第73話 魔族転生
かつてエクレア王国では、隊長をダンジョンに落とし、そのままボイコットして奴隷落ちした兵士達がいた。
その後、奴隷落ちした兵士達はダンジョンへと送り込まれ…そして、帰ってくる事は無かった。
そんな奴隷落ちがダンジョンに無理矢理突入させられてから、およそ三週間の時が流れた。
『さあ、遂に!今日からあの、作戦を実行しようと思います!DPもある程度溜まった事だし!』
「いよいよね。ビコーが60DP、クギーが40DPと、二人で毎日100DPも稼げるのは大きいかったわね」
ダンとパイが、前から計画していた作戦を実行に移そうとしていた。
ちなみにビコーは仲間になるのを反対している為、未だに石化状態で牢獄に。
クギーも時間が欲しいと、石化されて牢獄に入ることを望んだので、二人共仲良く石化牢獄暮らしだ。
『そのビコーちゃんとクギーちゃんも、今回の作戦は見学させようと思ってるんだよね』
「見学させるメリットなんかあるの?目の前で魔族転生させるんでしょ?」
『うん。ビコーちゃんもクギーちゃんも魔族化する予定だし、今のうちに慣れといた方がいいかなって…』
「…まあ、本当に仲間にするなら、今のうちに同じ悪事に手を染めさせるのも、悪くは無いわね?」
『え〜?今回は悪事じゃないよ?』
「エクレア王国にとっては悪事だからね。まあ、私や国民にとっては善行だけど!」
そしてダンとパイは、遂に計画を実行するのであった。
◆
『さて、皆さん!長い間、石化の眠りについて貰ってましたが…遂に、計画を実行する時が来ました!』
かつてボイコットした奴隷落ち兵士122名の石化を解除し、コアルームにてダンが計画の説明を始める。
『えーまず、今日から数人づつ、皆さんには魔族転生を行います。魔族転生に対するエネルギーが溜まり次第、徐々に転生させます。今日、石化しない人はまた、明日から石化で待機となりますので、御了承を』
そう説明するダンであったが、奴隷落ち兵士達は別のところに集中している。
『それと…我々の仲間になってくれる予定の二人は今回、見学として参加します。あまりジロジロ見ないであげてね』
ビコーとクギー。二人は石化を解除され、見学者として連れて込まれた。
相変わらず亀の甲羅の様に縛られてるが、今は布でグルグル巻きにされており、顔だけを外に覗かせている。
『ビコーちゃんもクギーちゃんも、二人共魔族転生する予定です。あと、隣にいるパイちゃんも。さあ折角なので、ダンジョン民になる初の魔族転生を、一緒にご覧頂きましょう』
そして最初に魔族転生する男が立ち上がる。
『さて、ボイ君。覚悟はいいかね?』
かつてボイコットを扇動して奴隷落ちしたボイ。その後は他の兵士を説得して、全員を魔族化するようにした男だ。
今回の魔族転生に対しても、自身が一番にと、名乗り出たのだ。
「覚悟はできてます。いつでもお願いします」
ボイの身体は僅かに震えている。これから行われる魔族転生に対し、どれだけ覚悟を決めたところで、恐れを拭い切るのは難しいだろう。
だが、それは他の兵士も一緒だ。だからこそ、ボイは率先して魔族転生を受け入れた。
『ふむ。中々、関心だな!では、そんな勇気あるボイ君が転生する魔族が…こちらだ!』
そこで用意されていた、ダンによってカスタムされた…グロテスクキメラが現れた。
「な、何ですか!コレは⁉︎」
『これは複数のダンジョンモンスターを融合させたキメラ。どうだい?カッコイイだろう?』
確かに複数のモンスターが混じっているのがよく分かる。そしてこれが自身の転生する姿だと思えば、流石にボイでも抵抗を見せる。
「あ、あの…他の魔族では無理ですか?このグロテスクなのは流石に…」
『ああ、抵抗されるかもしれないから、一応保険として麻痺毒を打ち込んでおくね』
するとボイの後ろから双頭百足を召喚し、首筋を噛ませる。
「ぐはっ⁉︎」
『悪いね。君の意見は通らないのだよ。では…』
そう言ってダンは触手でボイを縛っていた縄を解き、服も脱がせる。
一矢纏わぬ姿となり、麻痺毒によって痙攣しているボイ。他の捕虜は、誰もが未来の自身の姿だと思い、顔を青くしている。
そんな連中をよそに、ダンは魔族転生を実行。
『では、これより!待ちに待った魔族転生を開始します!拍手を…して欲しいところですが、皆さんは動けないから無理ですね。パイちゃんだけでもよろしく』
静かなコアルームに、パイの拍手だけが響き渡る。
「ほら、拍手したわよ。前置きはいいから、早くしなさい」
『あ、はい。拍手、ありがとでした。では…行きます!』
そして遂に魔族転生が開始される。ボイを融合ルームへと入れると、グロテスクキメラも指示して融合ルームへ。
ボイとキメラ、二体の融合はすぐに完了。魔族転生は成功した。そして融合ルームから、融合した二体が姿を現した。
「ま、マジかよ⁉︎」
「はぁ⁉︎どういうことだ⁉︎」
「ええっ⁉︎何故…」
捕虜121名、全てが驚きを隠せない。それはそうであろう。ボイとキメラ、二体の融合によって…女エルフに姿を変えたのだから。
『はっはっはっ!どうだい、ボイ君!その身体は⁉︎素晴らしい肉体だろう!』
そこでダンは王宮から盗んであった鏡を差し出し、その姿を確認させる。
「あの…なんで女エルフに…?」
『融合ルーム内でも語ったが、男をダンジョン内に住まわせても、楽しくはないだろう?だから女エルフだ。それに、普通の女エルフではない。ほれ、これを見よ!』
そう言って、ダンが女エルフとなったボイのスカートをめくり上げると、そこには白いパンツが…そして、モッコリと膨らみを感じさせた。
『どうだ!ただの女エルフではないぞ!そう、ふたなりエルフだ!人間だった頃の顔立ちも残し、愚息をも残す!これぞ魔族転生の醍醐味!』
「……」
『更に、それだけでは無い!複数のモンスターを組み込んだのは、ステータスの値を増やす意味もあるが…それ以上に、スキルも増やす為だ!特にオークの持つ【凌辱】のスキルは最高だぞ!』
「あの…何の為にこんな魔族転生を…?」
『だから言ったでしょ?ダンジョン内にて生活する、ダンジョン民が欲しかったって。さあ、今回はあと三人!志願者はいるか⁉︎早い者勝ちだぞ!今回転生しないなら、再び石化して貰うからな!』
ダンはそう言いながら、女エルフと繋がっているキメラの部分を切り落とす。
魔族転生の凄さを間近で確認した、ビコーとクギーも思わず声を漏らす。
「嘘でしょ…」
「まさか…こんな事が出来るなんて…」
そしてパイも御満悦に声を漏らす。
「ふふっ!これで私の魔族化も現実味を帯びてきたわね!」
ダンの行った融合は、キメラの融合を利用した複合の融合である。
まず、キメラにエルフやオークなどの、複数のダンジョンモンスターを融合。それをボイと共に融合ルームへ。
ボイとキメラの一部を融合させたら、キメラの一部である女エルフとボイの肉体を交換。その時、顔は交換ではなく。女エルフの顔と混ぜて、元の顔の印象を残した女顔のエルフに。そして愚息はそのまま女エルフに付けておく。
女エルフの体ができたら、麻痺毒などの状態異常はキメラの方に。そしてステータスやスキルは女エルフの方に。
こうして、ふたなり女エルフとグロテスクキメラとの融合が完了した。
あとは接合部分を切り落とし、ふたなり女エルフの完成。誰もが息を飲む、素晴らしい出来栄えだ!
この素晴らしい魔族転生を見た捕虜達の中から、すぐに志願者は現れ、同じ様にふたなり女エルフに魔族転生を行った。
四人のふたなり女エルフ。それを見たダンは満足そうに頷く。
『うん、イイね!とても素敵だよ!ダンジョンモンスターの女エルフは美人だけど、全員同じ顔で個性がないからね。こうやって元の顔を混ぜて個性ある美女ができるのは素晴らしい!うん、最高だよ!』
満足するダンと、苦笑いはしながらも美女である、ふたなり女エルフになった事を喜ぶボイ達。
と、そこでダンが別の計画についても説明を始める。
『さて、魔族転生は無事に完了しましたが…今回、皆さんを石化解除したのには、別の計画への参加もあっての事です。それについて…説明します』
ダンが用意した計画は魔族転生だけではない。むしろ、こちらがメインの計画。
その計画を聞いた捕虜達は、こぞって歓喜の声を上げるのであった。




