第一話『昼休み』
「……というのが、今の魔法を使うのが当たり前な時代の始まりだと言われている出来事だ」
……授業というのはとても退屈だ。
似たようなことしかどの学校も教えないから。
そんなことを思いながらも、真面目に俺は黒板に書かれていることをノートにしっかりとメモする。
が、なにかしらのアクションをおこしていても頭に浮かぶのは退屈だ、というワードだけだ。
「それじゃあ、次は今の地球が二つの派閥に分かれるきっかけとなった百五十年前の出来事について……と、言いたいがそろそろ時間か」
歴史の先生はそう言うとポケットから電子端末と呼ばれる手くらいのサイズの道具を取り出し、それを弄り始める。
ピローン、という音が教室中から鳴り響く。
どうやら先生はなにかをクラスメイト全員に送ったようだ。
まあ、授業に関係するものを送ってきたのだろうけれど。
「話そうとした出来事について簡単に纏めた資料を全員に送った。時間があるときにでも読んでみてくれ」
そう言い終わると同時にチャイムが鳴り、授業が終わった。
今のが四時限目だったので、一時間の昼休みが始まる。
長く休憩できるうえにこの後は二時限しか授業がないので、昼休みはこの学園で俺が楽しみにしていることの一つだ。
「宏ー!ご飯一緒に食べよー!」
「ん、そうだな」
俺をお昼に誘うのはこの学園内で唯一の親友の江上悠莉だ。
悠莉とは中学からの同級生で、その時から仲良くしてくれている女子だ。
俺はなにがきっかけでかは思い出せないが、自分に対して心から接しているか接していないかがなんとなく分かる。
悠莉は俺に対して心から接してくれている側の人間だ。それゆえに俺自身も彼女にそれなりの信頼を寄せている。
とは言っても、俺はそのあたりは気にせず普通に他の生徒と接しているので、分かったりしたところで特に意味なんてものはないのだが。
いつもお昼を食べる場所は決まって中庭の五つあるうちの中央のベンチだ。
風がとても心地よく、陽も丁度いい感じにあたっていて気持ちがいい。不思議と気分も落ち着くので、この場所が俺は好きだ。
ここ、星凪学園は北の大陸に四つある大きな学園のうちの一つで、敷地とかが本当に大きいし、いろいろな設備も整っていたりする。
学園内の敷地に寮もあるくらいだ。
「そういえば宏ー」
「ん?」
いただきますをしてご飯を食べ始めてすぐに悠莉が話しかけてきた。
普段はご飯中は黙々と、もぐもぐと食べている悠莉がご飯中に話しかけてくるのは本当に珍しいことだった。
「宏はこの学園で上を目指す気ってあったりする?」
そういって悠莉は電子端末を取り出し、ご飯を食べながら片手で電子端末を操作して、俺に画面を見せてきた。
その画面に映っていたのは『昇級戦』というイベントの詳細だった。