2話 馬車の中で
私は馬車に乗り『獣の城』へ向かっている。
暇なので状況を整理しようと思う。
私はあのクソゲー『真実の愛~野獣と美女~』の主人公に生まれ変わった。
今の私はゲームの中では終盤まで語られない事情も全て知っている。
『獣の城』の住民達はいつの間にか廃墟の城にやってきて、地元の人間達から『元人間の異形』として認識されている。実はこれは完全に間違った認識であるが。
そして私は修道院で『癒し手』として育てられた。
『癒し手』とは『その命と引き換えに異形を人間に戻す力を持った者』である。
修道院からは「人間にとって味方にしたら有益な異形を人間に戻せ」と言われている。
そしてゲームでは主人公とくっついた相手を奇跡の愛のパワー()で私の命を失わずに人間に戻す事になる。
私は一人のルートしかやってないから情報が少ないけど、ゲームレビューサイト(ネタバレ厳禁)を見たときに『どのルートも大体オチは一緒』と書かれていたので恐らく…うん…他の攻略対象も…人間に…
そして『獣の城』の住民だけれど、彼らは実は人間の世界とはかなり離れた所にある大陸の住民だったりする。
人間達の持つ資源や文明を大陸に持ち帰る為に人間の世界に進出したのだ。
しかし人間達には彼らの姿が異質に見え、言葉も交わせる事からいつしか彼らの事は人間達から『元人間の異形』と思われるようになった。
そして人間達は秘術を完成させ、『癒し手』第一号の私が産まれた…という訳。
ただし、人間側にはひとつの誤算があった。
それは、私がケモナーだということ。
部屋のコレクションもシスター達に「これは何?」と聞かれて咄嗟に「獣達を癒す為には獣の事を理解する為に私はこれらを集めました」と言ったらシスター達からは感心されたが、本心は「なんて素敵な作品なんでしょう…はぁ…美しい…尊い…」である。
毎日作品を眺めつつ獣の城の住民達への愛は日々募っていくばかりであった。
そして私は今日、彼らに会いに行く。
それにしてもどのキャラを選んでも最後は人間になる?
私の命を使って異形を人間に戻す?
とんでもない!!!
…獣側の裏事情も、私の裏事情も全てわかっている状態で私のやることはただひとつ
『獣の城の住民をありのままの姿で居させる事』
あのクソゲーのクソオチを真っ向から否定してやる!!!!
なんでケモナー向け謳ってるゲームって大体キャラがケモ耳だけの人間なんですかね???