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38 パーティ前提の罠


 土だな、土。

 かなり分厚い、っていうかここ周辺に通路がないな。土の中を壁に沿ってぐるっと一周しようとしたところで、少しだけ体が外に出た。

 あった!扉か? といっても壁の部分の厚さは50センチ以上ある。かなり分厚いぞ。

 そこから出て見ると、まっすぐ伸びた通路があった。そしてこっち側にもスイッチなんかはなかった。一応入り口付近に重力を掛けるが何も起きない。

 くそ、こっちは体重で開く扉じゃないのか。

 んーこれは面倒だぞ、一旦戻って説明するか。


 部屋に戻ると、三人は他の冒険者を持ち上げて運んでいた。何やってるのかな、と思ったけど、並べて安置してあげるのと、皆のプレートを持ち帰ってあげるみたいだ。ほとんどが青い石のまま死んでいて辛い。中にはシルバー冒険者もいて、実力者でもここに落ちたら終わりだと知ってぞっとする。


「ここの向こうに通路があったよ。でも向こう側にもスイッチはないし、体重で開く扉じゃないみたいだから、別のところに何か開くための仕掛けがあるんだと思う。見てくるよ。あとついでに、一旦上に行ってここが何層か調べてくる。こまめに報告に戻るから」

「わかった、頼んだ」


 アリシアは軽く頷いて俺を見た。おお、言葉は少ないけど信頼されてるってすごい伝わってくる。この信頼は行動で返すよ!


 次に、通路の奥まで行ってみる。十字路に出ると、中央に何か大きな石碑みたいなものがあった。

向こうに周って見てみると、石碑の前に竜を象った彫刻が4体あり、それぞれの右手に何かをはめ込むようになっている。竜はどちらかというと東洋の竜に近い細長い体だ。

 ーーーーこれが鍵か。


 さてそれから一旦透明になってアリシアのいる部屋に戻り、意を決して真上へと上昇を開始する。土を抜けて階層に出、また上の土に潜り、と幽霊の特権をフル活用して真上に上昇していく。土の中はザラザラしてて視界が悪い。たまに何か虫みたいなのとか得体の知れないのもいるし。


 1、2、3、4、………11、12,13,14,15、でやっと外に出た。えーと……つまりあの閉鎖空間は14階層にあったということだな。深いな……。

 出た場所は、ダンジョンを見下ろせる、入り口から少し離れた森の中だった。わかりやすいように短剣で木に印をつけておく。こうしておけば迷ったとき、最悪ここから戻れるからね。   

 一旦戻って報告。



「というわけで、ここは14階層のようです」

「はー……そりゃあ誰も助けがこない訳だ」


 お兄さんが頭を抱えてうなだれた。

 ここに落ちた人たち、みんな助けを待って死んだのか。仲間がいなければそもそも出られない、仲間がいても14層まで到達できた人間はまだいない。実質不可能だ。

 みんな、餓死だったのか……。

 さっきの盗賊たちのように複数人で来て、食料の奪い合いで仲間割れの殺し合い、なんてこともあったかもしれない。

 パーティ前提の罠とか、アリシアがソロのまま来てたらと思うとゾッとする。


「で、多分ですけど、この通路の先の十字路にあった竜の彫刻が、手に何か嵌められそうなんですよね。それが鍵じゃないかと」

「何が入りそうなんだ? 魔石とかか?」

「こぶし大くらいのものです。大きさからして魔石ではないですね」


 そう言うと、皆揃って腕を組んだ。仕草が揃っててちょっと吹き出すとこだった。


「……転送されたのが8階層だろう、そしてここは14階層。……ということは、残された仲間がその『鍵』を手に入れて、仲間を助けに来るには、『宝箱の中身』もしくは『8層から14層までのモンスターどれかのドロップ品』のどちらかと考えるべきじゃないか?」


 アリシアがそう言ったのに皆で頷きながら考える。どこかで「鍵」を手に入れる、か。

 ん? ドロップ……?


「ドロップ…………あ、9階層の石!」

「石?」


 俺は預けていたリュクから用途不明の石の玉を取り出した。

 何ですぐ思い出さないかな俺!


「これ、9階層のモンスターからドロップしたやつです。何に使うのかと思ったら、そういうことか?」

「ルイ、一回これを嵌めてきてくれないか」

「わかった、行ってくる」


 通路の方に出て、彫刻まで文字通り飛んでいく。

 竜の足にはめ込むと、ぴったりと嵌った。おおおお!!

 喜び勇んで報告に行く。


「ぴったり、あれだ!」

「やったな、全部で何個だ?」

「4つ。あと3つ集めてくればいいんだね」


 何だ、そんな簡単なことか!

 心配して損した。

 俺は数を数えながら9層まで戻る。ここからは上位冒険者しかいない、危険地帯。アリシアがいない俺には、圧倒的に攻撃力が足りない。ーーが、どうせ俺は怪我することも死ぬこともないので力任せで押し通る。


 通路を飛んで移動すると、すぐにあの石の人形……もしかしてあれってゴーレムなのかな? がやってきた。斧を取り出して、一振り、二振り、三振り。ーーそれで魔石と石の玉に変わる。

 同じことをあと二度繰り返せばいいだけだな、と思っていると、今度は木でできたひょろっとしたゴーレムがやってきた。ふむ、俺としてはデッサン人形と呼びたい。あれ動かして描きたい! 人体の動きのモデリングとして最高だから俺もあれに近いの持ってるんだけど、生きて動いてくれるならそれに越したことは……はっ!

 ……いやいや自重自重。それどころじゃないから。

 とりあえず倒す。石より柔らかく、斧の2振りですぐに魔石になった。そして今度は石……じゃなくて木の玉をドロップ。


 ……………………は?


 木の玉? 種類違ってもいいの? どういうこと?

 ドロップは石だけじゃなくて、ゴーレムの数だけ種類があるとか?

 とりあえず次にまた石のゴーレムを倒す。うん、こっちから出るのはやっぱり石の玉だ。


 首を傾げながら14層に戻り、とりあえず十字路へ行って、絡み合った4匹の竜の手に適当に玉を嵌める。

 うーん、何か釈然としないが、扉は開いてるかな。


 ーーーー開いてなかった。


 これじゃだめなのか。ちょっと十字路まで戻って考える。

 竜の裏の石碑は白いけど、竜はそれぞれカラーが違っている。金、銀、銅、あと多分……この青白い銀はミスリル。モンスターハウスで散々出したショートソードと同じ色だしね。ミスリルってすごい高いんでしょ、これ持って帰ったらひと財産だとか考えちゃうね。ポーズは特に目立つところもないし、嵌める順番とかではないだろう。

 

 ふむ。一回考え方を変えるか。

 まず、あの転移の部屋のいかにもな宝箱に何か入ってなかったか見に行くことにする。



 えーと、8層の……廃墟。部屋に入っても飛んでる俺は転移されない。まっすぐ宝箱に向かってみた。

 開けると、何も入っていない。ーーこういうこともあんのかよ!

 あ、……いや、蓋の裏に何か書いてある。



【彼らの持ち物を返還すべし さすればそなたらの求めるものもその手に戻るだろう】



 ーーーーんんん???

 誰に何を返せって? 彼ら? いろいろ奪ってきてるから心当たりがあり過ぎるんですけどー!

 宝箱はひっくり返して裏まで調べたけど、それ以上の情報はなかった。

 

 うーん。自分が冒険者で、目の前で仲間が消えたとする。

 俺は幽霊だから危険がないしあっさりアリシアを追ったけど、もし肉体のある冒険者の俺ならどうする?

 ーー同じ轍を踏まないように遠回りなどして宝箱を空けて、まず何か仲間のヒントがないか探す、そしてこの文を見つける。この階層を探しても仲間はいない。

 となると……どこかにいるだろうと下に向かうよな? 


 よし、少しの間、肉体のある冒険者としての意識で行動しよう。

 

 9層で、しばらくストーンゴーレム(勝手に命名)を狩る。たまに出てくるウッドゴーレムもどんどん狩っていく。広い階層だけど、飛びながら移動できる俺には関係ない。下への階段を見つけて降りる。

 10階層に最初に出てきたのは……鉄のゴーレム? アイアンゴーレムかな。これも硬いが、倒せないこともない。数度打ち据えて、魔石と今度は鉄の玉をゲット。

 鉄の玉……? うーん?? 考えながらもやってくるアイアンゴーレムを倒して行く。どんどん溜まる鉄の玉。ちょっとすごい邪魔なんだけど。一旦袋に入れて浮かしてるけど、あとでどこかに置いてこよう。


 それからしばらくして、ようやく別の種類が現れた。……多分、銅? これは想像通り柔らかいので、すぐに終わった。そして転がる銅の玉。


「あっ…………!!」

 

 思わず声が出た。何でこんな単純なことに気付かなかったかなぁ!!

 あー俺ってほんと馬鹿!!


 14階層の竜のところまで戻る、やっぱりそうだ。



 ーーーーこれ、竜の色の玉を集めろってことなんだ!!



 「彼らの持ち物」っていうのは、銅の竜なら銅の玉、金の竜なら金の玉を嵌めろってことだったんだ……。

 銅の竜の手に銅の玉を嵌めると、カチ、と小さな音がした。小さな変化だ。しかしこっちが正解だろう。

 今までの玉は全部ここに置いていくことにした。邪魔だし。


 よし、次ィ!!

 10階層の、ブロンズゴーレムは全部体の中すっ飛ばして通過し、別のゴーレムを探す。いない!?ここ、全部ブロンズだけ……いや、アイアンゴーレムもいる。でも、無視だ。あの竜にアイアンはなかった。

 いない、いない!!ーーかなりの速度で突っ走って、下の階層に飛び込む。


 11階層に突入。

 早く出てこい、出てこい、ーー来た!!

 あれは……アイアン? じゃないな、シルバーだ!! よし来たァ!!

 手早く首をカット。銀も柔らかいので2度の斬撃ですぐに倒せる。そして魔石と……。

 

 ドロップなし、だと……!? 

 ここにきて? まさかの!!

 とりあえず止まってる暇はない、次を目指す。

 次にようやく見つけてまた倒したが、やはりドロップがない。

 

 ーーまさかだけど、ドロップ率が違うとか?

  

 結局、5体目でようやく銀の玉をドロップした。


 ーーこれ、やばい。

 何がやばいって、「貴重なものほどドロップ率が上がる」ってことだと、クリアにかなりの時間がかかる。だって次は金だろ、そして……ミスリル。伝説の金属だろ。そんなものがポンポンドロップする訳ないってことくらい、素人考えでもわかる。(まぁモンスターハウスは置いとくとして)

 となると、問題は時間との勝負だ。だって普通の冒険者なら俺みたいに「玉を手に入れた種類のゴーレムは素通り」とかできないから、出会った敵すべてを倒しながら進まなきゃいけないんだ。仲間にあるのは手持ちの食料だけ、それで生きてるうちに全てのドロップを揃えるとか……なんて無理ゲー。

ああ、「8層でいなくなった仲間を、期限内(餓死する前)に集めて救え」って、そういうクエストなのか。


 ちなみに、相手は相応に強い。これ、俺が人間だったら毎回死んでる。攻撃がすべて入らないから完全に無視してこっちの攻撃だけ通してるから簡単だけど。アイアンやストーンは力がすごいし、シルバーやブロンスはものすごく素早い。

 しかし、そろそろ斧が刃こぼれしてきたし、これ、絶対またオーガの層に取りに行くことになる。



 ……一度、アリシアたちのところに戻って報告しよう。



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