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魔王転生~元魔王と勇者とその他諸々の物語~  作者: Black History
けれども謳歌する二学期
19/28

エッマエッマにしーてやんよー♪

朝は小鳥のさえずりで起きます。

チュンチュンとなく小鳥さんたちはかわいらしくて、とても癒されます。

私は愛らしい音色でベッドから起き上がると一つあくびをして辺りを見渡します。

ベッドには昔から一緒にいるせいでくたびれてしまったクマのぬいぐるみや、新参者の猫のぬいぐるみがあります。

この猫のぬいぐるみは私の誕生日の時に友達からもらったものです。

クマさんもうかうかしてはいられませんね。

それはそうと私は着替えます。

私だって思春期ですので着替えるのを叙述するのは恥ずかしいです。

ですから省略させてもらいました。

下に降りるとお父さんとお母さんがもう食卓に着いていました。

私も急いで椅子に座ります。

「おはよう」

「あら、遅かったじゃない。おはよう」

お父さんの挨拶で私が来たことを知ったお母さんが遅れて挨拶してきます。

「おはよう」

私は二人にそう答えました。

朝ごはんは毎日同じなのですが、家族と団らんしながらというのはやっぱり楽しいものです。

朝ご飯を食べた私は身なりを整えます。

鏡の前に立ってみると……どうやら今回のヘアースタイルは大爆発をモチーフとしているようです。

それを丁寧に整え、制服に着替えると私は通っている高校へ向かいます。

私の名前はエマ・コーギー。

一人の恋する乙女なのです。






「あー!おっはよーー!」

いつもの待ち合わせ場所に行くとそこには元気のよい声を出して私の方向へ大きく手を振る人がいました。

私の友達です。

その方は私の方へ猛スピードで駆け寄ってくると、勢いそのままに抱き着いてきました。

少し苦しいですがもう慣れました。

「おっはよー!エマ!今日もいい天気だね!」

「そうですねぇ、確かに今日の小鳥のさえずりもいつもよりつやがあった気がします。」

「え?小鳥のさえずり?何のこと?まあ面白そうだからいいや!」

そう言うとガハハハと到底少女が出しているとは思えないほど豪快に笑い、私の方をベシベシたたきます。

少し痛いですがもう慣れました。

「そ・れ・よ・り」

すると彼女はちょっと声のボリュームを落としてこう聞いてきます。

「あっちの方はどうよ?」

「え?あっちの方?」

私もつられて声が小さくなってしまいました。

「ほーらー、あんたの好きな人」

「え!いや!全然だよ!」

あまりに急に話を振られたため頓狂な声を出してしまいました。

「ふむふむー?なるほど?その感じだと何か進展があったでごわすな?」

「い、いや、そんなことないよぉ」

「ふーむ?……ま、いっか!何か進展があったら教えてよね!私も楽しみにしてんだから!」

「う、うん!」

とりあえず誤魔化せたみたいでほっとします。

実は進展があったのです。

あれを進展と言っていいのかはともかくとして、夏休みの時に話すことができました。

あ!誰とですかって?

うふふ、それは秘密です。

「しっかし相手のエリック君もなかなか鈍感だねぇ。こんなにわかりやすい子の気持ちに気づかないなんて……案外もう気づいていたりして?」

…………




場面は学校に移ります。

ここは私の教室です。

帰宅時間が近くなったためか、各々自由を噛み締めている表情をしています。

「……ということで話す内容は終わりだが、何か質問その他言いたいことがある人、挙手」

担任が帰りの会を締めくくっています。

今日の先生はこの後も残業があるのか少し投げやりです。

帰りの会の後は部活がある人はそれぞれ活動場所に向かい、ない人は帰ります。

私は帰ります。

ですが一応部活には入っているのです。

しかし私の部活はある方の意向によってあるなしが決まるので不定期なのです。

ちなみにその部活の名前は正義部という名前です。

そこで私の意中の人に出会いました。

最初はいつも微笑んでいらっしゃるので優しい方なんだろうなと思っていたのですが、正義部を発端にいろいろ関わることが増えていって、彼の心の芯の強さとか、普通の優しさとは違う包み込まれるような優しさとか、それでもときには少しいたずらっぽいところとか、仲間思いなところとかに気が付きました。

そしていつの間にか好きになっていたんです。

その人の名前はエリック・オービンス。

私なんかより飛び切り頭がよくて、飛び切り魔法ができる人です。

確かにかなわぬ恋なのかもしれません。

ですが、私はあきらめようとは思っていません。

私だってこの高校に入ったのですからやればできる子なはずなのです。

この後多分エリックさんと帰り道で会うでしょう。

今度こそは思い切って話しかけてみようと思います。




「うーん、緊張するなぁ」

「大丈夫だって!エマ君!何事も最初だけが辛いのだよ!」

「でもぉ……」

「私がサポートしてあげるから!どーんと大船に乗ったつもりでいなさい!」

私は数メートル前にいる背中を見つめます。

こうしているうちにも遠ざかって……ああ、やっぱり私はできない子なんでしょうか。

「大丈夫だって!ほら!行くよ!」

そう言って私の友達は私をエリックさんの方へ引っ張ります。

私は恥ずかしさから必死に抵抗しますが、引っ張っている友達が男勝りであることと私が非力であることが相まってそのままずるずると引き摺られます。

そしてとうとうエリックさんの前まで来てしましました。

エリックさんはいきなりの私の登場に驚いたような顔をしています。

その顔にすら優しさが溢れており、このまま体を預けてしまいたいような……いけません!私は何を考えているのでしょう!

私はそれをかき消すようにこう言い放ちました。

「エリックさん、途中まで一緒に帰っていいですか?」

すると彼は驚いたような表情を解き、いつものほほえみに戻るとこう答えました。

「ええ、よろこんで」

「エリックっち!私も入れてね!」

そう彼女が言います。

確か初対面のはずなのにここまでフレンドリーになれるのはさすがだと思います。

「ええ、いいですよ」

それに一切困惑するような様子を見せないエリックさんもさすがだと思います。




「エリックっちはなんか趣味とかあんの?」

会話が進展しない様子を見かねてか、私の友達がエリックさんにそう質問します。

「趣味ですか……まあ最近は人間観察にはまっていますかね」

「ええ!特殊だねぇ!どんな人を見てんの?」

「誰とは言いませんが僕のクラスの方ですね」

「へぇ、おもしろそう!ね!エマもそう思うよね!」

急に私に振られたので若干しどろもどろになりながら

「え?まぁ……うん」

と答えました。

「もっとその話してよ!」

「ええ、いいですよ……」

そしてエリックさんが言ったのはある一人の朴念仁と二人の少女の話でした。

一人の少女はその朴念仁のことが好きなのですが、素直になれず、つい強く当たってしまうらしいです。

そしてもう一人の少女も朴念仁のことが好きなのですが、その人は自分のその気持ちを押し殺してでもその朴念仁に幸せになってもらおうと思うあまり、気持ちを表に出せていないらしいです。

二人ともその調子なので、朴念仁の男の人は一向に気が付かないみたいです。

二人とももっと自分の気持ちに素直になったらいいのに。

私はそれを聞いて漠然とそんなことを考えましたが、肝心の自分が素直になれていないことに気づき、自分で自分の首を絞めている気分でした。

「へぇ……じゃあ、もしエリックっちがその朴念仁と同じように素直になれない人に好きになられたらどうするの?」

「そうですねぇ……まあ、本人にとってそれを暴かれるのは嫌でしょうし、言ってくれるまで待ちますね」

「お!男らしいね!」

「いえいえ」

エリックさんはそう苦笑すると前に向き直りました。

彼女の方を見ると私に満面の笑みを見せてきました。

そうこうしていると分かれ道が来たみたいで、エリックさんは「僕はこっちに曲がりますけどエマさんたちはどっちですか?」と言ってきました。

私たちは反対方向だったのでそこで別れました。

しかし、今回は楽しかったです。

大した会話はできていないけど、そばにいるだけで私の心音はあがり、少し緊張はしたけれど、でも心地よくなっていくのを感じました。

今回は彼女に感謝です。




「いや、しっかしエリックっちは気づいてるね。これは間違いない。だって最後の質問の受け答えが洗練されていたもの。これは彼がとっくのとうに考え抜いていたあかしだね」

「えぇ、それだったらはずかしいよぉ」

「いいじゃないいいじゃない!一歩前進だよ!」

そう言って彼女は私の背中をバシンッとたたきます。

少し痛いですがもう……いや、これは慣れていない痛みなので少し涙目になりました。






次の日も私は友達と登校しました。

彼女は昨日のことをいろいろ茶化してくるので少しうるさいです。

そして学校に入ろうとしたその時、シンさんと会いました。

「お、エマさん、おはよう」

「あ、おはようございますシンさん、今日もいい朝ですね」

「…おはよう」

シンさんの隣からランさんがぬっと出てきます。

「あ、ランさんもおはようございます」

蘭さんはいつも表情が硬いので何を考えているのかわからず、ちょっと苦手です。

「お!君かい?入学式であいさつしたシン君は!」

私の友達が会話に入ってきます。

「お、覚えてくれてたのか」

「そりゃあもちろん、何せあの正義部に入部しているんだからね」

あの、というのは多分あのことを指すのでしょう。

実は正義部にいる方は私以外ものすごい優秀なのです。

シンさん、エリックさん、ランさん、サンドラさんは皆定期テストで満点と4人同立で一位。

これだけでもこの高校の歴史上類を見ないことなのですが、さらに凄いことがあります。

それは、この高校の定期テストには実技試験というものもあるのですが、そちらに関してはランさんは満点、シンさん、エリックさん、サンドラさんに関しては採点不能という前代未聞の事態に陥ったのです。

その経緯を説明するにはまず実技試験の内容について述べなくてはなりません。

実技試験はそれぞれ体術、魔術、総合技術の三つの観点から採点されます。

体術に関しては先生が相手をし、魔術は的に向かって魔法を打ち、総合技術は体術と魔術を使って先生と模擬試合を行います。

エリックさんは体術で当たった先生を一撃で気絶させ、魔術に関しては体育館ごと的を切り崩し、総合技術においては先生を弄んでいました。

サンドラさんは体術においては先生を壁まで吹っ飛ばし、魔術に関しては的を体育館ごと黒焦げにし、総合技術に関しては、体術の結果を鑑みて増員された3人の先生相手に圧勝していました。

最後にシンさんなんですが、シンさんは正義部の中でもとびぬけて強く、体術に関しては、まず初めに「小指で十分だ」と宣言し、有言実行、的確なところで的確な場所を小指で押し、先生の背中を何度も地につけていました。

そして魔術では、先生たちはなぜかシンさんの場合だけ警戒をしていたようでだだっ広い、的が蠅ぐらいにしか見えないほど遠くの場所で行われました。

しばらくすると上からものすごい熱波を感じてなんだろうと見上げると、巨大な、それはもう世界の滅亡を彷彿とさせるような隕石が降ってきました。

それ以降のことは怖すぎてその場に縮こまってしまったのでよく分りません。

ですがすごい熱かったです。

総合技術に関しては「始め」の合図とともに相手の先生の体が地面に打ち付けられました。

一瞬私を含めた周りの生徒はきょとんとし、先生はいったい何をやっているのだろうと思いました。

しかし、その先生が呻き苦しみだしたのでただ事ではないというのが痛感させられました。

いったい何が起こったのかわからなかったのですが、ただ、採点不能という事実だけがわかりました。

ランさんは普通に優秀な方という感じでした。

いや、ランさんですらこのままいけば多分この世界では権勢を誇れるほどの実力に違いないのですが。

ちなみに壊された体育館ですが、現在修復作業中です。

この高校は国立なので予算は潤沢にあるようです。

「あの、か……いや、俺たちはサンドラっていうやつに振り回されているだけなんだよ」

シンさんが応えます。

「いやいや、まぁあの事件も凄かったけどさ、やっぱり優秀さのほうが驚いたよ」

あの事件、というのは多分あの事件のことを指すのでしょう。

ある日、二年生の女子更衣室から女子の着替えが盗まれたのです。

それも一人ではなくて被害者が何十人もいました。

しかもそれは一時的なものではなくて定期的に起きていました。

これに頭を悩ませていた学校だったのですが、あろうことかその事件がサンドラさんの耳に入ってしまいます。

……そこからはもうお分かりですね。

そうです、私たちは文字通り、サンドラさんに振り回されました。

二年生の女子更衣室の前で張ったり、中で着替えたり、しまいにはエリックさんとシンさんに着替えさせるほどでした。

その努力の甲斐もあって犯人を捕まえます。

あとはその人を職員室まで連れて行って自供させるだけでした。

この結果、私たちは功績を認められて正式な部活になったのです。

いや、それともあの事件のことを指すのかもしれません。

もう一方の事件というのは、体育祭で私たちが断りを入れずみんなの前で踊ったということです。

どうしましょう、心当たりがあり過ぎます。

「お、そうか、これからもそれだけの認識で頼むよ。変なことしている人たちだと思われるのは嫌だからな。いや、サンドラだけそう思うのならいいんだが」

この応答からシンさんは多分“あの事件”を踊りの方だと思っているのだと思います。

「にっしっし、ほどほどに楽しませてもらうよ」

「ああ、そうか、じゃ、俺たちはこっちだから」

「うん!またねぇー」

「シンさん、また今度」

そして私たちはそれぞれのクラスに行きました。

その途中、彼女はこんなことをつぶやきました。

「朴念仁っていうのは彼のことか」

朴念仁?一体彼女は何のことを言っているのでしょう。

私には到底わからないんですがどなたかわかる方はいらっしゃいますか?






その日の正義部は招集がありました。

ですから放課後、正義部の部室に行きました。

着いてみると、そこにはもう私以外集合していました。

エリックさんが微笑みながら出迎えてくれます。

サンドラさんはホワイトボードを前に持ってくると、ドンとたたき、こう言い放ちます。

「皆は聞いたかしら?今回、校内で俳句大会が催されることになったわ!だから私たちの威厳を見せてやりましょう!」

「ちょっと待て」

シンさんがすかさず突っ込みます。

「俺たちが初心者だってことは分かってんだよな?」

「そんなのもちろんよ。だから今日から習えばいいでしょう?」

「お前なぁ……俺たちの自由の時間も考えてくれよ」

「何よ、あんたはどうせ暇が空いたらいっつも図書館に行くだけでしょう。それが有益な授業に変わるだけじゃない」

「お前は本のありがたみをわかっていないな。そもそもエクリチュールというのは——」

「ああ、はいはい、あんたの無益な豆知識はどうでもいいからさっさと話を進めるわよ」

「ていうかなんで俺が図書館に行っているって知っているんだよ。一度も話したことないだろ」

シンさんが最後の抵抗とばかりに呟くようにそう言いました。

「し、仕方ないでしょう。知っちゃったものは知っちゃったんだから」

サンドラさんはちょっと焦りながらそう答えます。

「それで、今回のお題は何なんですか?」

エリックさんが話を本筋に戻すような質問をします。

「よく聞いてくれたわね。いい?今回のお題は“月”よ!」




教えてくれる方はどうやらサンドラさんの家にいるらしいので、サンドラさんの家に向かうことになりました。

あれ?確かこっち側は高級住宅街だったような……

そうです、高級住宅街のそれもど真ん中にだだっ広くサンドラさんの家がありました。

私は門だけでも圧倒されたのですが、私以外の方はそれほどでもありませんでした。

中に入るとどこまでも続く庭が広がり、遠くの方にポツンと家が建っていました。

しかし近づいてみると、家は家でとても大きかったです。

サンドラさんの家に何度も圧倒されていると、「ここよ、入って」と先を促されました。

中に入っても広いものは広く、通っている学校と遜色ないくらいには大きかったです。

その家の一室に促されるまま入ると、そこにはふかふかしていそうなソファーと、きっちり頑丈な机がありました。

前には黒板があり、そこに多分今回私たちを教えてくれるであろう人が立っています。

私たちはソファーに座るよう促され、授業が始まりました。


これでこの話は終わりです。

次からは真の視点に戻ります。

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