第84話 スペアコア
『うーん、凄いね!このDPは!ビコーちゃんとクギーちゃん、二人のリビングウエポンを作るのに、殆どのDPを注ぎ込んだからDP枯渇してたけど…今回の撃退で、アホみたいに貯まりました!』
Sランク冒険者のヌンがおよそ18000DP。ドクが14000DP。スカーフェイス11名は一人平均1500を超え、全員で17000DP。ブルーハイエナもBクラスなのにステータス値は高く8名で10000DP近くを稼いだ。
『全員で60000DP。うん、当面は枯渇しないね、これだけの量なら!』
大喜びのダン。パイもそれに同意。
「やっとここまで来たわね。それに、経験値も稼いだんでしょ?」
『そーです!当面の目標であったレベル30を一気に超えて、現在はレベル36!ついにスペアコアも召喚可能となりました!』
「「スペアコア?」」
聞き慣れない言葉にビコーとクギーが首を傾げる。
『ああ、そうだったね。二人は知らなかったんだ。じゃあ、一応スペアコアについて説明しておくね』
スペアコアはレベル30前後で召喚可能になる、ダンジョンコアのスペアである。
このスペアコアはとても万能な為、ダンは一刻も早くレベルを上げて、ゲットしたいと思っていた。
そして今回、大量の経験値を稼ぎ、目標のレベル30を超えることになったのだ。
スペアコアを召喚可能になったダン。早速、スペアコアを召喚するのであった。
『では…行きます!』
と、掛け声と共にダンのダンジョンコアが分裂し、もう一個のコアを生み出した。
『男なのに、まさか出産を経験するとはね。はい、これがスペアコアです。よく見て下さい。元々のダンジョンコアと、全く一緒ですね』
触手の先でスペアコアを見せるダン。そしてスペアコアの万能さを語った。
・スペアコアの召喚費用は5000DP
・ダンジョンにセットして置くと、ダンジョンコア(マスターコア)が破壊された時に、新たなるダンジョンコアとして使用ができる。
・ダンジョンの新しい出入り口を作るのに使用できる。逆に複数の出入り口がある時、それを塞ぐ事ができる。
・コアを子供として、新しい場所にダンジョンを作る事ができる。その際、能力の一部をコピーして授ける事が可能。
・ダンジョンモンスターの体内に飲み込ませると、そのモンスターの意識を乗っ取る事が可能となる。つまり、自身の分身を作る事が可能になる。
・スペアコアは複数作れない。一度使用してから、一年後に再び召喚可能になる。
『…と、まあ万能すぎるので、早い段階で召喚したかったんだけど…うん、何とか召喚できました!』
改めて、その万能っぷりに歓喜するダン。そしてクギーもその性能に驚きを隠せない。
「ひよっとして…それってダミーコアの定説を覆す話じゃないですか⁉︎」
『ダミーコア?何それ?』
「冒険者がダンジョンに潜り、ダンジョンコアを破壊する時があるんですよ。数十年に一度ぐらいの割合ですが。その時、ダンジョンコアを破壊しても、ダンジョンが死なない時があるんです。で、更にダンジョンを調べてみると、他にもダンジョンコアがあって、それを破壊するとダンジョンが死滅。つまり、最初に破壊したコアは、ダミーコアだったってのが定説だったんですよ!」
『あーなるほど。つまり、それはダンジョンコアが破壊されて、スペアコアが代わりを務めたのに、ダミーコアの破壊だと勘違いしてたと?』
「そうです!ダミーでは無く、年齢を重ねたダンジョンは命を二つ持つと、新たなる発見なんですよ、これは!」
『命が二つか。確かにその使い道は魅力的だよね。でも、まだその使い道にはスペアコアは使わないよ』
「え?まさか出産で母性に目覚めて…新しいダンジョンを作ろうと言うんですか⁉︎」
『いや、無いよ!それは無い!今、ダンジョンを増やしたってメリットは無いでしょ?それにさ、スペアコアは複数作れないから、二つの命としてコアを所持してても、勿体ないじゃん?それよりも、出入り口を増やす方がいいし…いや、一番は分身を作る事だね!』
「分身…ですか?」
『うん!だってさ、オーク…いや、オークキングを召喚してさ、それにスペアコアを飲み込ませたら、僕ちんが女騎士を凌辱できるんだよ⁉︎これはもう、分身を作るしかないでしょうが!』
「あーはい、そうでしたね。御主人様はそういうアホでしたね」
『入り口を増やすのもいいけど、それは無理矢理作れるから、スペアコアを使わないのもありだし』
「え?入り口は無理矢理作れる物なんですか?」
『ダンジョンの構造について説明すると、拡張部分が地面から出れば、そこに穴は開くんだよね。でも、透明な膜が張られて、無機物は透過できるけど有機物は透過できない、不思議な壁として存在するんだよ』
この能力が、王宮から沢山の財宝を盗み出したカラクリである。
宝物庫の地下から拡張を始めて、宝物庫内にダンジョンを拡張。透明な膜を財宝は透過して、ダンジョン内に…そして、吸収。
『この拡張による盗みは凄い便利なんだけど、実は弱点があるの。それは、この透明な膜が普通のダンジョンの壁よりも、遥かに弱い事。魔力のある人の一撃で簡単に穴が空いて、そこに新しいダンジョンの出入り口ができちゃうんだよ』
「そうやって、力技で出入り口を増やせるって事ですね」
『確かに出入り口を増やせるけど…やっぱりデメリットもあるの。この強制的に出入り口を増やすのは、人間に例えるなら心臓に穴を開ける様なもの。DPも一度に数万削られ、下手したら即死する力技なんだよね』
「じゃあ、スペアコアで開ける方がいいじゃないですか!」
『うん。でも、オークキングでの凌辱の方を優先するから、最低でも一年後だね。新しい出入り口を作るのは!』
「…まあ、そうでしょうね」
『オークキングを召喚するには、まだレベルが低いから無理だけどね。でも、近い将来カスタムした最強のオークキングを召喚して、凌辱を繰り出す予定だから!クギーちゃんも楽しみにしといてね!』
「全力で拒否します。それより、先程魔石について説明したかったのですが…」
『全力での拒否ですか…残念ですね。じゃあ、魔石について、お願いします』
「魔石は万能ななアイテムです。そのスペアコアの様に。まず、薬草を煮詰めて、魔石に含まれる魔力を使い、ポーションが作れます」
『へえ?ポーションって薬草と魔石で、できてるんだ?』
「更に武器や防具に対する属性の付与なども、高純度な魔石を利用します。それとモンガラ教国が、秘匿としている製造方法で作られた魔導砲。その使用にも、エネルギーとして大量の魔石が使われます」
『凄いね。アイテムとの使用だけでも、それだけの用途があるんだ?』
「更に人体に使用する場合です。まずは魔力の覚醒。これに魔石を使います。魔力の無い人と魔力の有る人が魔石を掴みながら握手。その状態で魔力の有る人が魔石に含まれる魔力を循環。これを毎日繰り返すと、魔力の無い人が魔力の覚醒をします。才能によって必要となる魔石の量は様々ですが、ゴブリンがドロップするクズ魔石で、二百個は必要になりますね」
『なんか大変そうだね、その覚醒ってのは』
「エクレア王国はダンジョンが元々無かったし、モンスターや魔族も少ないから魔石は少ないんです。それでも港での交易が盛んな為、国外から魔石を輸入して、軍の兵士には最低限の魔力の修得を心掛けてます」
『あーだから、隠蔽魔法で隠された入り口も見つけられたのか…』
「で、覚醒した魔力を鍛えるにも、魔石が必要となります。モンスターを倒してゲットした魔石を、両手で握り締めて魔力を循環。それを繰り返すと自身の魔力が高まります」
『それで魔力が高まると、身体能力も向上するってことだね?』
「そうです。上位冒険者になるとモンスターを倒して魔石をゲットし、その魔石で己を磨くのが一般的です。だから上位冒険者は人間離れしているので…普通の常識は通じないと思って結構ですよ」
『その上位冒険者を苦も無く倒せるんだから、このダンジョンも大概だけどね』
苦笑いするダンなのであった。




