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39 命とその得物、もらうよ



「どうしたんだルイ、ずいぶん時間が掛かってたが何かあったのか?」


 皆は心配してくれたのか、俺が戻るとすぐに集まってきた。


 御遺体は整然と並べられて、鎧や荷物も集められている。が、これは回収用ではなく、ご家族やパーティに戻すべきものを選別していたようだ。プレートと一緒に返却してあげるのかな。


「ーーごめん、これ、結構時間が掛かりそう……」


 俺は若干憔悴しながら事の次第を語った。

 石の玉ではダメだったこと、他のゴーレムの種類の多さ、そして竜の色に呼応したモンスターのドロップじゃないとだめらしいことなどだ。そしてドロップにはそれぞれに応じたドロップ率が存在し、すべてのドロップを集めるまでは相当な時間がかかるだろうということも。


「なるほど……『人質を返して欲しかったら玉を返せ』っていうメッセージだったんだな」

 

 弟のオーディスさんが眉を顰めつつ腕を組んだ。


「ずいぶん凶悪な罠だな。ここに落ちた人間が餓死するまでの間に、14層までの魔物を倒してドロップを集めろということか。しかもドロップ率がかなり低い、と」

「シルバーで5体目なら金なら何十体目か。ミスリルなんてどれだけ倒したら出るのか考えたくないが……つまり14層はミスリルゴーレムと見ていいのか」

「はい。見るだけ見てきたら12階層がゴールドとシルバー、13階層がゴールドとミスリル、14階層がミスリルみたいでした。俺のボロボロの斧じゃ多分ミスリルゴーレム戦は持たないんで、まずオーガから武器を奪ってきます」

「結局必要になったな」


 ホントだ。アリシアに勧められた時断ったけど、あれってアリシアに先見の明があったってことなんじゃ。


「多分、クリアするのに普通の冒険者が飢えて死ぬかどうかギリギリのラインを狙ってるんだと思う。食料によっては5日程度か。水がなければ3日でも衰弱するが、水さえあればなんとか1ヶ月はもつか。でも、幸い私達は飢えることはない。かなりの食料を持ち込んでいるから、まだまだ大丈夫だ」

「俺たちも結構持ってきている。飢えにも強いから、足りなければ差し出そう」

「いやいや、待って! 俺地上から食料持ち込めるからそこは全く心配しなくて大丈夫だよ。3人と1匹分くらいなら毎日でも新鮮な食事届けられるから。水もアリシアの魔法があるから大丈夫だよね?」

「ああ、問題ない」

「じゃあ問題は、ここに閉じ込められてるってことだね。できるだけ急ぐけど、何日か掛かるかわからない。それまでかなりストレス溜まると思うけど大丈夫?」


 アリシアが少し呆れたように俺を見た。


「……何を言っている。これから一人でかなりの数のモンスターを退治し続けなければいけないルイの方が心配だ。肉体はないから無事だとは思うが、もしリッチ戦のように何か問題が起きても、私達は駆けつけられない。それが心苦しい」


 え、だって閉じ込められる方が負担なんじゃ。


「ルイは絶対に私達を見捨てないだろう。そして扉を開ける方法も知っている。すべてを一人に背負わせて、それでも私達はただここにいるしかない。……すまない、ルイ」


 アリシアが、俺の手に手を重ねた。

 重力の反発で作っただけの手なのに、温かさが伝わる気がした。

 そしておれの目にしっかりと自分の目線を合わせた。


「ーー頼んだ」


 あ、嬉しい。


 その言葉だけで、俺、頑張れる。


「俺たちからも礼をいわせてくれ。本来ならここで死んでいた身だ。一緒に助けてもらえるだけで僥倖だ。たった一人に俺たちのことまで背負わせてすまない」

「すまない、時間など掛かっても平気だ。こんなところで寝るなど慣れている。むしろモンスターがいないところで寝られるだけ恵まれている」


 俺は勢いよく頷いた。

 それから荷物を最低限にして、武器、魔石とドロップ入れの袋だけ持った。食料はすべてアリシアに渡す。

 そして、さっきどかしてもらった御遺体の少ないところに、結界ベッド(光魔法で若干の色付き)を3つ作る。


「じゃあこれベッド」

「ああ、助かる」

「アッシュ、ごめんな? 少しアリシアといてくれな。後でおもいっきり遊んでやるから」

「ニー」


 そしてワシャワシャと額を撫でたが。

 ……うん? 額の硬い部分が、かなり大きくなってるな。別に尖ってないし角っぽくない。でもまだ表面に出てこなさそうなんで一旦様子見でいっか。これはまた後だな。


「じゃ行ってきます!」

「ああ、気をつけてな!」



 さて。俺は12階層でため息(出ない)をつく。

 ドロップ率は何%くらいかな。ここが今の最終到達地点だったはずだけど、ここで引き返したその冒険者はドロップを持ち帰ったんだろうか? それ1つだけでも結構な金額になるからな。


 さっさとアリシアたちを開放しなければ。

 俺は今までになく好戦的な気持ちでモンスターに対峙した。躊躇なく斬りかかる。  

 狙うのは首だけだ。起き上がるようなら足の関節だな。

 ゴールドゴーレム、さすがに早い。俺の斧を躱す。くそ、攻撃されても大丈夫だけど、躱されると責めるのが難しい。だって俺戦闘センスとかないもん。

 短剣のように二刀流がいいのか、アリシアの言うように。……うん、そのようだ。とりあえず縦横無尽に回転させながら後ろからのヒットを狙う。首は外したが肩を切り裂いた。ゴーレムの周囲をぐるぐる回しながら、隙を見て攻撃、躱される、躱される、そして首頭にヒット、もう一度首にヒット。

 ーーそして魔石になる。ドロップは……なし。だろうな。


 さて、このまま続けるのは得策じゃない。まずは得物の調達だ、斧が保ちそうにない。


 オーガはどこだっけ……と、7階層がリザードマンだったから、6階層か。

 いちいち人間のフリしてる余裕はないから、姿を消したまま一気に回収に行くか。



 12階層から土中を突っ切って、6階層に戻ってきた。オークはすべて無視。オーガを探して飛び回る。人がいなければ何とでもなる。


 見つけた。

 赤黒いオーガ、武器は大斧。よし、それをよこせ!

 俺は一気に奇襲を掛け、自分の斧でオーガの腕を斬り落とした。

 何事が起きたか判らず、手が落ちて絶叫するオーガ。その武器を反対の手で拾おうとしたようだが、その前に俺が回収。二本の斧でクロスするように首を切り落とした。


 ……人間、やろうと思えばできるんだな。あの時のビビってた気持ちがなくなり、いまはただの獲物にしか見えない。

 悪いけど今は、アリシアたちのためなら躊躇わないから。

 魔石も拾っておく。

 そして、念の為更にもう一体探しに行く。


 いた。が、こいつは柄物が棍棒だから無視。欲しいのはゴールドとミスリルに通じる大斧だけだ。棍棒のような長いものは俺には扱い難い。

 しばらく探して、ようやくもう一匹見つけた。茶色のオーガだ。

 悪いけど、命とその得物、もらうよ。

 二本になった大斧を両側から飛ばして体を抉る。絶叫を上げるオーガの頭にどすっと止めを刺した。

 アリシアたちの命に比べたら、怖さなんか一気に無くなる。とにかく時間内に助けないと! たとえ食料があるにせよ、死体に囲まれた空間に何日も閉じこめられるなんてストレスMAXだろう。

 すぐに助けるから!!


 落とした斧を広い、巨大斧を3つ抱えて姿を現したら通報されそうな自覚があるから、斧ごと透明になって12階層に戻る。


 よし、狩りの再開だ!

 


 一体目:数度避けられたが斧の波状攻撃で撃沈。しかし結構大変だな。ドロップなし。

 

 二体目:避けられる先を予測してみたが失敗、正面から撃破。ドロップなし。

 

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 十対目:避けるパターンが読めてきた。二本の斧を囮に1本で止めを刺す。ただしやはり数度は刃を入れねば倒せない。


 十一体目:十二体目:同時に出てきた。それぞれの死角を補うのでなかなか刃が通らない。ゴーレムにこんな知能があるのか。常に刃を一体の影に置き、誰かを間に挟むことでこちらも死角を作り攻撃を繰り返すことで少しずつ削るのに成功。各個撃破が鉄則。


 十三体目:ゴールドでもこれだけドロップが出ないってことは、ミスリルの場合を考えると目眩しかない。今はゴールドなら一体は楽に狩れるようになったのが救いだ。でもゴーレムごとに動きが違うから次に持ち越せないのが痛い所。


 十四体目:変異種か? 細身で特別素早いゴーレムが出てきた。色は同じゴールド。無視しても良かったが、これも訓練の一環だと相手することにした。斧のクロス攻撃が当たらない。3本目は止めだけにつかってたけど、ここで戦線に投入。縦横無尽に振るわれる3本の大斧にさすがによけきれなくなったか傷を負い始める。

 結構な時間が掛かったがこいつも撃破、でもドロップなし。クソ!


 十五体目:返す返すも俺は馬鹿だ。社会人だったと言われてもあまりの馬鹿さに誰も信じないだろうと思う。確かに絵しか描いてない人生だったけど……。俺、重力操作ができるんだから、出てきたゴーレムをさっさと上から押さえつけて頭を斬りつければ良かった。これに気づくのに一体どれだけかかってるんだか。ああ、やっぱりドロップはなかった。クソ!

 

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二十一体目:ついに出た!



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