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56 許せるボーダーってあるよね



 さて、まだ昼になったかどうかの時間だが、先に食事を勧める、吐くことがないように、胃に優しいリゾットを選んだ俺はなんて紳士なんだ。

 あ、アッシュはナッツと果物な。

 リゾットには麦っぽいものと刻んだ野菜や鳥が入っているらしく、味はもちろん匂いがいいと言っていた。ああ、ごめんわかんない。でも店は覚えとくよ。

 

「さて覚悟はいーい?」

「そんなにか」

「そんなにだよ、覚悟してイヤほんとマジで」


 俺は心を無にしてみんなに結界を掛け、一人で天井ぎりぎりを飛行することにした。最下層に入ると、すぐにそれらは目に飛び込んできた。


 大して広くはないが、見渡す限りのゲテモノのプールプール&プール。

 なめくじミミズにゴキ、それににょろにょろしたゴカイやウジ虫のひしめきあうプール、たまにムカデや毛虫も顔を出す。押し合いへし合い蠢きあっている。

 ゾ、ゾゾゾ、ゾゾ、ズゾゾゾ、ってこれ、鳥肌の音じゃなくて下から聞こ終えてくる奴らの蠢き合いの音。あらゆるゲテモノをあつめて蠱毒でもさせたいのかと思ったけどさすがに居すぎ。


 これを見て皆さっきと同じことが言えるかな?

 階段を降り、20階層の景色を見たみんなは、全員黙ったままだった。

 よく見ると硬直してるのが2人、立ったまま失神したらしのが一人、もちろんイーヴァンさんだ。あーあ、だから言ったのにー。


「…………これは、ひどい」

「でかいのは案外可愛かったのか……」


 比べるとこおかしくなってるよ。


「で、この真ん中の道を渡るのか!?この踏み外したら終わりのようなところを!!?」

「あー大丈夫。俺が内向きと外向きの二重結界張ってるから、そのまま皆を浮かせて運んでいくよ。3人くらい余裕だし」

「す、すまんがそうしてくれ。歩いたら絶対落ちる!!」


 アリシアは気持ち悪そうにしながらも余裕あり、オーディンさんはギリギリ、イーヴァンさんはなんとか意識はあるかなってところかな。頑張れ。

 そろそろと移動を開始する。道の真上、浮いているので道に仕掛けがあっても大丈夫。……ーーと俺達は思い込んでいた。つーかそもそもの道幅、多分50センチないんだよね、40センチくらい? 下があれじゃなくても歩くのはかなり怖いだろう。


 でもここは最終階層、それだけの怖さだなんて、そんなに簡単な訳はなかったのだ。


 1/3ほど進むと、ゲテモノプールの中央が大きく盛り上がってきた。

 なにごとか、と思う間にザバァ、と虫プール内に出現したものは、異様すぎて言葉が見つからない。


 肉の塊?でいいのだろうか。

 人間の死体をガスが溜まるまで放置されたの見たことある? 水死体とかにあるんだけど、体が数倍に膨れ上がって青く血管が浮かび、はちきれそうな御遺体だった。

 それをものすごく巨大にして、数人分くっつけた感じ、というのが近いか。充血した目は飛び出し。舌も垂れ下がり、ヨダレを垂らし、顔として残っている部分は人間としては死んでいる。どこかのマッドサイエンティストにでも作られたのか?

 なんなん!? ここのダンジョンって人間を不快にさせることに特化したかったの!?


 こんなに生き物を冒涜したモンスターはちょっと許せない。おれは別に正義漢て訳じゃないけど、許せるボーダーってあるよね。

 意識があるのか、それはわからないけど。


「ひどいな……」

「ずいぶん冒涜的な化物だな」


皆もそれが気になったらしい。人型モンスターって8階層のアンデッド以来か。


「よし、行こう」


と、何の躊躇いもなく踏み出そうとしたアリシアを、驚いた三人で必死で止める。


「おい!!」

「何してる!」

「ちょ! ここ足場ないからダメだって!! 大人しくしてて!!」

「むぅ……」


 あーもーバトルジャンキーさんめ。止めてくれる人が俺の他にもいて助かるよ!!

 それに人型ってことはこっちもアンデッドの可能性が高い。


「アンデッドなら光魔法が効くかな?」

「……そうだな、試してみてくれるか」


 声にならないキーッとした音を発したそれは、俺達の方に向かって手を振り上げた。なに、普通に肉弾戦なの?

 ……と思ったら、俺以外の皆が顔を顰めた。どうもあの声が人間には効くらしい。


「頭がおかしくなりそうだ」

「痛いの?」

「違う、混乱、が近いか……」


 ああ、状態異常系か。俺には効かないもんな、すまんみんな頑張って耐えてくれ。

 悪いけど皆を天井付近に固定したまま、三重ほどに結界を掛け声を聞こえなくすると、俺はそいつの顔の近くまで飛んだ。とにかく俺に意識を集中させて、皆から離さないと!


 浄化!!

 効くかどうかわからなかったけど、どうせダメ元なんだから何でも試してみるべき。と思ったら効いた?

 いや効くというよりは嫌がるように、そいつは顔の前にブンブン手を振り回した。よしよし、一応ちょっとは効くんだな。

 一応ショートソードも投げてみたけど、こいつ、自己回復しやがった。最悪〜。切った先から糸を引くように周囲の筋肉がくっついていく。


 よし、まずは内向き結界に閉じ込めるか!!

 ふむ……これでこいつは動けない、と。


 ……みんなごめん……ちょっと今のうちに軽いスケッチ……クロッキーだけ取らせて!

 と紙とペンを取り出して、結界で固定する。

(みんな『嘘だろマジか』って顔してるけど、奴の声は聞こえない範囲だよね? 結界あるから動きも抑えてるし大丈夫だって! ね? ね?)


 さて、5分ほどで輪郭だけ描き終えて、残りは後でだ。さすがにこれ以上はね。

 光魔法だとダメージ入ってるかわかりにくいけど、これで削っていくのが最良か。

 何度も嫌がらせのように目の前をフラフラ上下左右しながら飛んで、でも大量の光の矢を投下、というより上から絨毯爆撃!

 

 キーーーー!!!


 うお、鳴かれた! あいつにはかなり効いたみたいで、うぞうぞプールの中に膝を付いた。うわぁ……きっっも。皆の方を確認すると聞こえてないっぽい、大丈夫だ。


 光魔法爆撃? を続けたら、さすがに肉が崩れてボロボロと剥がれ落ちてきた。よし!

 でもここで手を抜かない! 最後まで削り切る!!


 そして数分後、肉塊はゲテモノプールに沈んでいった。


 ……あれ、肉片ゴキさんに食べられて無い? うわ、俺は何も見なかった!!

 全てが沈んだ後も少しの間警戒したが、もう復活する様子はなかった。

 あーこわ。

 でも終わったか。


「みんなー大丈夫ー?」


 結界を1重に戻し声を掛けると、オーディスさんが呆れた声で応じた。


「俺達は大丈夫だが……いきなり絵を描き出す奇行には驚いた」

「ごめんごめん!! 8層以下のモンスター全部描こうと思ったらこいつも含めないとと思って。下は『虫の池』って文字だけだけど。一応皆の結界は三重にしといたんだよ!?」

「知っている。ありがとう、結果的にはちゃんと助かったしな」


 ほ、怒ってはいなかった。ほんとすまん、創作意欲がちょっと前に出すぎた。


 そして、アリシアとオーヴァンさんからも「お疲れ」と声をかけられ、そのままこの階層は移動することにした。


「やることがない」


 アリシアの不服そうな声が聞こえたけど、無理じゃんここ!!足場ないんだからさぁ!! わかってる? 今飛んでるんだよ?


「よしルイ、帰りもダンジョン内を上がっていくか」

「ええええええ!! マジで!? 19層から1層までワープできるってのにー!!」


 さすがの兄弟もアリシアやばい奴だコレ、って顔してるじゃん!


「そ,それは制覇し終えてから考えよう! これで最終階層なんだしさ!!」

「そうだな、まずはコアの発見が先か」


 よーしよし。これでひとまず問題は後回しだ。その間に忘れてくれることを祈ろう。


 やがて下に続いていた道すら途切れ、暫く先は崖になっているというクソ根性の悪い階層の崖の上、多分一番奥に辿り着いた。

 



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