55 写真の代わりに残せたら
ここを出たら、旅をしつつこっちの世界を歩いた軌跡を「旅のスケッチ集」とか作って残したいな、もちろん自分用に(売る目的ではなく)。ここでこんなことした、あんなことしたってのを、写真の代わりに残せたら楽しいな。
あ、アッシュとロキの今の様子をまず描こう。特にアッシュはまだ成長するだろうし、すげー楽しみ。
それからアリシアのいた街の様子だろ、首狩り峠…はスケッチしたっけ。それからこの街。一応砦にも行っておくか、ある意味出発点だしな。
それからアリシアと出会った森もはずせないか。
それから、どこに行くのかな。
アリシアが金ランクだから、そのランクの依頼のある街で、できれば悪霊に悩まされてる場所とかあれば最高。こっそり病院に行って、街の人と話しして、助からない人を探す。うん、なかなかやることがいっぱいだな。
でも一つづつ熟せば大したことはない筈。
さて、てことは今晩はまず迷宮内もちょっとスケッチしとくか……。透明なのを生かしてモンスターの詳細図鑑(こっちは売る用)を作るって手もあるな。
……描きたくないけどゲテモノも行っとくか。
日本も風景は足で歩いて気に入った場所(昔なら宿場町や名所)を描くっていうのが画家のステータスだったんだよな。いいなー、俺にも依頼こないかなー(願望) あ。事務所にいた時は普通にそういう依頼も来てましたわ。
葛飾北斎の「富嶽三十六景」歌川広重の「東海道五十三次」あたりは聞いたことのある人もいるだろう。あれも簡単に言うと旅の絵日記だな。俺も複製原画は持ってたな。あと「東海道五十三次」の方って五十三とか言いつつ55枚あるのだよwww 出発地と到着地もまぜてやんの。
俺は特に北斎が好きでたまらなくてな、すげー計算してかかれてんだよね、北斎の絵って。美大時代は北斎専門の授業も取ってたくらいだし。
そういえば知人(かなりのご年配)がその祖父から譲り受けたという北斎漫画(絵の手引書)の原本を持っててな、紙袋に入れて持ってきたから、流石に「今直ぐ桐箱を依頼して作れ、あと白手袋を嵌めて見るんだ」と徹底させました。ぼろぼろだったのだよ……保存悪くて勿体無いなんてもんじゃなかった。俺は当然新品の白手袋で拝見しました。紙を剥がすときはピンセット使ったよ。
すげーよ、あれ15巻あるんだぜ。見たのは初版の1巻と15巻だけだけど、まだあるらしい。でも保存悪くて見せられないとのこと。くっそー!!全部みたかった!!文化財クラスだぞ!
閑話休題。
さて、まずは8階層で暢気にスケッチする人はいないだろうから、完全透明のまま相手をぎっちりとした棺桶型の結界に閉じ込めスケッチ開始。人権? だってこいつら死んでるじゃん?
水彩絵の具ほしいなぁ!ちょっと画材屋探してみよう。
……って、この時代この世界なら油絵かテンペラ画か!! そりゃ無理だ!! 油は完全に乾くのに下手すると一ヶ月とか掛かるし、テンペラは云わば、生の絵だ。卵の白身とかを接着剤にして下に塗り、乾く前に色砂を載せろ!って感じだと覚えておけばいい(暴論)。だから大体壁画に使われるけど、あれも描くのに時間制限があって大変だよなぁ。あと持って歩けない。
まぁ、インクだけでも形は描ける。微細な色の部分を文字で指定するのが勿体無いが、腐ってるこいつら(ゾンビ)はそれでもいっか。
ゴーレムとかは金銀で多少は形の差があるけど、やっぱり染めたいよな。野菜の絞り汁とかで染めたら変色しちゃうしな。
やっぱり色が変わらないのは岩彩か。うーん、岩の粉は売ってるだろうけど高いんだよなー、宝石を砕くようなもんだし。ていうか珊瑚とか翡翠とか、絵の具の名前そのまま本当に宝石砕いたやつだし、絵の具代で死ねるつの。
それに接着剤にする「膠」とか売ってるかどうか知らないけど、作るのは絶対ゴメンだ。
知ってるか、あれ、動物の皮や骨、場合によっては内蔵を煮詰めて作る接着剤なんだぜ? 動物によって「鹿膠」とか「兎膠」「三千本膠(これは牛)」とか名前があるんだぜ、ふへへへ。
美大の日本画の奴らはこれを透明度とか粘着力によって使いわけて、むしろ舐めて味で濃さを判断したりしてたな。怖いだろ、美大って。魔窟だぞ。
俺、絵の具代に金をつぎ込みすぎて、餓死した先輩知ってるもん……(合掌)
さてゾンビとグールは描いた、と。あとはモンスターハウスで稼ぎつつ描いてくるか。久々な感じするなーモンスターハウス。あれだけ通ったのに。
入ったら床に荷重を掛けて、と。結界を広めに取って待機。
インクと紙を用意して、描く台として買ってある小さな机を出して広げ、と。よし来い!
おーおーわらわら湧いてくるの、なんかもうお前ら見ると安心感あるわ。
スケルトン、描くのめんどくせぇ!!昔一回だけロックバンドのCDジャケットに依頼されてスケルトン描いたのが良かったのか、それとも美大で取った美術解剖学が良かったのか、骨の数とかは覚えてるから間違わない筈だけど、そもそもお前ら細かいんだよ!!
それに比べてウィルオーウィスプ、お前らは最高だ。火の玉をこんなに好きになるとは……。
お、レイス、久々に見たぞ。透けてる人型、でいいのかな。悪霊っぽいけどモンスターなんだよな。よし動くなよ~個別に結界。
あれ、この結界って俺は出入り自由だけど、向こうのゴーストは入ってこないな、そういえば。境目が判るように光魔法が若干入ってるからかな。
満足いったら光魔法でまとめて浄化!! ありがとうよお前ら!!
暢気に描いてたからリポップできなくて渋滞起こしてたのも全部浄化、浄化、浄化!!
そしてすべての魔石を集めてあとでアリシアに献上。さって宝箱はどうかな~?
うん、相変わらずのミスリルのショートソードだ。そしてアクセサリーは…なんだこれ。ネックレス? アンクレット? じゃないな、長さ的に、あの頭ていうか額に乗っけるやつかな? えっと……ティアラ? とかヘッドドレスとかそういうの? 王冠みたいのじゃなくて、額に飾るやつ。ファンタジー映画の妖精女王とかが付けてそうなの!
うおお、アリシアが付けたら無敵だぞこれ、美しさ的に。最高オブ最高。付けて欲しい!! アリシアならいい機能が付いてたら使ってくれそう、鑑定待ちか……。くそ、鑑定欲しいっす!
それから、せっかくの(死者のとはいえ)街並みなので、上に光球を打ち上げて照らしまくって描いてます。悲鳴とともにいくつかの魔石が落ちたが知らん。ここでは弱い奴が悪いのさ! でもあとで魔石は回収しとくからな!
モンスターハウスは詳細に、あと下の階層に行くための教会の外観と内装、町並み、その辺りを描いてたらそこそこいい時間になった。あとはゴーレムの数体でも描いて終わりにしよう。
ゴーレムはそのまま結界で閉じ込めるだけで直ぐ描ける。描きやすいな、お前らいいぞ!ウッドゴーレムとかちょっと形が違って面白い。
石・木・鉄・銅まで描いてからみんなのところに戻った。
「あれ、おはよ。もう起きてるとは思わなかった」
「よう。何してたんだ?」
「ああ、モンスターとかダンジョンの絵だよ」
覗き込んできたイーヴァンさんに絵を見せると「これは……ルイは画家なのか!」と非常に驚いていた。
「うん、まぁそういう仕事してたよ。昔ね」
「精霊様が仕事……?」
「まぁそのあたりは追々話すよ」
この二人には俺のこと話してもいいかな。アリシアにも相談してみよう。
「おはようルイ」
「おはよ、アリシア」
「下の偵察か?」
「下は 二 度 と 行きたくないから、ダンジョン内でスケッチしてきた」
「おお、見せてくれ」
アリシアは俺の絵にも慣れてるが、街の景色には唸っていた。
「本物のようだ……」
「そう見えるように描いてるからね」
オーディスさんが起きてきたときにもまた同じことの繰り返し。絵を描かない人の反応って楽しい! みんなが絵描きの集団だとパースの狂いだとかアイレベルの話にしかならないから面白くない(勉強にはなる)んだよねー。
さて、昨日の続き。
今日は最終階層でみんなのトラウマを作りにいくぞー! おー。
酷いって? それを俺は見てきたんだよ!! みんなはいいよ、少しずつ段階を経て慣れてきてるんだから。俺一気に見たんだからね、まじトラウマ。それに比べりゃ優しい方だよな(ゲス顔)。
まずはビッチャビチャとぶつかってくる奴らから処理。半透明にしてと、二人が土魔法で岩を作ったら即座に回復させておく。いつ何がなるかわからないからね。
でも何事もなく、前が見えない程のナメクジの中をを強行突破し、なんとか下へ通じる階段まで来た。
「はぁ、休憩するか」
「と思ったからジュース買ってきたよー」
結界を掛けたまま上に行ってジュースと軽食を買ってきていた。
「でもこの先は地獄だよ、今までの総集編だと思ってくれていいから」
「今までより酷いのか?」
「酷いよ。細かいゲテモノの全面にプールになってる。そこに細い一本道があるけど途中で切れてる」
「……途中からその中に降りろと……?」
「普通はね。俺は結界に入れたままみんなを運べるから大丈夫だよ。でも落ちたら終わりだね。精神的に。多分シーフのロープとか、弓師の弓にロープとかを飛ばして結んで向こうに渡るんじゃないのか?」
「ここまで来た人間がいないのでは想像だが、まさかダンジョンも結界で浮いてくる奴が居るとは思わないだろうな」
みんな不敵に笑ってる。あーあーもうコアが脳内にちらついてるから闘争本能が抑えられてない。でも最後は戦わないと思うけど……どうかな?
「じゃあそのダンジョンの想像を越えてやろうじゃないか!」
七夕ですね。
ムーンに七夕ss載せておりますのでどうぞお越しくださいませ。BL好きの女性の方、もちろん男性の方も歓迎致します。
あと、更新不定期になりそうです。といっても隔日か3日に一度とか、その辺りだと思います。書き溜めがなくなったので書き次第アップできるようにします。すみません!




