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30cmマグナムの生涯!  作者: 猪子馬七
第1章 30cmと30cm
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第8話 仕事の準備



 新人冒険者になったダン。既に初の仕事の依頼は受けている。ならば仕事の前にすることは、その準備だ。


「さて、まずは武器屋だな」


 そう言うと、ダンは武器屋へと足を運ぶ。ギルドで紹介して貰った大きな店舗の武器屋。冒険者を表すギルドカードを提示すれば、10%割引きしてくれるそうな。


 ダンは剣術の心得は無い。それでも護身用に(なまくら)でも、ショートソードぐらいは用意するべきだと講習会で教わった。そして武器屋にて、一番安い剣が並ぶコーナーを見て回るが…。


「た、たけぇ…。え?一番安いショートソードが250 G(ゴールド)⁉︎10%の割引きがあっても225 G(ゴールド)かよ…」


 高い安い以前に、所持金は既に200 G(ゴールド)を下回っているので、購入することはできない。

 仕方ないので元々所持していた果物の皮むきに使う、小さなナイフを武器として使う事に。護身用としてはかなり、心許ない。


 次にダンが向かったのは防具屋。ここもギルドから紹介があった、冒険者御用達の防具屋。10%割引きもある。


「…やっぱり高い」


 かなり薄い革でできた革の鎧。それが200 G(ゴールド)。割引きがあっても180G(ゴールド)。食費が無くなるので手が出ない。

 帽子や手袋など、他の防具も検討したが、他にアイテムの購入も控えているのだ。防具は今着ている布の服のみと、武器同様に諦めることに。


 そして最後に道具屋。やはりギルドの紹介による10%割引きが可能な店だ。

 店に入り、ギルドの講習会で必ず買うように勧められたポーションは…300 G(ゴールド)。借金でもしなければ買えない額に、早々に諦めて包帯を一巻き買い、ダンは仕事の準備を終えるのであった。



 …この時、ダンは素直にギルドの紹介された店に向かったが、そもそもそれは間違いである。

 お金が無いのだから、新品の商品が並ぶ店に行くよりも、中古の装備を整えられる中古屋に向かえば、僅かなお金でもそれなりの装備はできた筈。

 中古の(なまくら)ショートソードなら80 G(ゴールド)で買えるし、革の鎧にしても中古なら70 G(ゴールド)以下で買える。


 田舎者ゆえ、勧められるがままに新品のお店に向かい、結局装備品を購入できずに軽装での参加となるのだった。







 そして遂に初仕事の日、ギルドの従業員と共に依頼主のエクレア王国第7軍小隊長ヒズが現れた。


「よーし!全員、集まったようだな!仕事内容についてはギルドから説明があった通り、ババロア王国との国境近くの山道の整備と、不審物や不審者がいないかの捜索だ。一週間分の食料や物資などを運ぶ輜重隊は、今日の夕方までには運び込まれる手筈だ。我々はそれに先行して、国境まで足を進める。到着予定は昼過ぎ。一食分の食料を各々受け取り、準備が整い次第出発だ!参加者は34名。人数が多いから、もたもたするなよ!」


 小隊長のヒズは一方的に説明を終えると、集まった新人冒険者34名は用意された食料を受け取り、出発の準備を終えた。その中の一人、ダンも滞りなく準備を終えた。


「えらくむさ苦しいメンバーばかりだな…。女の子のメンバーが…たった三人かよ!」


 折角、都会での初仕事である。やはり可愛い女の子がいるのであれば、それに越したことはない。

 もし、参加者に可愛い女の子がいれば仲良くなって、あわよくばシッポリと…などと、画策していたダン。

 だが、参加している数少ない三人の女の子は…可愛くない。それどころかブスだ。30cmマグナムが相手をするべき存在ではない。


 ダンは田舎から都会に出てきたが、都会で友達を作る気は無かった。目的は友達などではなく、可愛い彼女を作ること。勿論、最終目標はハーレム。

 だから参加している女の子がブスであれば、仲良くなる必要は無いと思っている。更に、男の冒険者とも仲良くなる必要もないとも…。

 それが故に一言も発言せず、黙々と用意を済ませて準備を整えた。


 そんなダンをモテる男が見たら、頭の悪い奴と嘲笑うかも知れない。

 当然のことながら、ブスの友達がブスとは限らないのだ。ひょっとしたらブスの友達に、凄い美人がいる可能性だってある。

 ならば少なくとも交友関係を広げて、美人との交友関係に近づく努力をするべきではないだろうか?それをダンは分かっていない。だからモテない。30cmマグナムを有しながら。



 武器や防具の選び方から、交友関係の広げ方まで、何一つ正しいことができないダン。しかし、その判断力の無いダンが、死地から生還することになる。


 ババロア王国との国境付近への移動の準備は整い、小隊長のヒズと共に34名の新人冒険者は、王都から半日程で到着する仕事の現場へと向かうのであった。



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