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30cmマグナムの生涯!  作者: 猪子馬七
第4章 ロリメイとソウメイ
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第61話 死者蘇生



 聖百合(ヴァージン)騎士団、総勢500名の女騎士が乗船している軍船が、朝靄(あさもや)のかかる海上にて目標を確認。


「団長!目標の海賊島を確認しました!」


「魔導砲の準備も完了!いつでも発射可能です!」


 部下からの報告を受け、聖百合(ヴァージン)騎士団のカリスマ、ユリ修道騎士団長が指揮を取る。


「これより、悪名高い女海賊ルフェが一味の討伐を開始します。まずは敵船の破壊で敵の逃げ道を塞ぎ、その後は島に乗り込み、一網打尽にします。そこで注意をしなければならないのが、今回の作戦にて捕縛対象がいることです。対象者はジョンと名乗る男で、次期教皇のソウメイ様の武具を盗んだ極悪人になります。特徴は【マグナム】のみ。必ず生かして捕縛しなければなりませんので、男は全て捕縛するようお願いします」


 説明を終え、ユリは剣を天に仰いだ。そして開戦の合図を、剣が振り下ろされると同時に、船内全てに伝えるのであった。


「目標、海賊島!港に停泊してある海賊船の破壊に…魔導砲、全門発射ー!」


 魔石を利用して発射する魔導砲。その全てが閃光となり、海上を勢い良く(ほとばし)る。

 そして目標である海賊船。大型の本船と複数の小型の船が、魔導砲の閃光によって爆発を起こす。



 ちゅどーーーーーん!



 一瞬にして、全ての船が大破。朝靄のかかる海上にて 爆煙が海賊島の港を覆う。


「全ての敵船の大破を確認しました!」


「ならば、今すぐ乗り込むぞ!全速前進!」


 ユリ修道騎士団長の指示により、海賊島に突入。いつも、このパターンで敵を壊滅して来た。

 魔導砲にて敵の戦力を削り、あとは優秀な団員達が敵兵を刈り取る。それもカリスマであるユリが先頭に立ち、敵陣に突撃をかけるのだ。負けることなど誰が想像できるだろうか?


 しかし、その日は違った。島に乗り込んだ団員達が、その異常さに気がつく。


「だ、団長!おかしいです!海賊達が…既に倒されてます!」


 討伐対象である女海賊達が、何故か島のあちこちに倒れている。それも体液塗れになりながら…。


 独特の異臭を放つ島の異様な空気。団長のユリと、副団長のヤンが交互に目を合わせる。


「…ヤンさん。どうやら、我々が駆けつける前に、海賊を討伐した者がいる様ですね」


「だが、見ろ…この体液。生臭さからいって、まだ新しいぞ」


「悪名高い海賊団を討伐した…海賊以上の存在が、まだこの島に残っている可能性がありますね」


 ユリの言葉に全員が息を飲む。この惨劇を引き起こした者が、まだ近くにいるのならば、警戒を怠るわけには行かない。


 その時、遠くで何かが激しくぶつかり合う音が聞こえる。島の中心部だ。


「やはり、まだ近くにいるようです。皆さん、行きますよ!」


 ユリは団員と共に、音のする島の中心部へ。そして目にしたものは…。


「ま、マグナム…?」


 体液塗れの女海賊が、いたるところに倒れている。右も、左も、あらゆるところが女海賊で埋め尽くされている。

 そしてその中心地にて、頭領である女海賊ルフェが勢い良く体液を吹き出しながら、倒れ込む。

 どれだけの時間、体液を放出し続けたのだろうか?ビクンビクンと、いつまでも下半身が痙攣している。


「き、貴様は何者だ⁉︎名を名乗れ!」


 青ざめるユリが問いかける。これ程の惨状をたった一人で行ったのは、火を見るより明らかだ。

 朝日が上り、シルエットが映し出す見事なまでのマグナム。まるで神話の一部分でも切り取ったのかと思われる、その姿は何とも神々しい。

 そそり勃つマグナム。それは捕縛対象とされた極悪人のジョンであろう。


 だが、ジョンは名乗らない。それどころか、苦しそうにユリに向かって話しかける。


「に、逃げて…もう…抑えられない…」


 必死に逃走を促すジョン。だが、ユリ達は誉高き聖百合(ヴァージン)騎士団。たった一人の敵に恐れをなして逃げるわけには行かない。


「この男が間違いなく、捕縛対象のジョンだ!取り囲んで捕縛せよ!」


 ジョンの声などには一切耳を貸さないユリが、全軍に号令を出した。団長の指示には絶対服従の団員達が、一矢乱れぬ動きでジョンを取り囲む。


「だ、ダメだよ…もう…もう…ああああっ!」


 男を知らない500名の女騎士に取り囲まれると、ジョンの意思などお構いなしにカッチカチに硬化し、その存在感をあらわにする。


 まさにマグナム!


「くっ…抵抗するようですね!仕方ありません。我ら聖百合(ヴァージン)騎士団の力、見せつけてあげなさい!」


 ユリを筆頭に、全員でジョン襲いかかる。だが、相手はマグナム。男を知らない女に負けるほど、ヤワではない。


 女海賊300名を相手に無双したマグナム。続いては、500名からなる女騎士団を相手に無双するのであった!







『…まさかのお兄ちゃん救出宣言』


 ダンジョンの入り口にロリがやってきて、何をするのかと思えば兄の救出を宣言。ダンもパイもポカーンと成り行きを見守る。


 踵を返して引き返すロリメイの後ろ姿を見て、パイが何かを思い出す。


「そう言えば…教皇の孫の名前がソウメイとロリメイ。あなたと一緒に新人冒険者だったのもソウメイでしょ⁉︎まさか…次期教皇が新人冒険者の中に紛れてたの⁉︎」


『ごめん、パイちゃん。意味が分からないよ?何で教皇の孫が新人冒険者に?』


 そこでパイはダンに簡単に説明。モンガラ教国の教皇について。それと孫について。


「…と、まあそんなところよ。多分、ソウメイは民衆の暮らしを直に知りたくて、新人冒険者になりすましてた。そこでエクレア王国の王族問題に巻き込まれ…あんたに捕食された」


『いや、なんかその言い方だと僕ちんが悪いみたいじゃん?ソウメイを殺したのは、ババロア王国だよ!僕ちんはソウメイの敵討ちのために遺体をDPの肥やしにしたんだから、逆に感謝されるべきだよ!』


「あの子にそうやって事情を説明して、納得すると思う?」


『うーん…。多分、めっちゃ怒るんじゃないかな?そして大泣きして、こっちに八つ当たりとかしてきそう。さて、どうしましょ?』


「どうもしないでしょ?とっとと殺せばいいじゃない。泣かれたら、うるさいだけよ?」


『いやいやいや!ちょっと、何を言ってるの、この人は⁉︎あんなにお兄ちゃん想いの妹を見て、殺せばいいって…酷くない⁉︎』


「なら、どうするのよ?あんたに何ができるのよ?」


『そりゃ、死んだソウメイの代わりに、僕ちんがお兄ちゃんになってあげることじゃないかな?あんなにお兄ちゃん愛に満ち溢れてるんだから、この触手で受け止めてあげるのが一番かと…』


「私には腹違いの妹がいて、はっきり言って殺したいほど憎んでるの。だからね、あんたみたいに赤の他人が『お兄ちゃんになってあげる』とか、意味が分からないの。それも触手で受け止めるとか…」


『でも、他に手もないし…せめてソウメイを生き返らせてあげたら…ん?できるかな?』


「は?それは無理よ!死者蘇生は上位の魔導師ですら不可能なんだから!何であんたが…」


『取り敢えず、試してみる。無理ならまあ、諦めるけどね』


 そう言ってダンが召喚したのは、二匹のダンジョンモンスター。一匹は新人冒険者の遺体を利用して召喚したスケルトン。もう一匹は…白い肉の塊である、複数の魔族を取り込むモンスター、キメラ。


『このキメラは融合族って魔族でね。自分の固有スキルと同じ融合を使えるから、かなり相性は良いと思うのよん』


「…まさか、その二匹を融合するの?」


『そのまさか。キメラの持つスキル【融合】でスケルトンを取り込み、魔族としてなら生き返らせることが出来るかも。では…キメラ、スケルトンを取り込んで融合せよ!』


 するとキメラはスケルトンを取り込む。完全に体内に吸収すると、キメラの肉が人型となり、人間の姿を形どる。


『これは…一応、成功なのかな?』


 見た目は人だが、魂のこもってない人形のように虚な目。これを成功と言うのは、流石に無理がある。


「肉だけ再生って形ね。人型になれば、会話はできるようになるのかしら?」


 パイの質問に、ダンも試してみる。


『おい、発音はできるか?』


『……』


「無理そうね。肉体が復活したなら記憶が蘇って、死者と会話できるかもって考えたけど、死体から情報を聞き出すとかは無理そうね」


『こっちの指示は理解してるから、言葉は分かってそうなんだけどね…』


「言葉を理解してるって言うより、あなたの気持ちを読みとってるんじゃない?あなたの身体の一部でもあるんだから?」


『あ、そうか。そう言えば念じても動いてくれるし、結局ダンジョンマスターの操り人形でしか無いのか…』


「ひょっとして、死者蘇生ってこれのこと?」


『あ、もう一つ試してみる。同じ様にスケルトンとキメラを召喚して…今度は僕ちんの固有スキルの方で融合してみる』


 召喚された二匹のダンジョンモンスターを融合ルームへ。そして同じ様に生きる屍。


 その後も、色々と融合したモンスターに実験を試みるが、結果は全てダメ。死者蘇生は完全に無理だという結果のみを得られた。


『うーん。ダメなことが分かった。それだけが収穫だね』


「さっきも言ったけど、死者蘇生は多くの学者や魔導師が研究し尽くして、それでもダメだと結論付けたんだからね。まあ、魔族のあなたならって少しは期待したけど…無理なものは無理。諦めなさい」


『もし、ソウメイを生き返らせてあげたら、ロリメイちゃんがお礼に気持ちいいこと、してくれるかもって考えてたのにね…。そんで、そのままハーレム第一号として…』


「残念ね、思い通りに行かなくて。じゃあ、私はそろそろ寝るわね」


『うん、おやすみー』


 パイが寝息を立てるとダンは一人、物思いにふける。


 あれだけお兄ちゃん想いの妹だ。ソウメイの代わりに自分がお兄ちゃんになれたら、どれだけ幸せだろうか?毎日、一緒にお風呂に入って、キャッキャウフフな事を…。


 そんな事を考えている深夜。外の動きに変化があった。


『ん?地面が動いてないか、アレは?』


 パイを起こすほどの事ではないと判断したダンは、一人で外の様子を観察。すると人影が匍匐(ほふく)前進をしているのが分かる。

 兵士にしては体が小さい。しかし、近付いてきて、そこでようやく何者か気がついた。


「まっててね、お兄ちゃん!今助けに行くよ!」


 まさかの、ロリメイ。しかも一人で救出に向かうみたいだ。勿論、そんな事は周りの連中が許さないだろう。だからこそ、一人で深夜に隠れながら突入を試みる。


 お兄ちゃん愛に満ち溢れているロリメイの無鉄砲さが、ソウメイを捕食したダンの元へと向かわせる!



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