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30cmマグナムの生涯!  作者: 猪子馬七
第4章 ロリメイとソウメイ
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第55話 王都襲撃



 深夜の襲撃に備えて、パイは早目に就寝。静かになるコアルームにて、ダンが動き出す。


『…静かに。そのままコッチに来なさい』


 ダンの指示によって動き出したのは、簡易風呂でいつも体育座りをしているダンジョンモンスターの裸のエルフ。パイに服を貸しているエルフだ。

 ダンの指示により、他の部屋へと移動させられる。


『さてさて、エルフちゃん。ちょっといいかしらん?』


「……」


『まあ、会話は成立しないから、一方的に話させてもらうよ?』


「……」


『実はね、この後さ、王都を襲撃する事になってるんよ。んで、襲撃が成功したら、パイちゃんとまあ、キャッキャウフフな展開が待っている訳ですよ。うん、楽しみだよね』


「……」


『あの素晴らしい…初夜の続きがね、ええ、もう、待ち構えている訳ですよ、はい、楽しみです!』


「……」


『…ただ、あの初夜の時にね、僕ちんたらまあ、緊張しちゃって、上手く触手を扱えなかったんよ。うん、とても残念』


「……」


『そこで!もう、時間は無いけど…今のうちに予習といたしまして、ええ、もう、エルフちゃんと一緒にね、パイちゃんを気持ち良くする為のね、予習をですね、はい、楽しくて気持ちの良い事を、しようと思うのです!』


「……」


『え?エルフちゃんも楽しみ?そうかそうか、それはとても嬉しいね!さて、パイちゃんが起きる前に早速…』


 そう言ってニュルリと触手をエルフへと纏わり付かせる。が、そこで問題が発生。

 触手がエルフの大事な部分に到達すると…それがダメージとしてエルフのHPを減らす事に。



 このエルフは、パイに服を貸す為にカスタムされたエルフ。つまり、召喚費用となるDPを最少にする為に、最弱の設定となっているのだ。

 体力を表すHPが最少の1。そこでダメージを受ければ…それはエルフの消滅を意味する。


『し、しまった!エルフちゃんが消えちゃった!』


 エルフが消滅。だが、それだけでは無い。エルフが消滅すると言う事は、その装備品も消えることになるのだ。

 そして今、エルフの服を借りているのはパイ。就寝中に突然、服が消滅して全裸になったパイが、慌てて飛び起きる。


「なに⁉︎一体、何が起きたのよ!まさか…敵襲⁉︎」


 何故か、寝ていたら服が消滅して全裸に。敵が簡易風呂にいるエルフを攻撃したのか?そう判断したパイが風呂を調べるが、いつも体育座りをしているエルフがいなくなっている。

 まさか、姿を隠せる侵入者がエルフを攻撃したのか?

 裸のまま、辺りを警戒するパイ。と、そこに触手がニュルリと現れたので、警戒を伝える。


「ダン!見えない敵が侵入して来たみたいよ!気を付けて!」


 そんなパイに対して、ダンは申し訳なさそうに、事情を説明する。


『えーとですね、つまりですね、かくかくしかじかでしてね…』


 事情を聞き、警戒を解いたパイが一言…。


「…あんたさ、本当にさ、馬鹿なの⁉︎」


『はい、ごもっともであります!申し訳ありませんでした!』


 謝罪するダンと呆れるパイ。ガミガミと説教をするが、他にやるべきことがあるのだ。パイは説教を切り上げ、ベッドに戻りモニターを確認。


 襲撃予定まであと、一時間。裸のまま飛び起きたパイであったが、服を着ることはなかった。

 そう、襲撃が成功すれば、服は幾らでも手に入るのだから。成功を信じ、裸のまま襲撃に備えることにしたパイ。

 それがダンの集中力を削いではいるのだが、気にはしない。この襲撃は間違いなく成功すると、予感していたからだ。







 かつてダンが地下水を汲み上げるために、ダンジョンを拡張した事がある。地下に向けて一直線。そして水脈に到達したら、そこから水を採取するのだ。

 更に石炭をゲットする為に、ダンジョンの拡張を利用して、地中に埋まっている石炭をゲット。


 それを聞いた時、パイはダンジョンの拡張について、詳しくダンから説明を受けた。ひょっとしたら、これは凄い能力なのではないのかと?

 そして、その予感は的中。王都襲撃を行えると判断し、時間をかけて王都への道を切り拓いたのだ。



 そこでパイが気になった、ダンジョンの拡張について。


 もし、拡張している穴が地面から出たらどうなるのか?そこに新しい入り口ができるのか?

 答えはNO。ダンジョンの入り口を作るには、あるアイテムが必要となる。それをレベルの低いダンには、まだ取得出来ないのだ。

 つまり、ダンジョンを地上に伸ばしても入り口は出来ない。だが一つ問題がある。何故、地下水脈までダンジョンを伸ばすと、その水脈から水を採取できるのか?

 そう、そこにダンジョンの拡張の秘密があるのだ。


 ダンジョンがDPを使って拡張する。そこで土を削る。更にDPを使って縮小すると、削った土が元に戻る。

 さて、この拡張の時に削った土は、どこに存在したのか?何故、縮小した時に、元に戻るのか?


 分かりやすく説明するならば、削った時の土は別次元に移動。そして縮小したら、別次元にある土が元の場所に戻る。この様なシステムだ。

 拡張した時に、その別次元に移動した土の中に砂金や石炭などがあれば、それはアイテムボックスへと収納できる。削った土も欲しければアイテムボックスに収納は可能。

 そんな感じで拡張した時に、別次元に送った物を得ることが可能。それが水脈に到達した時に水の採取を可能としているカラクリなのだ。


 だが、この拡張によるアイテムの収拾には、制約がある。まず、基本は無機物のみが収拾可能。生物などの有機物は収拾不可。だが、死体や小麦粉などの加工がされて死滅している物は収拾可能。

 その制約さえ気にしなければ、この拡張という能力は凄い能力なのではないだろうか?


 例えばある建物を、地面の中として捉えれば…その中にある無機物は、拡張によって収拾が可能になる。

 つまり、宝物庫がある王宮を地面の中として見たてれば、宝物庫の中にある金銀財宝を、拡張で奪えることに!


 そこでパイは王都襲撃の計画を企てる。王都にある財産を、奪う為に。


 かなりのDPを必要とする為に、時間はかかった。それでもSランク冒険者を撃破し、必要となるDPも貯めることに成功。


 そして遂に…王宮の真下から、宝物庫を襲撃する時が来た!







 草木も眠る丑三つ時。王都の中心部にあるエクレア王国が王宮。

 その日は豪雨によって、草木は眠るどころか、徹夜を余儀なくされていた。そして草木ではないが、眠ることなく暗躍する者がいる。


 宝物庫の床の石畳。そこがボコリと音を立てて穴が空く。ダンジョンだ。普通ならあり得ないのだが、そのあり得ない行動を取る者達が、モニター越しに観察している。


『ほう。ここが宝物庫か。ん?何やら焦げた跡が…』


「ああ、私が王宮から逃げ出す時に、火を放ったからね。絵画とか、燃えやすいものは全滅したかも」


『じゃあ、焼け残った金銀財宝も奪っちゃえば、かなりの損害になりそうだね』


「ふふ…まあね。朝になって気がついた時、どんな顔をするか楽しみだわ♪まあ、その時には私達はもう、ここにはいないから、歪む顔を確認はできないけどね」


『さて、それでは始めますか。これが失敗したら洒落にならないけど…いざ!拡張!』


 ダンは宝物庫の下から、宝物庫全体へと拡張。そしてすぐに縮小。残ったのは…何も無い、宝物庫。作戦は成功だ!


『いやった〜い!大成功!アイテムボックスの金銀財宝、早速取り出すね!』


 そう言って、さっきまでここから歩いて半日かかる距離にあった宝物庫の財宝を、コアルームで取り出した。


「ははは…いや、これは凄いわね!あなたの能力、最高よ!」


『それを見い出した、パイちゃんの頭脳もね!』


 コアルームにて大はしゃぎのダンとパイ。だが、目的はこれだけではない。


『さてさて、敵に見つかる前に奪える物は根こそぎ奪わないとね!』


 そう言うと今度は王宮内にある書庫へと拡張を始める。


「王宮の書庫には貴重な資料や書物があるからね。特に私が愛読した魔族関連の本や、拷問の指南書。それと異世界召喚に関する書物は絶対に手に入れないとね!」


 パイが興奮気味に語るが、ダンは書物にあまり興味を示さない。


『パイちゃんが言うから奪うけど、そんなに優先するほどの物なのかな?』


「当たり前でしょ?財産を私達に奪われたら、真っ先に金になりそうな本は売りに出すでしょうからね!それに反乱が起きて王宮が火の海になったら、書物なんか真っ先に焼失するわよ!王宮に火を放った私が言うのも、どうかとは思うけど!」


 そうこうしている内に、書庫の書物も回収。その後は武器庫だ。


「ダンジョンに攻め込む兵士の武器が疎かになれば、倒すのも楽になるからね」


 そうパイに言われて回収。そして次に目指すのがパイの寝室。だが、扉の前にはkeep outのテープが貼られている。


「現場検証の為に、立ち入り禁止にでもしてるのかしら?むしろ都合が良いわね」


 そしてパイの寝室も拡張によって取り込む。ベッドやパイの私物もゲット。


「次は食料ね。これでウサギ肉のみの食生活から解放されるわ」


『ウサギ肉のドロップにもDPを消費してたから、これで少しはDP節約にも繋がるよね』


 パイとダンが次に目指したのは食料の備蓄庫。生鮮野菜などは回収出来ないが、小麦粉やチーズなどの加工品は回収が可能。


 そして最後に目指したのが、衣装部屋。洋服から小物まであらゆる物が立ち並ぶ。


「本当は私の服だけでもいいんだけどね。売ってお金に替えようとかされたらシャクだし、全部奪いましょう」


『おお…パイちゃん…ここには…メイド服があるよ!漢の浪漫の!』


「どうでもいいわよ、そんなの。それより、これでラストだから早くしなさい」


 パイに言われるがままに衣装部屋も回収。これで王宮での強奪は完了した。


「さて、最後に…あの紙を残せるかの確認ね」


『うん。やってみる。奪うのが可能なら…その逆の置き土産も可能だろうからね!』


 そう言ってダンは用意しておいた紙切れを、宝物庫へと残して来た。


『うん、万事オッケー!作戦は大成功であります!』


「さあ、あとは…ギルドへのお礼参りと、何の罪もない、銀行への襲撃ね!」


 深夜の王都。豪雨の音に紛れながら、ダンとパイは静かに、そして確実に、任務を遂行するのであった!



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