57 ビームでんのかよ
崖はゲテモノプールの突き当りに30メートルほどの高さで聳え立っていて、全く先に進ませる気がない。まぁ俺たちは俺がいれば飛べるからこの階層と相性が良かったってことだな。普通はあの中でもがき苦しむまでがセットかも。ひでぇ。
崖の上は両側に大きな岩で覆いかぶさるように塞がれ、真ん中に巨大な扉があった。これは普通の人間が開けられるのかな? 巨大過ぎるんだけど、何なら高さ5メートルはあるしな。普通は巻き上げ式の機械がないと無理なやつじゃん。
まぁものは試しと、兄弟とアリシアは勿論、俺の重力でかなりとんでもない力を加えても開かない。嘘だろ、多分俺、トン単位で力加えられてると思うんだけど。
勿論引き戸だったなんてオチもない(とはいえつい確認しちゃったよ)
鍵とかあったか? 低階層の宝箱とか完全スルーだったし、ここの鍵ならこの近辺に出るだろうし……。まさかあの化物? 斃れた後にドロップとか? だったらあそこに落ちたってこと!?
……しかしウジ虫プールの中から探せと言うなら断固断る。そんなトラウマ作るならダンジョン制覇なんてしなくていい!! ていうか通路の細さや中断といいモンスターといい、とにかくプールへ落とす気満々過ぎる。バランスに文句を付けたい!! 19層まではでかいとキモいだけできたのに、ここにきて状態異常とか地形とらっぷとか根性悪すぎだろ!! ゲームだったら文句が殺到してるところだ。
「さて、どうする?」
「これ、鍵穴か?」
緑のラウンド型の宝石が目立つように埋め込まれ、その下に鍵穴があった。
おそらく同じ色の鍵がどっかにあったということかよ……わかるか!!
と、いきなりアッシュが俺の肩に駆け上がってニーニー鳴きだした。
「え、え? どうしたアッシュ? なんか見つけた?」
「宝石に顔をむけてるようだぞ、近づいてみたらどうだ?」
アリシアの言う通り近づくと、アッシュが宝石と同じ高さに額を張り出した。そして手でテシテシ帽子を触っているので、紐を外してあげる。
ーーーー帽子をはずずと、途端にアッシュの額から出たまばゆい光が、緑の宝石に吸い込まれるように入っていった。アッシュの光が吸い込まれると、扉は大きな音を軋ませながら開き始めた。
ビームでんのかよ、アッシュさんかっけぇ!!
いやほんの一秒足らずだったけど、実際なんだあれ? あれがアッシュと契約したことによる特殊能力? 何か違う気がするな、カーバンクルの額の宝石は種族として元からあるものだろうし。うーん、もしかしたら他にもあるかもしれない「宝石のある扉で使える特殊技術」なのかな。他に扉はみたことないから分からんけどね。もしかしたらカーバンクルはフリーパスってことなのかもしれないし。古いダンジョンてことだしカーバンクル信仰でもあったとか、ありえそうだしさ?
「ありがとうね、アッシュ」
とりあえずアッシュを撫で撫でして(感触はない)、帽子を被り直させてあげる。
扉の奥には、玉座のようにゴージャスな彫刻を施された黒い台に置かれた、直径30センチは超えるコア(?)があった。え、コアってこんなに大きいの!?
「これは……世界でも最大級じゃないか? 3層で10センチ、それから1階層ごとに1センチ前後ずつ大きくなると言われてる。10階層で18〜20センチだから、20層で30センチ越えが達成されたことは相当大昔のことだぞ。近年の記録にはない」
「やばいな、……4人で割っても家が買えるぞ」
「ハァ!? これそんなに高いの!?」
こんなただちょっと光ってる黒いだけの水晶玉が?
なんかそう言われると高く見えるから不思議だ。
「都市の結界を守るのには欠かせないんだ、魔素さえ注入すれば数百年単位で使えるものだしな。おそらくオークションで、王都も含めたあらゆるところが目の色を変えて競ってくるぞ」
「ちなみに、具体的に30センチだとどれくらいの金額?」
「おそらく金貨1000枚以上は確実だ」
一億。ま……まーじーでー!?
「アリシア! コア!! 結界で飛んで他のダンジョンにコアだけ取りに行こう!!」
「各階層を無視してか? そんなつまらんことはしないぞ」
くそ! チートをここで使わずしていつ使うというのかね!(いつも使っているけどさぁ)
「とりあえずコアを外してしまおう」
「そうだな」
アリシアとイーヴァンさんがコアを外すと、かすかに光っていた中心の光が消えた。
そして、このダンジョンが「死んだ」ことを示すという重低音の音が響き渡った。これがいわゆる
「ダンジョンの断末魔」と言われるらしく、ダンジョン内にいるすべての人間に伝わるそうなので、外に出たら多分大騒ぎだろうとのこと。
全員でそこに集まってコアを覗き込んだが、もうさっきの輝きはない。
と、ここでまたアッシュが覗き込み、タシッと額の帽子をずらした。お、手慣れたな。するとまたアッシュの額からコアに向かってものすごい煌めきが発せられた。
「うわ」
ちょ、またか!?
アッシュさんもチートっすか!?
見ると、さっきの黒く光ってたコアじゃなくなってて、キラキラと球の中心が虹色に光がを発していた。ものすごく綺麗だ。アッシュからの光は止まったが、コア自体の光はそのまま周囲を照らして止まらない! なにこれ。
あ、一応アレやっとこう。
「目が、目がぁ……!!」
「どうしたルイ?」
あ、なんでもないです。ただのノリです。
普通のテンションで訊かれるとちょっと恥ずかしいです。
「カーバンクルがすごいのか、アッシュがすごいのか」
「カーバンクルと宝石に関する伝説は色々あるから、後で調べてみるといいかもしれないな」
あ、そーなんだ。やっぱり生き物の中に鉱物が埋まってるって不思議だもんね、色んな伝説もできるわな。ここにきてアッシュが大活躍だ。すごいぞアッシュ、可愛いだけじゃない!
でもこのコア色変わっちゃってるけど良いのかねぇ?
「これは目立つな、布に包んで運ぶか?」
「ああ、俺はに大きな袋が余ってるから使うか?」
「それをルイが担げば重さもないしな」
おぅ、信用されてる。これは嬉しいぞ。持ち逃げするとか考えないのか、相当人がいいぞこの兄弟。さすが領主の息子、人品に優れている。
その期待、応えてみせましょう!!
「これどうすればいいの? お宅んとこの領で買い取る?」
「いや、このレベルのものだとそんなずるはできない。普通にオークションを通す。正当な評価を得るならそれが一番だ」
「時間はどれほどかかる?」
「毎週開催されてるから、それほどかからないな。……しかし今回は全国に情報が流れるだろうから、全国からの代理人が殺到するぞ。もしかしたら想像以上に値段が跳ね上がるかもしれんな」
コアを厳重に包んでから巾着に入れ、背嚢に仕舞う。光はなんとか漏れなくなった。
てことは、アリシアが訊いたようにオークション終わるまではこの領にいることになるのか。
「これ、どこのギルドに持ち込めばいいんだ?」
「俺たちの行ってるギルドなら、ギルド長に顔パスで連絡できる。領の問題発生といえば通してもらえるし、オークション手続きも代理でやってくれるから危険がない」
「「おお」」
「さて、帰るか」
「先に言っててくれ。私とルイは狩りをしながら帰る」
まだ忘れてなかったーーーー!!
「い、いや、オークションの手続きに出品者の登録をしなければいけない。オークションにはギルドが出してくれるが、そのギルドには全員揃って報告が必要だろう、これだけの品だしな」
いいぞイーヴァンさん!!
「そ、そうだよアリシア。それにダンジョンの凶悪罠の報告と新階層の報告も先にしなきゃ。あ、あとダンジョン盗賊のこともだよ。そっちが先だよね?」
「……仕方ない、報告が終わってからでもいいか」
お、ようやく諦めてくれたか。
「あとな、ルイの冒険者証を作ってもらうといい」
「へ?」
「あのギルドマスターなら、かなり融通がきく。精霊だと明かし光魔法を見せれば大丈夫だろう」
あっ、二人に俺のこと話してない!!
今、ちょうど話をするチャンスかな。
「あのさ、俺のことなんだけど……」
「うん?」
「精霊じゃないんだよね。俺、ほんとはゴースト。一回死んでるらしいからさ」
「「……………………」」
無言怖い。そして二人は顔を見合わせた。
え、これ退治される流れじゃないよね!? まさかね?
「ーーすまんが、何が違うのかわからない」
イーヴァンさんがそう言うのに、オーディスさんも頷いた。
「光魔法を使えるならどっちも害がないのは一緒だろう? 何か問題があるのか?」
うお、アリシアに続いてこの二人も気にしない派か!
するとそこに何故かアリシアが反応した。
「いや違う。ルイは神に会って悪霊払いを直接頼まれた神の御使いでもあるんだ。普通の精霊よりも格は上だろう」
アリシアが嬉しそうに胸を張る。なんで自慢げなの!?
「そうなのか!?それはすごいな……そんなすごい人と一緒にダンジョンを攻略できたのは光栄だ」
「ああ」
ちがーう! そこ嫌がるとこじゃないの。「おぞましい」とか「怖い」とか! いや決してそんな言葉を好んで掛けられたいマゾではないけど。みんな人が良すぎだろ!
泣くよマジで。くそ。
「こっちこそありがとう……」
ま、まだギリギリで毎日更新出来てます。
3000字〜1万字が目安なんですけど、たまに一万越えてるのとか3000ギリギリ越えたとかもあります。
ムラがあってすみません。




