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25 単純なほうがいい


 そいつは唐突にローブをバサリと払った。

 おいおい、骸骨の体なんて見たって嬉しくねーよ! ……って言おうと思ったけど、ちらっと見ちゃったら、こいつの体……若干中身がある!? いやミイラと生身の中間ていうか……?

 うっすら皮が張り付いて、内蔵らしきものの形が萎んだ状態で張り付いてる……のか?

 ーーどういうことだこれ。なにこれ。


 リッチってことは確か死んだ後に自分や他者の体に憑依して、死体を操るアンデッド、だよな? 生前が位の高い人物や死霊術師なんかじゃないとなれないとか、それっぽいこと聞いたぞ。

 そしてここ重要、この世界でのリッチって「幽体じゃなく実体」で、「見かけはスケルトン」なんだって。首刈り峠のこと聞いたときリッチについても聞いてて、所変わればだなーって思ってたから間違いない。

 こいつ、なんで骨以外まであるんだよ?


「この鎌で刈った魂は、私の肉体再生につかえるのだよ! 素晴らしいだろう!? 私はリッチでありながら肉体を得ることができるのだ!! この鎌は生前リッチになったあとのことを考えて作った、私の最高傑作だよ!」


 生きてる時からリッチになる準備かー、こいつ友達いなかったのかね? 普通誰か止めるだろ!?


「へーそう。……ちなみに、あとどれくらいの人間が必要なの?」

「そうだね、100人もいればある程度は完成するかな。150人もいれば完璧だろう」

「…………そんだけの生きてる人間を殺すの?」

「おかしなことを訊くね? たかがそこいらの人間と、賢者とまで言われた私の頭脳、どちらが大事だと思うかね? わたしがいれば、この鎌のような素晴らしい道具を作り出せるのだよ。私はまだまだ知識の深淵を見ていない、もっともっと、無限の知識が欲しい!! 彼らの命はそんな私のような無念の死者のためにも活用すべきだ!」


 賢者だったかどうかなんざ知らないけど、頭いい死者はみんな他人の生を犠牲にしてでも生き返りたいと思ってるわけだ。……これ頭良すぎて逆にどっか馬鹿とかいうやつだ。

 俺なんて自分でも24歳にしてはちょっと馬鹿すぎね? って常に思ってるけど、何かこいつ見たあとだとマシだと思えちゃうわ。


 しかしこれ、野放しにしたらとんでもないぞ。こいつの場合アンデッドのままになるのか死者蘇生になるのか知らないけど、管理人さんが苦労するわけだよね。こういうの、死んでも地上にしがみつく魂って言うんでしょ? 

 あ、俺も今は人のこと言えないけど、俺の場合一応は管理人さん公認だし、大体他人を殺して生きようとは思わないわー。 


「はー、…………あーだめだ。話しになんない。悪いけどもう話は終わり」


 俺はまだ続きそうな話を遮って、重力結界に光魔法をまとわせ、リッチの周囲に内向きに結界を張った。

 

「ふむ?」


 リッチは流石に光魔法に直に触れることはせず、鎌で一閃して消し去った。

「なるほど」ーー小声で呟いた俺は、間をおかず再度張った結界の周囲に、電柱の太さの光魔法を円環状に配置し、リッチを囲う。一見、古代遺跡。


「こんなものーー」


 最後まで言わせず、その合間から光魔法の矢をどんどん飛ばし初める。

 量を増やしていくとリッチも焦ったのか、自分に放たれる光の矢を鎌で切り裂きつつあちこち飛び回って回避しはじめた。数本が体に刺さったようだが、かすかに呻くだけでほぼ気にしない。

 ふむ、さすがに矢の1本や2本刺さっただけじゃ無理か。


「力押しかね、こんな単純な手しかなかったのかね!?」

「こういうのは単純な方がいいんだよ」


 まぁ、単純だから手加減するとも言ってないけどね。

 自分の魔力に今のところ際限がないが、せっかくなのでこいつで検証することにする。

 まずは大量に矢を作る。10、20、30……100本は作れたんじゃないか。順次リッチに向けて飛ばしつつ、どんどん本数を増やして弾幕を張ってみる。100本を超えた頃にはものすごい光量になって周囲が眩しい。ふむ、200本くらいだと制御もできる。

 昨夜の練習の成果でホーミングと精密動作が可能になっているので、弾幕の合間に外から回り込んで狙い撃ちする矢も混ぜておく。

 しかしリッチにはもう10本は超える矢が当たっている筈なのに、さして影響が見られない。くそ、やっぱり高位アンデッドだけあって今までとは違うか。


 しかしこちらも幸いなことに、結構な時間弾幕を張っていたが疲れはなかった。

 地球の管理人さん、くどいようですが……重力操作といい、底なしの魔力といい、こういうのチートっていうんですよ? ほんとに俺らが使ってる意味でのチートって言葉理解してた? いや貰えたこと自体は大変ありがたいけど、これでチートじゃないとか言うと、チートってなんだっけっていう。

 

 弾幕は切らさなかった。常に最低100本以上、リッチの本体が見えなくなるまで弾幕を張り、その間に、斬られた円柱の外にまた電柱の太さの光魔法を何重にも立てて配置。

 いまのリッチは、光の電柱に閉じ込められて光の矢を射られている。一見不利だが、リッチには光魔法を切り裂ける鎌がある。それでどんどんと矢も柱も斬られていく。


 しばらく、イタチごっこが続いた。どれだけ経ったのか感覚が麻痺しててわからない。

 俺の方はまだ全く疲労もなにもない。

 しかしリッチの方は、神経を切らさず光の矢を切り裂き続けた鎌の速度が徐々に鈍る。そして多少の犠牲を覚悟したのか、矢を無視して自分を囲む光の円柱を切り裂くのを優先しはじめた。


 当然、円柱をどんどん追加する。矢に円柱にと飛ばしながら、アリシアたちを確認。うん、人質に取られる位置にはいない。


 さて、勝負。

 円柱の円環の外に出たリッチに、俺は特大の光の柱を3箇所から同時にリッチに仕向けた。


「しつこいですね、こんなものもう効きませんよ、ーーーーえ」


 リッチが目の前の円柱を斬り払った直後ーー。

 俺はほくそ笑んだ。



 ぱきいん、とリッチの鎌が、付け根を4/1ほど残して折れていた。



「な、なに……?」


 よし、狙い通り!!

 自信作で切り札でもある鎌を失って、呆然とするリッチに、俺は言った。


「俺、最初からあんたの本体なんて狙ってなかったんだよね。狙っていたのは『鎌の疲労』だけ」

「鎌のーーーー」

「それ、いわゆる、えーと『邪属性武器』っていうんでしょ。『聖属性』とか『光属性』と相性悪いんだよね? だから、とにかくあんたにガンガン武器を使わせて武器自体を疲労させて、最後に振り下ろした時の隙を狙って鎌に圧力掛けたわけ。やったのはそれだけだよ。

ーーだから言っただろ、こういうのは単純なほうがいいんだって」


 そう、最初からリッチ本体なんて狙ってなかった。狙っていたのは最初から鎌の疲労、いわゆる武器破壊ってやつだ。

 だってリッチ本体には多少とはいえ光魔法が効くんだよね。だから鎌さえなんとかしちゃえばいずれ勝利は見えてくる。もしリッチが先に消滅してもどうせ鎌は処分せざるを得ないんだから、先により危険な方を優先した、それだけだ。


 「……さてと。もちろんあんたも逃さないよ」


 再度内向きの光魔法結界を張って、そこを大量の光の矢の弾幕で、今度こそ消滅させる。


「いけ!」


 俺が手を振り下ろすのを、リッチはようやく冷静に戻ったのか器用に避けていいる。それにホーミングをプラスし、何度か矢の当たっている場所を重点的に突いていった。


「……くぅッ!!」


 リッチは、すでにかなりの矢を受けている。だがまだ耐えていた。生命力が他の悪霊と段違いだ。

 

 だけど、鎌のないただのリッチなら、際限なく光魔法を使える俺の敵じゃない。

 次はお前の番だ。




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