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第二章:現場へ急行

正考大学は都内の渋谷側に存在する私立大学だ。


そんなに有名でもないがサークルなどは活発で美人も多いと隠れて人気がある。


そして私が二度も落ちた大学だ。


あれから既に5年は経過している。


5年も経過しているが、まったく変わってない。


「やれやれ。いつ見ても嫌な場所だな」


FX4を駐車場に止めて降りた私は辛気臭い溜め息を吐いた。


「さぁ、行きましょう。ダーリン」


ステファンが励ますように言って私の腕を引いた。


「そうだね。行こうか」


自分に喝を入れて私とステファンは大学の中に入った。


大学は一般人でも入れるから私たちも難なく入る事が出来た。


まぁ、警備員に怪しまれたから少し小金を握らせて黙殺させたが。


大学の中はボストンと同じく色々な学生がサークルや授業、学内デートを楽しんでいた。


「何処の国でも大学は楽しい場所らしいな」


私はコンクリートの道を歩きながら言った。


「そうね。親元から離れて一人暮らししてバイトにサークル。まさに人生の中でも一番楽しい時間かもしれないわね」


ステファンも頷いた。


「・・・・それにしても、さっきから視線が気になるんだが」


「実は私も」


歩いてからだが、やたら私とステファンに視線が来るのを感じる。


まぁ、私は衣装でステファンは類い稀なる容姿と美脚に視線が行くのだろう。


「さっさと現場を調べて帰ろう」


ステファンも頷いて足早に進んだ。


現場は大学の中にある芝生地帯で普段から多くの学生が食事などで来る事が多く“気”が混ざり易い。


「・・・・ここが現場か。確かに“気”が混ざり易い場所だな」


肌で色々な“気”を感じて私は顔を顰めた。


全てが嫌ではないが負の感情がある。


そんな“気”が混ざり大きくなる事で稀に魔界に通じるらしい。


「えぇ。これなら悪魔一匹、来る事も出来るわね」


ステファンも辺りを見回して頷いた。


「取り敢えず周りを調べるか」


私とステファンは二手に分かれて現場を回ってみた。


何処から出てきたのか調べるのだ。


私一人だと変な目で見られる。


今も変な格好してると陰口を言われた。


「やれやれ。・・・・・・・・ん」


溜息を吐いた時に何かを感じ取り視線を横に移した。


視線の先には大きな木があった。


そこに微かに“魔”を感じた。


「・・・ここから出たのか?」


木に近づいて手を当ててみる。


「・・・・・・・・・ここからか」


私は目を開けて確信した。


コートの中から銀の弾丸を取り出して木に押し込んだ。


これで悪魔が来ても魔界に逃げられない。


恐らく逃げる時もこの場所から逃げる筈と長年の勘で思ったからだ。


「これで良し」


背を向けて歩こうとした時だ。


「あー!!謙一じゃん!!」


聞き覚えのある元気過ぎる声。


・・・・・・不味い。


私はソフト帽を深く被り足を速めた。


「ちょっと!謙一!止まりなさいよ!!」


声の主もスピードを上げてきた。


段々近づいてきた。


流石は運動部在籍の大学院生だ。


しかし、こっちも銃弾の雨を掻い潜ってきた足がある。


昔は負けたが今は負けない。


私は更にスピードを上げた。


周りでは行き成り始まった追いかけっこに眼を奪われていた。


「くぅ、やるわね!!だけど、これならどうよ?!」


ヒューン


何かが飛んで来る音が耳にした。


その瞬間に背中に衝撃が走った。


ゲバシッ!!


「・・・・・ッ」


私は悲鳴を上げそうになったが歯を食い縛り踏ん張った。


ドベシャン


地面に勢いよく倒れる私。


それと同時にシュタと見事な着地をする音が後方からした。


「この私から逃げられると思った?」


ふふん、と勝ち誇った笑い声が聞こえた。


「・・・・飛び蹴りなんて良い歳した女性がするもんじゃないよ」


取れたサングラスを拾いハンカチで汚れと顔を拭きながら立ち上がって諦めて後ろを向いた。


「久し振りだね。由佳里さん」


「最初からそうしてれば良いのに」


由佳里さんは肩まで伸ばした茶髪を振り払った。


渡辺由佳里。


私の三番目の姉だ。


歳は25歳で正考大学の現役大学院生でフットサルのエースでもある。


私とは2歳しか違うから姉さんなどと呼ばずに由佳里さんと呼んでいた。


由佳里さんも友達感覚で私に接して来たのも理由の一つだ。


「・・・何か用?」


私が少し不機嫌な口調で尋ねた。


何時もなら冷静だが、家族であるし飛び蹴りが何気に痛かったから感情が少し出た。


「久し振りに会ったのに随分な態度ね」


由佳里さんは少し怒った顔になった。


その顔が妙に幼い印象を与えた。


一般男性なら可愛いと思うだろうがステファンがいる私には子供の笑みにしか見えなかった。


「・・・・・・・」


私は無言で背を向けた。


こんな無駄な時間は過ごしたくない。


「ちょっと待ちなさいよ」


コートの袖を掴まれて止められた。


「・・・・用があるなら言って下さい。私は忙しいんです」


「ちょっとくらい姉と茶でも飲んで話そうとは思わないの?久し振りに会ったんだから」


「言った筈です。忙しいと」


手をやんわりと振り払った。


「では、失礼。由佳里さん」


軽く帽子を取って一礼して背を向けた。


「ちょっと待ちなさいよ!!」


由佳里さんが後を追い掛けてきたが私は立ち止らずに歩き続けた。


再び飛び蹴りを繰り出そうとする気配を感じた。


二度も同じ技を食らうほど馬鹿じゃない。


少し横に移動した。


その直後に由佳里さんの身体が通り抜けた。


ベシン


見事に尻から地面に着地した由佳里さんは尻を撫でた。


「痛ーい!!」


「自業自得ですよ。今度、暇な時にでも茶をしますから今回は失礼します」


由佳里さんの横を通って私は芝生を後にした。


後ろから由佳里さんの声が聞こえたが気にせず歩き続けた。


大学を出てFX4に行くと先に来ていたのかステファンが缶コーヒーを飲んで待っていた。


「ただいま。奥さん」


私が喋り掛けるとステファンは何かを投げた。


片手で受けるとGEORGIAのエメラルドマウンテンの缶コーヒーだった。


「ありがとう」


礼を言ってから缶の蓋を開けた。


「どうだった?」


ステファンの問いに私は答えた。


「見つかったよ。弾丸を入れて逃亡阻止をしておいたから大丈夫だよ」


後は犯人探しだと言った。


「えぇ。ここからが問題ね」


ステファンの言葉に私も頷いた。


「犯人が何処に居るかだ」


大抵は出た場所の近くに潜伏するものだが、稀に遠い所とかに逃亡したりする。


「まぁ、その辺は“伯爵様”も手を貸すでしょ?」


そうだな、と言って私はエメラルドマウンテンを飲んだ。


適度な甘さが何とも言えない美味さだ。


「それじゃ事務所に帰りますか?」


FX4のドアに手を掛けた時だった。


「見つけたわよ!謙一!!」


「・・・・しつこいな」


はぁ、と溜め息を吐きながら視線を大学の方へ移した。


由佳里さんが蒸気した顔で仁王立ちしていた。


「誰?あの女?」


ステファンがギロリと怖い眼つきで睨んできた。


美人が凄むと怖いものだ。


嫉妬は嬉しいが眼つきが怖すぎる。


しかし、それほど嫉妬してくれるのが、また私のしがない男心を擽ってくれて放さない。


「2歳年上の姉だよ」


話だけはしただろ?と言うとステファンはああ、と頷いた。


「あれが由佳里さん。話で聞いた通りの元気あふれる女の方ね」


クスリと笑うステファン。


「元気があり過ぎて困るよ。さっきも飛び蹴り食らったし」


今頃になって腰が痛くなった。


「飛び蹴り?そう言えばフットサルのリーダーだっけ?」


「そう。お陰で腰が痛い」


「それなら運転は私がするわ」


ステファンが運転席に回ってきた。


「じゃあ、お言葉に甘えて」


助手席に回りドアを開けて中に入ろうとした。


「ちょっと!!私を無視するな!?」


由佳里さんがドシドシと足音を立てて歩いて来た。


「何ですか?今度お茶をするって言った筈ですよ」


いい加減にしつこいと私は思った。


「誰よ?その金髪女は」


私の言葉を無視し運転席のステファンに鋭い視線を送る由佳里さん。


「彼女は私の相棒兼恋人のステファン」


「こ、恋人!!」


由佳里さんは面食らった顔をした。


「手紙で教えた筈だけど?まぁ、そういう事だから失礼」


ステファンも一礼してドアを開けてエンジンを掛けるとFX4を発進させた。


ルームミラーから由佳里さんが怒鳴っている姿が見えたが気にしないようにした。


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