表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/59

3 やってきました異世界(多分)

 

 ーーそうしてやってきました異世界(多分)。

 何で多分かって?

「どこに飛ばされるかは判らないよ?」とは言われたけど、今は地上からはるか上空にいるからです。はい。肉体があったら落ちた衝撃で爆発四散するくらいの超高度です。地平が丸く見え、下に白い雲、その隙間から青い海と緑と茶色の大地の色が見えるくらいといえばわかりますかね? 大気圏から成層圏のあたり。上に向かってふんわりとした白、水色、青、濃紺、そして黒(宇宙)のグラデーション。


 まぁとりあえず、イメージにある幽霊……ゴースト? ゴーストで統一するか……のように、自由にふよふよ飛べるのは良かった。そうじゃなきゃ死んでるけど。そしてこれは思ったより気持ちいい。風がすり抜けていくのを肌で感じることはできないないけど、大地を見下ろすってのは生きてたらできないことだよなぁ、空気とか相当薄いだろうし。

 キレイだなー、真っ白の雲がよく見ると渦を描いていたり薄くのびていたり。緑も、海の青も、決して均一じゃなくてたくさんの色で形成されている。特に海の青、紺色が吸い込まれるように綺麗だ。

 どこの星も上から見るとそう変わりないもんなんだな。星全体を見下ろせるわけじゃないけど、やっぱり地平……水平?の丸さがわかる。大陸も雲の合間から一部だけ見えるけど、やっぱり見覚えない形だわ。

 さて、いつまでも眺めてられるけど、まずは地上に降りてみるか。


 すーっと真下に降りていくことしばらく、真っ白の雲をいくつも突き抜けると眼下に地上が見えてきた。砂漠や海も覚悟してたから(と言ってもそこに落ちても問題ないんだけどね)、まばらとはいえ緑があるらしいところに出てほっとした。まずはただの青だったが、しばらくすると遠くに雪を冠った急峻な山脈が見えてきた。更に降りると近くにはいくつものなだらかな山、丘、そして所々に森や林。良く見ると街道らしき跡もある。

 うわぁ、間近で見る異世界だ!

 …………というか全然違和感ないんですけど? 地球とほとんど一緒だこれ。ドラゴンとか飛んでないし、浮遊大陸とかもないよ!! まー、馴染みやすくていいのかな。


 そうして近くに見えてきた地面には、大量の点……人間らしき姿が見えた。

 おお、人だ! いっぱいいる!

 この世界にもちゃんと人間がいてほっとする。まぁ「中世以降くらいの世界」って頼んだんだから、文明がないわけがないんだけどね。よかったー!


 下の人達は、どうも2つのグループに分かれて対峙しているような感じ。ゲーム? スポーツとかしてるのかな。

 あ、動いた。

 あれ、何か飛んでる?

 おっと土埃が。……あれ、あの馬に乗ってるらしき人たち同士、ぶつかってない? 飛んでるのがあたった奥のひとたちが次々倒れて……


 ……ってここ戦場じゃないかーーーーい!!


 とりあえず上空で一度停止し、姿を完全に消すのを試す。うん、できるできる。光魔法が使えるってのが体感でわかる。できることとできないことがインプットされてる感じ。

 誰も上を見上げてないから良かったー。でもデフォルトで透けてるから殆ど見えてないかな。

 完全に透明になったのを確認してからもう一度眼下を見下ろす。俺のすぐ足元を大量に飛んでいくのはどう見ても弓だ。真っ直ぐ飛ばすんじゃなくてあんな風に上に打ち上げるのかー。あれなんだっけ、曲射? とか聞いたことあるような。

 はー、何でこんな戦争開始ですっていうピンポイントで来ちゃったかな。


 とりあえず上の方に浮いたまま戦場の端の方まで移動する。俺の移動速度、どれくらい出てるのかな。多分小走りくらいの速度は出てると思うんだけど。

 森の方まで寄ってから恐る恐る地上に降りると、後ろから馬が体の中を突き抜けて行って、マジびびった。心臓あったら心停止してるレベルでびびりましたよ! 人いたんかい! ていうか近くで見ると馬の迫力がすごい、でかい!! あんなのに踏み潰されたら死ぬ!! あ、俺死んでたんだっけ。

 人間が身につけているのは大体金属のプレートメイルだった。後方支援らしきひとたちはローブっぽいのや革鎧なんかを身に着けてるようだ。近づいてないから詳しく見てはいないけど。


 その後もたまに馬の脚とか人とかが体を通っていくのにびびりまくってたけど、よく考えたら俺、幽霊。なんでもすり抜けられる、はず。俺いま怪我とかしない、はず! よし、堂々と突き抜けよう。

 木だってすり抜けちゃうもんね! 森の中を真っ直ぐ飛べる! ちょっと目をつぶっちゃったけど、慣れれば面白い。

 人や馬はもちろん、木や草なんかもほんとに地球と変わりない。もちろん見覚えはないが、外国に行った程度の差異しかなさそうだ。よかった、原色の野山とかだったら落ち着かなすぎる。


 うん、そしてもしかしてこれ、最初に来るにはある意味最適な場所だったんじゃないだろうか。

 戦場跡だったら多少は浮かばれない人間もいるだろうし、勉強のためにはこういうところのなりたてゴースト? から成仏のテストを始めるといいんじゃないだろうか。古城に住み着いた何百年ものの年季入った悪霊とかだと最初に相手するのはハードル高すぎるからね。

 とりあえずこの近辺でしばらく様子見をしてみることにする。


 どうせ戦場は決着つくまでしばらく掛かるだろうし、その間に自分の体の状態とか使い方を覚えておこう。

 戦場脇の森の中に入って、まずは体を見えるようにする。透過率を変えて……あ! 今気づいたけど俺ちゃんと服着てた! 管理人さんありがとう!! 服ごと透明になってたんだ……あれ、服も物体の中を通過してたなそういえば。あっちから着てきたからこれも俺の一部ってことなのかな。うわー良かった!

 よし、こっちの物を持ったまま物体の中を通過できるか試してみよう。

 ちょうどいい木の枝を…念力? 重力操作? 念力でいっか、念力で浮かせて……

 う? お、うまく行った。浮かせようと思えばできるよこれ。そのまま手の方に持ってきて目の前の木を通過……はできないのか。

 枝を持ったまま木の中を通ってみると、俺だけ通過して木の枝は通る前の場所に前に落ちた。

 やっぱり通れるのは自分と着てた服だけかー。

 ……と、枝をふよふよ浮かせて眺めてると、手に近づけたところで透明になったな。なにこれすごい便利!! 持ったもの(実際手には持てないけど)も透明にできるの!? あ、光魔法の干渉圏内にあるってことなんだな。


 よし、次はどこまでの物体を動かせるかだ。

 石でも投げられるようにしたい。

 石……、石、意外とないな。……あ、ちょっとでかい倒木がある。あれ行けるかな。よいしょ、上がれ!

 って別に力がいるわけじゃないけど、意識するとちゃんと上がった。持ってる感じは一切しないんだけど、思った通りに動かせる。あれ結構重いと思うんだけどなー、管理人さん、この重力操作って十分チートです!!

 次、光魔法もおさらいしておくか。自分の透明度を変えることができたから、普段は姿を消して、と。あとは使命である悪霊退治……ゴーストハントって言ったほうがいいか……には浄化? みたいなのが必要なんだよね。ちょっとカッコいいじゃない。


「浄化!」

 

 声に出して言って見る。ほわっと光が出てきて、しばらく目の前にとどまる。

 ーーうん、それだけ?

 あ、浄化するものがないからか。やっぱりこればかりは悪霊だかゴーストだかを前にして実践しないと駄目かー。

 じゃあ、とりあえず光魔法は置いといて、念力の方だけでも習熟させとくか。

 さっきの倒木を振り下ろして、回して、ぶん投げる。急停止して、横薙ぎ!

 やべぇ、結構楽しい。俺の中の中二心が刺激される! 高速で動かせれば結構な武器になると思うので、ちょうどいい木とか石とかあったらキープしとこう。

 よし、結構慣れれば物を自由に動かせる。できるだけこまめに練習しよっと。

 

 しかし、お腹も空かないし眠くもならないし疲れないし、ゴーストって思ったより快適かも。

 念力ってMPとかそういうのも必要ないのかな。光魔法もだけど、使っても疲れたとか、体から何か抜けてくとか、そういう感じが一切しない。すげー便利。なにこれ、体なくて逆に良かったんじゃないの? 

 いやいや、目的を見失うな俺!

 世界を見て回るとかはこれでいいけど、このままだと一生女の子とかと触れ合えないじゃないか! 一生がどれだけあるかわかんないけど、ずーーっと一人だと絶対飽きる! そして寂しいじゃないか!

 やっぱり今すぐじゃなくても体は欲しい! ゴーストハントしまくって、ここの世界の管理人さんの目に止まって、体もらうんだ!

 憧れの、健康な体を。



 とりあえずそうして自分の体に慣れること2日、その間に何度か上空から見に行った戦場は、ようやく終焉を迎えていたようだ。そういえば法螺貝のような音が聞こえてたから、あれが撤退だか勝利だかの合図だったのかもしれない。勝敗は知らない。どっちの国名も知らないし、そもそも内戦かもしれないし。

 倒れ伏した大量の死者の中を、揃いの鎧を身に着けた者たちが歩いている。死体検分のようだ。自陣の死体を部下に運ばせて、まだ生きていたら味方は治療に連れていき、敵の人間は捕虜にするため連れ帰る。そんな感じでしばらくはうろうろしていたようだ。夕方には引き上げていったので、こっそり現地入りして周囲の上の方をを飛び回る。


 あまり細かくは見ない。所詮現代人だった俺に戦争の生々しい傷跡とか直視できる訳もないし。まぁ、この世界にいたら人の生き死にがもっと身近になるのかもしれないけど、まだ今はちょっと無理だろうしね。自衛のためにも今は距離を置く。 

 ……ふむ、悪霊、というほどの者はいないのか。

 幸せを突然奪われてなぶり殺される、といったこともなく、戦場という殺すか殺されるかの場所に来ていて死を覚悟をしていないものなどそうはいないということかな。

 でも歩きまわっていると、黒っぽいモヤのようなものがあちこちに見える。悪霊にまではなっていない、ただの人間の悪意や殺される瞬間の恐怖などの塊だ。それが力を持ったり、人の形をしだすと問題になってくるというのが、どこにあったのか知らないが本能みたいなものでわかってしまった。

 だから、排除する。


 「浄化」


 さっきの丸より流線型の方が、そして矢の形の方が相手を滅しやすいと気づいて、矢形の光魔法でモヤを吹き飛ばす。切り裂いた部分からさらさらと消え去っていくモヤに、成功したことを知ってほっと胸をなでおろした。実践成功? かな?

 

 さて、俺は俺なりに戦場の後始末(?)をし終え、別の場所に向かうことにした。

 ていうか、この場所に長居はしたくない。まさか世界中で戦争中なんてことないよな?

 今戦ってた二国とは違う場所に行きたいな、もうちょっと平和そうなとこからまわっていきたい。

 どっちに行ってもいいけど、なんとなく戦争してたところは避けて、戦場の真ん中を突っ切ってまっすぐ奥に飛んでいく。途中で気づいて空から見下ろしてみた。小さな村はあるけど、それはあとで旅をしてたら嫌でも目についたりするだろうから、まずはこの世界の大きな都市を見てみたい。


 結構上空まであがると、遠くに城塞都市?のような、周囲を城壁で囲まれたところを見つけた。

 よし、君に決めた☆


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ