愛3
夕暮れ。
空は橙色に染まり、黒々とした木々は梢から斜陽を覗かす。
烏どもの群れは段々と離れていき、ついにはゴマになった。
開け放たれた窓からは、微風が涼しさを伴って入ってくる。
今の時期は確か桜の見ごろであるはずなのだが、昼に見えた薄紫の山々はすっかりと影を潜めて、そこにはただ橙滔々たる天と黒く淀んだ地があった。
校庭をそれとなく眺めていると、どうやら部活が始まったらしい。
青春を楽しむのは結構なことだ。
何せ時間は有限だからな。
俺もあんな同好会にさえ入らなければあんな風になれたのかもな。
俺はそいつらに一瞥をくれてやると、帰る支度をした。
学校の教材などを詰め込み重くなった鞄を肩にかけると、閉められた扉の方に向かった。
ここのクラスの奴らは律儀な奴で、扉は開けたら必ず閉めるのだ。
俺は取っ手のところに手をひっかけると、そのままガラガラガラッと扉を右にひいた。
するとそこには一人の男が立っていた。
「やあ少年、待ちくたびれたぞ」
何故だろう。
俺はこの人に俺のクラスを教えただろうか。
この人、というのは今俺の目の前でテニスの楽しさを熱弁している男のことである。
彼の名前はアレクサンドラ・アマデウス。
今年で卒業する三年生だ。
アマデウス先輩はテニス部の部長で先日の部活動見学会の時に知り合った。
テニス部の部員は皆緩くテニスを楽しんでいた。
ただし、アマデウス先輩を除いては。
アマデウス先輩は、テニスに詳しいと思われる蘭とエリック君が激しい称賛をするほどに美しいフォームで、素早いフットワークで、きれいな弾道で練習していた。
アマデウス先輩のテニスに対する熱意も話してみて本当だと分かった。
しかし、それだけならよかったのだろう。
それだけなら俺もこの人に一種の苦手意識というか敬遠の念というかを抱かなくて済んだだろう。
実際それだけではなかったのだ。
アマデウス先輩は俺にテニスの稽古をつけた。
それはもう、あたりが暗くなるまで、俺がヘトヘトになるまで続いた。
しかもそれがスパルタな指導の下に行われたのだ。
俺がボールを打つたびに腰の遠心力を使いきれていないとか、肩の力が抜けていないとかといった指導が飛んできた。
しかもそれは今日初めてテニスに触れた人が身に付けられるものではなかった。
それはアマデウス先輩も承知していたようで、終わった後には快活に笑いながら俺の頑張りを驚異的だと驚いていた。
そんな、驚くんだったら途中でやめてくれてもよかったじゃないですか。
それが俺の心の叫びだった。
それがあったため、俺はアマデウス先輩に苦手意識がある。
だからたとえすれ違った時にアマデウス先輩にクラスを聞かれても曖昧にしてごまかしていたはずなのだ。
それなのにいったいなぜアマデウス先輩は俺のクラスを知っていたのだろう。
「……というように……って、聞いているかい?ヒイラギ君。これはテニスをする上ではとても大切な話なんだよ?」
「ああ、すいません聞いていませんでした。かと言ってもう一度話してもらうのも恐縮なんで一つ質問をいいですか?」
「そんな恐縮することではないさ。では、もう一度——」
「質問なんですけどどうやって俺のクラスを知ったんですか?」
「ああ、そんなことかい。簡単だよ。通りかかったときに君についていっただけさ」
この人はさらっと怖いことを言う。
さすがに俺の家まではついていってないよな?
ついて行ってないことを願う。
「で、さっきの話をもう一度言うと——」
「あ、今日は用事があるので帰りますね。勉強になりました」
「あ、ああ、そうか、気を付けて帰るんだよ」
「はい、ありがとうございます」
俺は逃げるようにして帰った。
この物語、夜に書いているんですけど、そのせいもあってか結構狂っていますね。
やっぱり疲れが祟っちゃったなぁ。
と言っても夜にしかこれぐらい面白い物語は、いや、実際面白いかどうかは別として自分の中で及第点をあげられる物語は書けないのでやっぱり夜に書くんですけどね。
そういえばブックマーク数が2に行きました!
ありがとうございます!
実はこの感謝表明は改訂した第4部でもやっているんですけど、別に後書きに整合性なんて要りませんよね。
あとは評価感想を待つだけでしょうか。
いやぁ、もうブックマーク数が2なんて出版社から引く手数多ですね。
もしかしたら今参加中のコンテストで金賞をとれちゃったりして。
まあ現実的には無理でしょうけど、夢を見ることって結構楽しいですよ。
僕だってラノベを出版して、通信制高校であるためクラス程度の交流すらないものの女子からはモテモテになって、神から時間停止能力を与えられて無双して、僕の歌声で世界の紛争を止めるという夢を見てますもん。
皆さんも現実が辛くなったら夢を見てみてはいかがですか?




