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魔王転生~元魔王と勇者とその他諸々の物語~  作者: Black History
謳歌する一学期
4/28

——改訂版2——約束は大事な人を守りたい時だけ破れ

入学式が前日に終わり、しょっぱなから授業がある北コルロ高校に通う生徒の俺は昨日約束されたとおり、俺の幼馴染の蘭と一緒に登校していた。




俺の高校生活の始まりにふさわしく学校中の桜は満開し、その枝葉を仄かなぬくもりを感じる南方からの風になびかせていた。




「…どうかな。」




蘭が無表情のまま俺の眼をのぞき込む。




この「…どうかな。」という言葉は蘭が今朝になって前髪を上げてきたことへの評価を聞いているのだろう。




「んー、悪くはないと思うぞ。ただ俺としては昔のほうがなじんでるからそっちのほうもいいと思うけどな。」




俺は昔から女子がかわいいかわいくないという基準をよく分らない男だった。




そのせいか男どもの下衆のきいた会話には付いていけず、それが今思えば俺と他人の関係が希薄になる原因だったのかもしれない。




そういう意味で言うと俺に唯一話しかけてきたあいつは他の人より、ませていたのかもしれないな。




だがそんな話は今となってはどうでもいい。




ただ俺は今の時点で過去の失敗談を生かせず前髪を上げたことで蘭はかわいくなったのか否かがわからないという状況なだけだ。




そんな俺にできることと言えば「昔のほうもなじみ深く良かったが今のでも悪くない」ということだけだ。




「…そう」


そういうと蘭はいつも通り無表情ではあるものの心持少し残念そうな顔をして前髪を戻した。


「うん、やっぱりそっちのほうが俺としては変に気取らないでいいね。」











それから俺たちはそれぞれのクラスに分かれた。




クラスに着いて席に座ると、後ろの席でサンドラがむすーっとしながら座っていた。




サンドラとはこの世界の勇者になる人物のことである。




「おいおい、どうした、何か嫌なことでもあったのか?」


「道中変な目線で見られたのよ。何よ、こっちが正義を守っているからっていいようにしてくれちゃって。覚えておきなさいよ。」


なるほど。どうやらこのクラスの優秀な諸君はどうやらもうこいつのうわさを広げているようだった。




噂、というのはこいつが自己紹介の時に言い放った衝撃的なことを言い放ったことだ。




こいつ、つまりサンドラは自己紹介の時に「私が来たからにはこのクラスでの悪事は断固として許さないわ。覚悟なさい。」と、いわば独裁宣言をしたのだった。




「そんなに道中変な目で見られるのが嫌ならあんな自己紹介しなければよかったじゃん」なんて言っても「あの時は称賛されていたし、迷える子羊を導くのが私の使命よ」の一点張りなんだろうな。




ここは適当に話を合わせておくか。




「そうか、それはつらかったな。お前の美貌にでも驚いたんじゃないか?」


俺はおちょくるような語勢でそういう。


「はぁ!?何言ってんの!?」


すると、あろうことかサンドラは過剰な反応を示した。


「ちょ!おま!馬鹿!声がでけぇよ!」


同時に俺は自分の失敗も悟る。


やっぱり社交性はある程度ないとだめだな。


「いや、でも確かにあいつらのあの目線って…」


それはそうと俺の言葉は馬耳東風、何か合点がいった様子になった直後、サンドラは教卓のほうへずんずんと進んでいき


「いい!皆!聞きなさい!皆は思春期だから私のそうゆうところが気になっていたのね!だからと言って怒りはしないわ!そういうのも受け入れてこその正義だからね!ただ道中は自分の身の危険にもっと注意しなさい!私に見とれているせいでけがされたら私も悲しいからね!」


と大声で言い放った。


まずい!


ドキドキしながら周りを見渡すと大半の人はきょとんとしていた。


ただ一人、サンドラは満々の笑みで決まったと言わんばかりのグッジョブを俺に出していたが。











「いやぁ、しかしびっくりしましたよ。「私に見とれているせいでけがされたら私も悲しいからね!」なんて一瞬僕って無意識にサンドラさんをストーカーしていたのかなぁと疑いましたもん。」




エリックは俺からの弁明を聞いて言う。




エリックとは俺と同じくサンドラ、この世界の勇者の統御を行おうとする者だ。




こいつとは昨日ひと悶着あったが、仲良くさせてもらっている。




「俺もあんなになるとは思わなかったんだ」


「ハハハ、でもシンさんって結構サンドラさんと仲いいんですね。よかったです」


「んー、ただ話すってだけでそこまで仲がいいわけではないんだけどなぁ。それに昨日今日の話だろう」


「いえいえ、こんな早い時期から話せているのは仲がいい証拠ですよ。案外この調子でいけばいつかはサンドラさんから好きになられたりするかもですね。」


「おいおい、よしてくれよそんなこと。もしそんなになったら俺はあんな激しい女と付き合わなくちゃいけないだろうが」


「ハハハ!断るってことを考えないあたり、やっぱりシンさんは優しいんですね」


「…あー!うるさい!」


「ハハハハハ!」


実技科目が終わった後の男子更衣室で俺とエリックはそんなことを話すのだった。











いろいろ授業が終わり、へとへとになった俺は放課後になったクラスをそろそろ帰ろうとしていた。




そんな時、エリックが俺に近づいてきてこんなことを言った。


「今日の部活動見学会、一緒に回りませんか?」


ん?部活動見学会?ああ、そういえばそんなものもあったな。


北コルロ高校にも部活というものはある。


今日はそれを見て回る、否、見て回れる日なのである。


いや、しかしなんだ。


俺にはこれっぽっちも部活動に参加するつもりはないんだが。


「ああ、俺部活動に参加するつもりないから遠慮しとくわ。」


「そんな悲しいこと言わないでくださいよ。あくまでただ見て回るだけなんですから。それにほら、魔王部なんてものもありますよ」


そういうとエリックはいやらしい笑顔でにやつく。


そんなこと言われてもいかないもんはいかないからな。











しかし、エリックは俺が行くというまで逃がしてくれそうにはなく俺は泣く泣く部活動見学会に行くことになった。


蘭とは一緒に帰る約束をしていたのでこのことを伝えなくてはならん。


たぶん蘭は昨日と同じ場所で待っているはずだ。


「よ、蘭。えっと、ちょっと急用が入ったから一緒に帰れなくなった。悪いが先に帰っててくれ。」


「…急用って何。」


「実はな、俺のクラスにエリックってやつがいるんだが、そいつが俺と一緒に部活動見学に行くって聞かなくって。悪い!先に帰っててくれ!」


「…部活動見学会……私も行っちゃだめ?」


「ん?ああ、まあ、かまわないと思うが。」


「…じゃあ、私も行く。」











「そういう経緯でこうなっているってわけですか」


「おう、すまんな、エリック。いや、お前が強引に決めたことだし全然すまんとは思っていないが」


「いえいえ、それは別にいいんですよ。いや、そもそも二人の約束なんで少しは申し訳なく思っていてほしいんですが……にしてもかわいいじゃないですか。彼女。」


俺の耳元で俺にしか聞こえない声でエリックは言う。


「かわいい?まあ確かにそうだが、お前、ひとにそんな色目使うやつだったのか?」


「いえいえ、そういう意味のかわいいじゃなくて、だって彼女、蘭さんはシンさんが部活動見学会に行くというまでは行く気はなかったんでしょう?かわいいじゃないですか。」


「ん?それとどこがかわいいと結びつくんだ?」


「ほぉ、いやいや、あなたもはなかなか罪な男だ。」


正直言ってエリックが何を言っているのかわからなかった。











最初にテニス部から回ることにした。




見ている限りそこにいるやつらはガチガチにやっているわけではなく、運動としてやっているだけだった。




俺はこういう気楽なやつが好きだ。




「この部活、結構よくないか」と言おうと二人を振り向くと




「鋭敏ですね。」


「…鋭敏。」


と二人は奥を見ながら口を合わせて言う。


俺もその視線につられて奥を見てみると




  シュッ!パン!シュッ!パン!シュッ!




そこにはものすごいスピードの球を打つ人物がいた。




「フォアのあのインパクト直前の完全に弛緩した状態、腕の遠心力を最大限たまに伝えていますね…ただものではありませんね。」


「…バックもすごい。ただでさえ両手だから腰の回転を伝えづらいのに完ぺきと言ってもいい。」


「ふむ、なるほど、確かにバックも素晴らしい。」


俺には何が何だかわからないんだが、どうやら二人の話を聞く限り、すごいらしい。




すると、その奥の人物は俺たちに気づいたのか、練習を一時中断してこちらに歩み寄ってきた。


「やあ、こんにちは。君たちは新入生かな?俺は部長のアレクサンドラ・アマデウス。アレクって呼んでくれ。」


「こんにちは、アレク先輩。素晴らしいフォームですね。」


「お、僕のフォームに目を付けるとは見る目があるね。どうだい、試しに打ってみないかい?」


どうやら二人はまんざらでもない様子らしい。


「よし、じゃあこっちへどうぞ。」











俺はおかしな事態に陥っていた。




練習場に来たところまでは良い。




だがなんで俺がラケットを握っているんだ?




確か同意したのはエリックと蘭の二人だけだったはずだ。




何がこうさせたんだ。

思い返せ。




確かあの後はこう続いたはずだ。


「しかし、いいラケットを持っていますね。」


「わかるかい?いや、実はこれ結構微調整したんだよ。いろいろ思考錯誤した結果305グラムが俺の体にはちょうどいいってことに気づいてね。」


「…305グラム、標準よりちょっと重め。振り回すのにそれなりの筋力がいるがインパクトは強くなる。」


「いや、ほんとにそうなんだよ。インパクトの強さと振り回しやすさの相関係数を取ったらこれがちょうどよくてね」


「なるほど。それほどテニスに心血を注がれているんですね」


「まぁね。それより、君はテニスについてどうなんだい?」


アレク先輩の視線は俺に注がれていた。


俺はもちろんテニスに詳しくなかったのでこう答えた。


「いやぁ、あんまり知らないですね」


「知らない!?それは良くないなぁ……じゃあ今日テニスの面白さをわからせてあげるよ」




そして今に至る。




あのくそ部長……余計な気を使いやがって……




「何をぼーっとしているんだ!もうボールが行ってしまったじゃないか!」


アレク先輩が怒りながら言う。


さっきの優しそうな先輩とは千差万別、テニスとなると目に燃え盛る炎を宿すのだった。


「ほら!足を動かす!」


あまりのキャラの落差に驚きつつも、打つことには始まらないのでボールを追いかけた。




   ベン!




よし!打てた!初心者にしては上出来だろう!




「フォームが違う!肩の力は抜いて腰で振りぬく!」


えぇ…




この地獄の練習は俺のフォームが良くなるまで、空はオレンジ色に染まりカラスが巣に帰り始めるまで続いた。











「はぁ…はぁ…はぁ…」


「うむ!たいした根性だ!普通の人間だったらどこかでやめていただろう!」


「はぁ、途中でやめていいなら…はぁ、先に言ってくださいよ…はぁ…」


「ハッハッハ!確かに言ってなかったな!うむ!それはすまなかった!しかしそれでもたいした根性だ!どうだ!うちの部活に入らないか?」


「いや絶対嫌です」


「ハッハッハ!その歯に衣着せぬ物言いも気に入ったぞ!」




俺の勇姿を見ていた二人に帰ろうと目配せで伝えると、二人は帰る準備をし始めた。




「ハッハッハ!いつでも待っているからな!少年!」




俺たちの背中に向かってアレク先輩はそう呼びかけた。




俺たちはさっさとその場を後にした。











道中何やら紙に視線を落とし込んで真剣に悩んでいるサンドラの姿があった。




別に話すこともないが、知人としてここは素通りするわけにはいかんだろう。




「すまん!俺ちょっとサンドラと話をしてくる!」


「僕は別にかまいませんけど…蘭さんは?」


「…問題ない、不貞行為さえしなければ」




何やら蘭からは一瞬殺気みたいなものを感じたが気のせいだろう。




二人には先に帰ってもらうことにした。




近づいてみると何やら「ここは駄目ね」やら「ここは論外でしょ?」やら独り言を言っていた。




「ようサンドラ、何してんだ?」


「ああ、あんたね。今は邪魔しないでほしいんだけど」


「へぇ、そんなに集中してんのか。どれ、俺にも何か手伝えるかもしれないだろ?言うだけ言ってみろよ」


「んー、ま、それもそうかもね。実は私どの部活に入ろうか迷っているの。野球部がいいかなと思ったんだけどあいにく男子しか入れないみたいで。だからテニス部がいいかなと思ったんだけど部長以外は最悪よ。あそこは。でもそれ以外の部活はみんなただ運動しているだけ、熱血的な何かがないわ」


「ほう、熱血的な何かか」




うまく言語化はできないが言いたいことは分かる。




つまりこいつは俺がさっき体験してきたような熱血さ、夕日に向かって走るような熱血さが欲しいのだろう。




「すまんな、俺じゃあ力になれそうにない」


「ああそう、ま、別にわかっていたからいいけど。」




そうか、分かっていたのか…




しかし、俺には実際力になれそうもないので、サンドラに「最終下校時間に気を付けろよ」と言い残しその場を去った。




このころの俺はまだ知る由もなかった。




ここで無理にでもテニス部に入らせなかったことから悲運にも激動の運命の歯車が回ってしまったことに。











翌朝、俺は目覚ましの音で起きた。




体にはまだ疲れが残っているようで、一向に動き出そうとはしなかった。




それでも何とか立ち上がると、窓のカーテンを開け、もう少し眠りたそうな俺の脳に喝を入れてやった。




俺は一人分の朝ご飯をチャチャっと作るとそれを掻き込み、歯磨き洗顔をしてハンガーにかけてある制服を着て、学校へと出発した。




今日も春麗な晴日である。




道中では蘭にあった。




どうやら話を聞く限り俺をここで待っていたらしい。




「…昨日あの人とは何を話したの?」


彼女は無表情ながら凄みを聞かせて言う。


俺はその凄みに少し圧倒されながらこう答えた。


「い、いや、別に変なことはしてないよ。ただ部活動の相談に乗っただけだ」


「…そう……同じ部活に入るとか?」


また凄みを付けて言う。


蘭よ、ただの会話にそこまで凄みを付けるものではないぞ。


そんないちいち凄みを付けられていたらこっち側がドギマギしちまう。


「いやいや、そんなんじゃないな。あくまで相談だ。」


「…そう」




そしてそのあと彼女は満足したようで黙り込んだ。




そのあとの登校中の会話はいつも通り俺がペラペラしゃべってそれを蘭が適当に流す、たまに蘭が話し出すの2パターンであった。




そう、いつも通り、つまり平穏に時は過ぎていくのだった。











「待っていたわ…!シン!」




俺がクラスに着くなりそう俺に大声で言い放ったのはサンドラ・ユーロプスその人だった。




クラスの目線は全部こちらに向き、さっきまであったであろうクラスメートの友達間の談話も一気に聞こえなくなった。




俺は全クラスメートの注目を集めながらこう言った。




「ええっと、なんで待っていたんだ?」




すると彼女は俺の目前に一枚の紙を突き出した。




見ると新部申請書とある。




これだけでは要領を得なかった俺はこう聞き返した。




「つまり、どういう意味だ?」


「はぁ!?ここまでしてもまだわからないの!?あなた本当に主席!?」


いや逆にこれだけで分かったやつのほうがすごい。


「まあいいわ。今から懇切丁寧に説明してあげる。」


「ああ、頼むよ」


「まず、この書類の意味は分かるわよね?」


「ああ、新部を創設するんだろ?」


「そ、でその創設には5人必要なの。だからあんたにその一人になってもらうプラス他の人を連れてきてもらうの。もちろん拒否権はないわよ」


はいはいそうですか。


俺の扱いはそんな感じですか。


「それは分かったんだがなんで新しい部活なんて作るんだ?」


「それはもちろん、この学校に私が入部するに見合う部活がなかったからよ!」


ここで俺は大いに後悔した。




しまった!あの時無理にでもテニス部に入れておけばよかった!











俺は渋々部員を集めることにした。




まずエリック、エリックはそもそも俺と同じ目的、勇者サンドラを統御するためにこの星に生まれてきたので彼女に接触する場面が増えるのは喜ばしいことだと即断で入ってくれた。




次に蘭、蘭は目的こそないと思うが入ることになった。




まああいつは無表情だが聖母的な優しさもどこか兼ね備えているから人の頼みは無碍(むげ)にはできない性格なんだろう。




そして集める部員はあと一人となった。




しかしあと一人は最後にして最大の壁であった。




なぜなら俺の交友関係が、俺の誘いに乗ってくれそうな人がもういなくなったからである。




俺は最後の一人をどうするか考えながら、いわば今の状態ではどうしようもないことを考えながらふらふらと一学年の校舎を歩いていると


「あの、何か困りごとですか?」


と俺に話しかけてくる女がいた。




俺はその声につられて声の主のほうを見ると、何やら見覚えのある顔だった。




「あれ?えっと……シン……さん?」




女のほうはどうやら俺の名前を知っているようだった。




まあそれも無理もないだろう。




俺は入学式のあいさつの時に全校生徒から顔を見られていたんだしな。




しかしなんなんだろう、この既視感は。




その答えは俺が悩まずとも彼女の方から解決してくれた。




「私です!エマです!痴漢から助けていただいた!」




痴漢?ああ、確かにそんなことがあったな。




あれは確かサンドラとも初めて会った場所で確かその場にはこんな感じの女もいたような……




それでやっと鮮明に思い出した。


「ああ、エマさんですか。久しぶりです。元気にしていましたか?」


「はい!あれ以降特にこれといった事件はなく元気です!で、お悩みのようでしたがどうかなさったんですか?」


「ああ、それなんですが…」




そして俺は彼女に事の経緯を話した。




「ふむふむ、なるほど。私でよければ部員になりますが。」


「本当ですか!ありがとうございます!」


こうして俺は3人目の、俺含めて4人目の部員を獲得したのだった。




そして放課後、俺は例の三人を引き連れてサンドラのもとを訪れると、サンドラは満足したような笑みを浮かべた。




「よくやったわ。これで新しい部が設立できるわ。でも一つ問題があるのよねぇ」


「ほかに何が問題あるっていうんだ。お前の言った通り部員も集めてきただろ?」


「いや、まだ何をするか決まってないのよ」


ここでお笑い芸人だったらずっこけるんだろう。


だが俺たち高校生はしない。


なぜなら俺たちは笑いを取るために生まれてきたわけではないからだ。


しかし横を見るとエマさんがずっこけた姿勢でいた。


「あれ?ここはこうやるものじゃないんですか?」


エマさんは少しおどおどしながら俺たちを見回す。


「いや、それが正しいわ!あんたたちもこれを見習いなさい!」


正義執行人のサンドラにとってはそれが正しいらしかった。


なぜ俺がとがめられているのかはともかく、エマさんの内情をそれとなく知れてしまった俺であった。




「正しい?そうね…そうだわ!私たちの部では正義を執行することにするわ!名前は正義部!いい案でしょ?」


俺以外の三人はうなずいていた。


俺もあきれながらではあるものの同調圧力に押されて頷くのだった。




にしても正義部って。


また多くの生徒から奇異の眼で見られそうだ。


俺は未来にそこはかとない不安を抱くのだった。


ブックマーク数が2になりました!ありがとうございます!

これからもこの作品の方を書いていきたいと思うので応援よろしくお願いします!

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