第20話 ダンジョン攻防戦1
『ダンジョンは眠らないからね。二ヶ月以上もの間、寝ずに敵を迎え撃つシミュレーションはして来たつもりだよ。あと触手を使いこなすシミュレーションもね!』
「そんな事はどうでもいいのよ。それより、どうやって敵兵と戦うのよ?」
触手をウネウネとさせるダンに苛立ちを覚えるパイア王女だったが、ダンは余裕の表情を崩さない。
『こちらに三人の兵が向かってくる。恐らく、隠蔽魔法で隠してる岩壁から漏れてる魔力に勘付いたんでしょ。だったら出来る限り敵を引きつけて…』
そう言うとダンは、六体のダンジョンモンスターを召喚。カスタムして強化を施されたアーチャーモンキー、その六体が三人の兵を目掛けて一斉射撃。
『少数ならこのアーチャーモンキーだけで迎え撃てるんよね。たとえダンジョンから漏れ出る魔力を感じ取れたところで、隠蔽魔法で隠されてるダンジョンの中を確認できるわけではないから。つまり、ダンジョンの中から六体の猿に狙われてても、そのまま無防備にダンジョンの前までやってきて…はい、矢の餌食に〜』
六体のアーチャーモンキーによる一斉射撃。それは的確に敵兵の喉に突き刺さり、一人に二本の矢が喉を突き破る。
「ぐはっ⁉︎」
「ごほっ⁉︎」
「げはっ⁉︎」
敵兵三人がその場に崩れ落ちる。喉を潰されることによって、小さな呻き声を上げるだけにとどまり、他の兵士を呼ぶことすらままならない。
更に矢は頸椎をも破壊し、首から下の神経をも遮断。即死を防ぎ、尚且つ敵の自由を完全に奪うのであった。
『うむ。中々上手く行ったね!じゃあ、あいつらが死ぬ前に…ほい、この縄をあいつらの首にかけてきて』
そう言ってダンがパイア王女に縄を渡す。
「は?何で私が⁉︎」
『いや、俺はダンジョンだから、外には出れないんですよ。触手も外に出るとダメージ受けてDPが削がれるから、王女様にやってもらわないと…ほら、あいつらが死ぬ前に、早く!』
渋々、縄を渡されたパイア王女がダンジョンの外に出て呻き声を上げる三人の兵士の首に縄を引っ掛ける。
それを確認したダンが、触手を使って縄を掴むとダンジョンへと引きずり込む。
『…本当は女の子を喜ばせる為に使う筈の触手だけど、仕方がない…これも王女様の為!そいや〜』
ダンが触手で一気に縄を引き、三人の兵士をダンジョンへと引き摺り込んだ。そしてナイフを掴んだ触手が三人の兵士の頸動脈を速やかに掻っ切り、絶命させる。
『おっ!久々にレベルアップだ!レベル2から3になったぞ!では捕食も…』
殺された三人の兵士がズブズブと音を立ててダンジョンに飲み込まれていく。
『ふう…御馳走様!合計375DPも増えた!ん?どうしたの、王女様?』
「いや、ダンジョンが人を捕食するところって初めて見たから…」
『ふっふっふっ!驚いたかい?なんだかんだ言っても魔族だからね。王女様には刺激が強過ぎたかも知れないけど…』
「ううん。逆よ。羨ましいなぁって思ったの」
『へ?羨ましい?捕食が?』
「私はね…実は人間嫌いなの。それも極度のね。だからいつか…人間を辞めて魔族になるのが夢なのよ!」
『へ…へ〜…変わった王女様だことで…』
「ジョンがダンと入れ替わって人間になったって聞いたから、私も魔族になる為の手段の一つとして興味があったのよ、あなたの事を」
『おほっ⁉︎王女様に興味を持たれるとは!流石は触手!王女様もメロメロよ!』
「私の話、ちゃんと聞いてる?何で触手が出てくるのよ!」
『え?だって触手が欲しくて魔族に憧れてるんでしょ?』
「違うわよ!人間嫌いだから人間を辞めて、魔族になりたいって言ってるのよ!」
『はっはっはっ!まあ、そう言うことにしておこう!それよりもジョンはどうしたの?あの野郎、二ヶ月以上も音沙汰ないから、てっきり死んだと思ってたけど…まさか王女様を紹介するとはねぇ。流石は我が心の友!あいつの為に、ポーションを百個ぐらい用意しておいてやろう!』
「ジョンについては落ち着いたら話すわ。それより、まだ敵兵は私を捜索してるわよ。ほら、また森の方で人の気配が…」
『お?また餌が来たようだね。また少数なら同じ手で倒せるけど、数が多かったり散らばってやってくると、一度に倒せないからなぁ…取り敢えず、少しダンジョンを拡張して別の手も考えよう』
そう言ってパイア王女に少しダンジョンから出てもらい、久々のダンジョン拡張を行うのであった。




