ、あのぉ、わ、私は…」




エマさんが自分が呼ばれなかったことに疑問をもって恐る恐る手を挙げる。




「え?」




幼……イレイナがエマさんのほうに振り向く。




「ひ!……」




エマさんは睨まれたと勘違いしたのか少し顔を引きつらせる。




イレイナはエマさんのほうを向いてこう言った。




「あんた誰?」











そのあとイレイナのあまりにもひどい人の言い方にサンドラが怒るといったひと悶着があったが、一番傷ついたのはもちろんエマさんだろう。




なぜなら認知もされていなかったからである。




エマさんはそのあと哀愁漂う感じで、心ここにあらずと言った感じで俺たちの会話を聞いていた。




エマさんが傷心気味の一方、俺たちはイレイナから重大なことを聞かされる。




それはCode:0が、イレイナの元居た組織がここにある国立の図書館を燃やしてそれを平民全体のせいにするというものだった。




それによって平民と貴族との仲をたがえさせ、旧体制へと返り咲く懸け橋とするつもりらしい。




俺にとっちゃそんな計画絶対成功するわけないし、もし仮に成功したとしても今の民主主義はゆるぎないと思ったがサンドラの見解はどうやら違うようだった。




サンドラが言うには「これは世界最大の危機よ!これこそ正義部の出番だわ!」らしい。




ちなみに正義部の活動内容はすべてサンドラに全任されており、俺たちに拒否権はない。




だからサンドラが危機だと言えばそれは正義部全体の考え方となり、サンドラがやると言えばそれは正義部全体の方針となる。




だから俺たちは国立の図書館を守ることになったのだ。












通信制高校の方でショートノベルを書いているのですが、難解と言われてしまいました。

もしかして僕のあの最初の評論みたいなやつって難解でしたかね?

感想がないんで分からないんですよね。

しかも僕は、ここまで書き上げたと言えど書籍化作家に比べるとまだ生硬な文章でしょうし。

その二つが相まってより難解にしているのだと思います。

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