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 最近のわたしは少し変わったように思う。

 毎日忙しいけれど、充実した毎日を送っている。疲れた顔を見せると理玖さんが心配するので睡眠は十分にとることにしている。そのせいか前よりも身体が軽い気がする。

 自分に自信が持てるようになった。わたしなんかっていつも思っていた昔のわたしは本当に馬鹿だったと思う。あの頃のわたしにもきっと出来ることは沢山あったのに、逃げることばかり考えていた。

 祖父江伯爵のことも逃げずに立ち向かえばよかったのだ。はっきり、きっぱり断るべきだった。


「カーサ、今度祖父江伯爵に出会うことがあったら、きちんと話すわ。きっとわたしの態度にも問題があったんだと思うの」


 カーサに宣言すると、微妙な顔になった。


「他の方にはいいと思いますが、祖父江伯爵はやめておいた方がいいでしょう」


「そうかしら。いつまでも望みがあると思わせるのは良くないでしょ? 彼にとっても人妻との噂はいいものではないと思うし…」


 カーサは賛成してくれると思っていたので、段々と声が小さくなる。わたしはカーサのおかげで色々と出来るようになっているけど、まだまだだってことを知っている。結婚してもう三ヶ月になるのに、夜会には数回しか出ていない。それは理玖さんが忙しいからだと聞いている。でも一番の理由は祖父江伯爵が出席するだろうと思われる夜会を避けているからではないかと思う。同じ伯爵家同士と言うこともあって、どうしても誘われる夜会は重なっている。

 わたしは理玖さんがそうしてくれていることにすぐに気付いたけど、祖父江伯爵と会いたくなかったので何も言えなかった。でもそれではいつまでたっても解決しない。今後もも避け続けるのはあの噂を肯定しているように思われるかもしれない。


「奥様の考えていることはわかります。ですがもう少しお待ちください。旦那様はただ避けているわけではありません。考えがあってそうしているのです」


 理玖さんに考えがあると言われて、使用人の中に祖父江伯爵と通じている人がいるのではないかと疑っていたことを思い出した。結果としてはそんな人物はいないとされた。わたしとカーサで調べあげたのだから間違いないと思う。それとなく罠を張ったけど全く反応がなかった時はホッとした。いつも一緒にいる人の中に裏切り者がいなくて喜んでいたけど、理玖さんはまだ疑っているのだろうか。


「理玖さんはわたしのことを心配しているのでしょう? とても有難いけれどこうやって隠れているのは、本当にわたしのためになっているのかしら。隠れているのは楽だし、嫌な思いもしない。でも…かえって祖父江伯爵が怖くなっていくの。彼のことばかり意識しているようで嫌なの」


 そう祖父江伯爵のことばかり考えている今の状況は決していいものではない。わたしは伯爵のことは考えたくないのだ。できれば忘れてしまいたいとさえ思っている。


「はぁ。仕方ありませんね。祖父江伯爵が参加している夜会にも出席するように私からも言いましょう。でも私が言っても聞いてくれるとは限りませんからね」


「ありがとう、カーサ」


「まだ決まったわけではありませんよ」


 カーサはそう言うけど、理玖さんはカーサの意見を聞いてくれるだろう。それだけ彼女のことを信頼している。わたしもいつかは守られるだけでなく、一緒に人生を歩む人として信頼されたい。

 数日後、理玖さんは苦々しい表情で豪徳寺侯爵家の夜会にも出席すると言った。カーサに説得されて、厳選した夜会だ。わたしはあまり知らなかったけど、カーサが言うには豪徳寺侯爵は理玖さんの親友らしい。理玖さんの親友なのに紹介されていないことが気になったけど、夜会に出席するのだから紹介してくれるだろう。どんな人なのか今から楽しみだ。



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