第16話 伏魔殿
今回は短め
(´・ω・`)
餓狼の牙からの報告を受けたギルドマスターのルドーは、頭を悩ませていた。
「まさか…魔族が関与しているのか?それも複数?」
報告書に書かれている事が事実なら、複数の魔族が関与している可能性は十二分にあり得る。
そしてもし、複数の魔族が関与しているのであれば、これはギルドだけの問題では無い。国が、世界が動く程の重大案件だ。
実際には迷宮族にマスターチェンジした人間のダンが、冒険者を追い払っただけなのだが…。
「まさか、魔族が関与している話になるとは、思いもしませんでしたよ…」
巨乳眼鏡の副ギルドマスター、クギーも大きく溜息を漏らす。そんなクギーにルドーが質問する。
「かつて神童と呼ばれたクギーに聞くが…森が生い茂り、煙が立ち込めて視界が最悪の中、数十メートル離れた動く的を射ることが可能か?」
「私が五人いて、その五人全員が足に命中させるのは流石に至難ですよ。それも二射なんて。まあ、今の私だと弓を持つのすら、困難ですが…」
かつて神童と呼ばれたクギーは弓の名手だった。だが、成長するにつれて胸がどんどん大きくなり、弓を持つことが困難に…。
弓を捨て魔法を学び、若くして副ギルドマスターにはなったが「弓の名手」と「巨乳眼鏡」はクギーの二つ名として今も語り継がれている。本人は嫌がっているのだが…。
「てっきり王族の継承問題が関係してると思ったが…いや、それも関係してるのか?」
ルドーが思考を張り巡らすが、一向に考えが纏まらない。そしてそれは、王国の軍部にも言えることであった…。
◆
「はあ?死体が無くなって魔族が関与してる⁉︎何じゃそりゃ⁉︎」
新人冒険者34名を引き連れて、ババロア王国の兵士に虐殺させた小隊長のヒズ。その報告を受けて首を傾げる。
ヒズは新人冒険者虐殺を企てた首謀者から、直々に命令されたことを遂行した。ババロア王国と共謀して、新人冒険者を皆殺しにする計画に、昇進を餌に加担していたのだ。
だが、死体が無くなったり魔族が関与しているなどと、そんな話は聞いていない。
新人冒険者を全員殺して、あとは野晒しの予定だったはず。
…そうなると、ババロア王国が何らかの裏切り行為に走ったか?それともギルドが嘘の報告をして撹乱を用いているのか?
頭の悪いヒズでは、どれだけ考えても答えは見つからない。ならばするべき事は一つ。首謀者である…女王に対して、報告するまでのこと。
欲望渦巻く伏魔殿。それはどの王国にも言えること。このエクレア王国もまた、例外では無い。跡目争いに多数の血が流れるのは、必至である。
ナーム女王がパイア王女を亡き者とする為ならば、たとえどれだけの血が流れようとも、心を痛めるものは伏魔殿には存在しないのだから…。




