第二話『向上心』
昇級戦は一年に一回、夏に行われるトーナメント方式のイベントで、個人戦とタッグ戦の二種類がある。
このイベントは生徒強制参加ではなく自由に参加できるようで、自分がこのクラスにいるのはおかしいと考える、自分の実力に自信のある生徒やもう少し詳しく勉強したい、一つ上のクラスの勉強を学びたいという向上心のある生徒が毎年多く参加しているらしい。
中には駄目もとで参加する生徒や、なんとなくで参加する生徒も少ないがいるというのは悠莉がこの昇級戦について色々調べたりしてるなかで知ったことらしい。
「別に上を目指す気なんてないけど……」
星凪学園に俺が入った理由は悠莉がこの学園に入るからというのと、自分もこの学園に入れるレベルに達していたからだった。
小さい学園でなおかつ、入るためのレベルが普通なところから低いところはそれなりにある。
だけど悠莉は大きい学園で、入るためのレベルが高いこの学園を最初から希望していて、なんとか入ろうと勉強を頑張ったり、魔法を使う際には体力の消費もそれなりにあるため体を鍛えたりと、とても頑張っていた。
その頑張る姿を見て、なにか手伝えることはないかと思い行動し始めたのが初めだった。
手伝うために俺自身も自主的に勉強をしたり、アドバイスのために体を鍛える運動を調べて、それが本当に効果のあるものなのかを知るために実践してみたりした。
悠莉は努力の結果この学園になんとか入れるレベルに達して、俺も気付いたら同じくらいのレベルにまでなっていた。
要するに俺の目的は既に達成されたので、入学した後の今はいつか来る戦いの時のために最低限の知識を学んで、魔法を使うための体力をつけておけばいいやという向上心のない状態で学園生活を送っている。
向上心なんてないから、この昇級戦というのもそんなに興味はない。
「やっぱりそうだよねー……宏ならそう言うと思ってた」
悠莉はそう言った後に手を合わせ「ごちそうさまでした」と言った。
いつの間にか悠莉はご飯を食べ終わっていた。
「それにしても……俺に上を目指す気があるかを聞いて、この昇級戦っていうのを俺に教えたってことは、悠莉は上を目指す気があって、この昇級戦に参加したいと思ったってことなんだな?」
急いでご飯を食べ終わらせて、俺は悠莉にそう聞いた。
中学からの仲とはいえ、ほとんど一緒に行動をしていた悠莉なら俺がどう答えるかは分かっていただろうし、実際、俺が目指す気がないと答えると思っていたようだし。
「うん……正直言うと」
「そうか」
「私がこの学園に入りたかった理由ってすごい単純で、知識や実力、それと経験を積みたかったからなんだよね」
「そう思った理由って……」
「うん。いつ戦いがあってもいいようにって思って……」
いつか来る戦い。
それは二つの派閥。北の大陸と南の大陸との争いのことを言っていて、意識の差というか向上心の差というのは置いておいて。
この学園で生活する際の目標は同じだということを、俺はここで初めて知るのだった。