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46 ブッコロですよ。ブッコロ。



 とりあえず翌日。皆が寝てる間に冬虫夏草の回廊の地図を書き上げ、ついでにアッシュに似合う額隠しの案をいくつも書き上げた俺は、アッシュをくれぐれもと起き出したアリシアに頼んで外に買い出しに出かけた。


 森の出口までは飛べるけど、そこからは徒歩のふりをしなきゃいけないから時間がかかる。

 とりあえず最初に訊いたのは、服飾、生地などを扱ってる店だ。

 少し離れていたけど、歩けない距離ではない。

 

 一度宿屋にロキの様子を見に行く。忘れられててもおかしくないのに擦り寄ってきてくれたよ……おまえもなんてかわいいんだ!

 でももうちょっとだけ我慢してな。

 世話係に聞いても、暴れないし大人しくていい子だって言ってた。まだもう少しかかることを告げると、世話を快諾されたので、多めの賃金を払っておく。「こんなに受け取れません!」と焦ってたけど、ロキの面倒をみてくれてるんだからチップとして取っておいてと笑って、ロキを最後に抱きしめてから宿を出る。

 

 さて、聞いてた道を歩いていると、この街は冒険者ばかりだ。みんなダンジョン目当てかな。他の街からの訪問者もいることだろう。もう転移罠で落ちても大丈夫だよ、と考えて、いやいや相当な実力がないとそもそも14層から逃げられないって気づく。あそこ最低でもブロンズ数人、もしくはシルバーじゃないと無理でしょ。

 つくづくサイテーな罠。


 さて、服飾屋は街の中心部に古着屋と繋がるように建っていた。同じ経営者なのか系列なのか。中は、日本ほどじゃないけどそこそこ充実していた。

 今回俺が求めてるのは、新品の光沢ある黒い生地、白い生地、緑の生地、そして赤いリボン、黒いひも。そして裏地の補強材。細かいフックやボタンなんかも多めに手に入れておく。それからストロー(麦わら)素材の生地があったからそれも買う。

 針と糸なんかの必需品も勿論たくさん買う、ほんとはミシンが欲しい! ていうか手作りグッズ全部欲しい!! アイテムボックスとかああいうのがあったら買い込みまくるのになー。まぁ重力操作で浮かせるから重さは感じないんだけど、邪魔は邪魔。


 それらを必要な分買って、ついでにみんなに古着でも買ってこう、と隣を覗いた。冒険者って着替えが少ないから、若干スプラッタぎみに血が飛んでても気にしなくなってるんだもん。古着とはいえみんなに合わせたの着せたい! ホントは俺も色々着たいんだけど動きを演出するのが難しいからローブのまま。これすごい不満なんだよね。


 イーヴァンさんには動きに合わせた動きやすいオフホワイトのシャツと、黒のパンツ。そして明るめの茶色のジャケットだ。これならいいだろう。確かポーチが赤っぽかったからいいアクセントになるだろう。


 オーディスさんは黒一色で中二感を演出……してるわけじゃないよ! マントがグリーンだから中はシンプルでいいかと思って。でもポーチも安かったからモスグリーンで揃えてしまった。焦げ茶系のラインも入っていてなかなかいい。色がバラけたり補色だとすっげー気になるんだよ!


 そしてアリシアには水色のラインの美しいワンピース、袖はレースだ。……いやいや、待て、聞いてくれ! これは外出、もしくは自宅用だ。ちゃんとダンジョン用の着替えも買ったぞ!!

 上下濃いグレーで、若干髪色に合わせたチュニックと細身のズボン。それをブーツに入れて濃紺のサッシュとポーチで止める。うん、綺麗だな。ポーチの淡い水色もいいな。ホントは白を合わせたいとこだけど、汚れるから黒の縁取りの物を選ぶ。ホントは差し色とか入れたいけど、冒険者にそこまでしたら逆に目立つか。

 

 それらを買って、大きな袋のまま森の中にこそこそ入ってく俺は若干の不審者。でも森に入ったら一気に下に抜けられる。

 あ、ここ転移部屋だった。みんなどこだっけ。えーと階層間の階段にももういないだろうし、そのまま下の階層に突っ込む。


 あー、ここも嫌な階層だった。冬虫夏草ゾーンなんだよね。

 もぞもぞしてるのを見ないように突っ切ってアリシアたちを探すと、「待っていたぞ」とイーヴァンさんから声が掛かった。ああ、休みたいのね。区切りいいところで結界を張って皆を休ませる。すまん、俺が買い物してる間は休み無しだったか。

 ついでに買った食料を食べながら、俺の買い物を広げる。


「これ、アリシアのね。こっちが普段着でこっちがダンジョン用」

「……私は普段も鎧なんだが」

「宿だったら楽な格好しててもいいんじゃない? 第一似合いそう」


 そして男二人にも服を渡し、(そっちのファッションショーは面白くないので割愛)残ったのがアッシュ用の生地だ。


「それ、どうするんだ?」

「うん、いっそおしゃれ着にするつもり」


 俺はデザイン画を見せた。


「おお、これはかわいいな!! しかしこんなもの作れるのか?」

「おう、任せといて!! おれの本領発揮するからさ」


 物づくりだー!!

 アリシアは解ってるのか、俺とアッシュを置いて「頼んだぞ」の一言で結界から出ていく。

 

 戸惑ったのは二人だ。追いかけていいものか逡巡してるらしいが、俺は放置してもらったほうが集中できる。

 ていうかこの階層、見ていたくないし。


「行ってきていいですよ、俺は勝手にここで作業してますから。何かあったら呼んで下さい」

「お、おう。わかった」

  

 悟ったらしい兄弟も結界から出ていき、俺は買ってきたものを広げる。

 買った生地でもう想像はついているかもしれない。

 まずは黒生地を裁断、そして裏に補強材を張っていく。それを丸と細長い棒状に切ったものとをつくり、貼り合わせ、小さな円筒形を作る。アッシュの頭に載せて大きさの微調整。そしてつばを付ける。円筒の間から黒の紐をたらして顎の下で結ぶようにしてある。赤でもかわいいかな。

 もうおわかりだろう、帽子を作っているのだよ、シルクハット! イメージとしてはマジシャン。もちろん、アッシュに合わせて小さな燕尾服も作る。そうすればおしゃれの一環として見てくれると思う。

 子供用のような小さな燕尾服を手縫いで作りながら、我ながら出来がいいと自画自賛。黒白でもかわいいんだけど、アクセントに目が行くようにわざと帽子のリボンと蝶ネクタイを赤にした。そうすれば遠目で額が見えてもごまかしが効く。

 一応、帽子の下にもバンダナを巻いて隠して、二重の守りにしてある。


 これでもアッシュを浚いに来た奴とかいたら容赦なくブッコロですよ。ブッコロ。


 あとはもう一種類の帽子、麦わら帽子……ていうよりもう少しかちっとしたカンカン帽のようなものと、白い襟にネクタイだけをつけたものを作る。このネクタイは緑。あーもー想像だけでかわいい!! さすがうちのこ! あ、セーラー襟に水兵帽もかわいいかな。白の生地少ないからまた今度だな。

 一度縫ったあとに紐を縫った隙間や細かい部分を接着剤で留め、縫い目の形を直していく。

 

 動物に服を着せるのって若干苦手だったんだけど、今回は仕方ない。でもできるだけ体温調整と動きを阻害しないようにはしたつもり。こうでもしないと連れて歩けないし我慢してね。

 


「おお、かわいいな」

「ニー」


 昼休憩に入ったアリシアがアッシュを抱き上げて眺め回す。まだ全部は出来てなくて接着剤の乾燥待ちのものもあるけど、最初に作ったシルクハットはもうかぶせている。


「どう? 額気になる?」

「いや、全く気にならならない。これなら帽子にしか目がいかないし、不自然さもない。誰が見てもお洒落してるんだな、という感想しか抱かないと思うぞ」


 ィ良しッ!!

 一応は成功かな。


「しかし、この子の種族名を何か決めておいたほうがいいと思うぞ。他人に訊かれたときに迷ったり、判らないと言うと『どれ、よく見せてみろ』なんてことになるかもしれん」


 イーヴァンさんの言う通りだ。俺が見てやる、なんて眺め回されても困るから、何か決めておいたほうがいいな。


「やはりルーパが近いか?」

「狐の変異種というのは」

「でも仕草は猫っぽくない?」


 どれもしっくりこない。アッシュを拾った当初からあれじゃないこれじゃないって言ってたくらいだから、断言されても若干の違和感が残るのは確かだ。


「あっ、ルーパと猫の掛け合わせっていうのどう?」


 俺が思いついてそう言うと、皆それぞれに頷いたり首を傾げたり。


「ルーパと他を掛け合わせたなど聞いたことないが……一緒に飼育していたらたまたまできたと言えば、まぁ大丈夫か?」

「そうだな、……それが一番マシか」


 皆で微妙に納得したところで「ところで」と俺は気になっていたことを聞いた。


「結局さ、カーバンクルって何?」

「え?」


 これなんだよね。ファンタジー小説とかで出てきた気もするんだけど、名前以外殆ど覚えてない。どんな特徴があったっけ?


「いやほら、この額って何の意味があるの? 若返りがどうとか言ってたけど、ちゃんと解明されてないの? そもそもどういう種族? モンスターなの?」

「ああ、そういうことか。そうだなモンスターの一種だがほぼ野生動物と一緒で怖がられていないと言ったところか。カーバンクル自体は、何のために額に宝石を持っているのか、また用途が何なのかも知られていない。全ては憶測だ。そもそも研究できるほど数がいない。ーーそして特殊な事例を除いて、人前には決して姿を現さないし懐かないとは聞くな。その点、アッシュはあまりにも特殊だ。人懐こいだけでなく、ルイと契約までしている。そんなカーバンクルなんて聞いたこともない」


 そうだよね。アッシュを助けたって言っても最初から逃げもしなかったし。

 そして、カーバンクルって逆に言うと宝石くらいしか特徴がないのか。処女しか乗せないプライドの高いどこぞの白い馬だの、上半身が人間で下半身と頭部が牛の化物だの、人面で人食いで凶暴なライオンの体の化物だの、生き物ってのは全てがそういう特徴を持っているわけじゃない。

 そしてアッシュはアッシュだ。何か特殊なところがあっても、なくても何も変わりはない。


「アッシュはどう見てもまだ子供でしょ? ってことは少なくとも親はいたんだよね。繁殖できるだけのカーバンクルはまだいるってことなんだ?」

「そうだな、まだ絶滅してなかったのが知れたのは嬉しいな。いつかアッシュのお相手も見つかればそれに越したことはない」


 アリシアも頷いてアッシュに手を伸ばした。帽子をかぶってるので頭じゃなく背中を撫でる。アッシュは変わらずぱちくりと大きな目で瞬きをしている。

 この子がこのまま何事もなく大人になってくれればいいけどな。

 


人面で人食いで凶暴なライオン=マンティコア。わかりにくいですかね?

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