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24 なんという最強防御


 それからしばらく道沿いに進み、ついに首刈り峠のある山の麓にやってきた。

 ただもう陽が落ちかけているので、一旦今日はここまでにして野営することになった。

 アリシアの影が少し長くなったのを見てそう思ったけど、そこから視線を移して自分の足元を見ても、ちゃんと影はできていた。

 ……そうか、光魔法で体を透けなくしてるんだから、光は遮られてるよな。なんかちょっとだけ自分がちゃんと存在してるって証明のような気がして嬉しくなった。


 峠の上まで行かなければ被害はないそうだし、ここは辻馬車も通る場所だから安全だ。念の為、峠のある山とは道の反対側の林に陣取った。


 俺はロキに、アリシアがバケツへ注いでくれた水を飲ませている。アッシュにも小皿に注いでやったけど、この子、何たべるのかな。今まではアリシアが果物とか与えてくれてたからそれでいいのかな。肉とかもいるかな? いろいろ食べさせてみるかな。ロキは水を飲み終わると周辺の草を食べ始めたので、俺はバケツに残った水でロキの体を流すことにする。専用のブラシも買ってきたし、やりかたも教わったから大丈夫のはず!

 濡らしたブラシで、ロキの体を上から順にこすっていく。ロキはもっしゃもっしゃ食べながら俺の方を向いたけど、気持ちよさそうに目を細めただけだ。

 よし、合ってる! 馬とも爬虫類とも似ていて違う生態だからあんまり勝手にできないけど、ロキの顔を見れば大丈夫かどうかはある程度分かるからな。


 そのまま体全体のブラッシングを終えると、アリシアが持っていた食材をアッシュに食べさせてくれていた。


「ご苦労さま、ルイ。アッシュはやはり果物が好物のようだが、雑食性で、私の携帯食や木の実も干し肉も食べたし、野菜スープも飲んでいた」

「そっか、助かったよ。じゃあ基本はアリシアと同じ食事で、辺境伯領では日持ちする果物を多めに買おうか。アリシアは食べた?」

「ああ、アッシュと一緒にな」


 うんうん、よく食べてしっかり休んでね。

 明日は決戦だし。俺は寝られないからいつも通りだけど、アリシアたちは万全の体制で臨んで貰おう。戦闘に参加しなくても、逃げる時に疲れていては困るし。

 できるだけゆっくり寝られるように……


 ……寝られる、ように……ーー?

 

「アリシア、今まで気づかなくてごめん!!」

「いきなりなんの話だ?」

「アリシアの睡眠、もっともっと快適にできたのに、俺が間抜けなばっかりに今まで地面に寝せてたなんて……」

「……すまん、私でもわかるように話してくれ」


 そう、俺は今更気づいたのだ、重力操作の便利さと応用の仕方に。

 結界、外からは触れるのだ。入れないだけで。なら外向きの反発の強ささえ変えれば、箱型ベッドなんて簡単にできるのではないかと。

 ーーと、試したものが今目の前にある。透明で作ったので、少し濁らせてアリシアにも見えるようにする。


「すごい、これ乗っていいのか?」

「もちろん!毛布敷いて寝てみて!」

 

 アリシアがおずおずと手を伸ばし、結界ベッド? エアマット? をぽんぽんと叩く。そしてそこに横になった。


「……すごいな、体に何の負担もない。最高級の寝心地だ……」

「やった!!」


 今夜からのアリシアは所構わず、ダンジョンでも快適に寝てもらうんだ!


「そこに二重結界かければ完璧にプライバシーは守れるよ」

「すごい……ルイは寝ないのに、私のために作ってくれたのか、……本当にありがとう」

「どういたしまして!」



 うむ、これで仲間たちの安眠は守れるな。 

 俺は今夜は明日に備えて、光魔法の練習でもしてよう。

 俺がいま考えているのはホーミング、追尾だ。光自体をどう操ればいいかはなんとなく解る。感覚の問題だからどこがどうって言いにくいんだけど、一度認識すれば俺が見なくても対象を補足したままになる。

 光の矢を動かしてみる。少しズレが生じる。この状態で当たらないと、対象物が動いた時に当たる訳がない。とにかく1本の木を目指して、俺があちこちに飛びまわる。相手が動くんだから本当はこの逆なんだけどね。

 要練習!



「おはよう、よく眠れた?」

「眠りすぎるところだった。このベッドはまずいぞ、魔性のベッドだ。二度とほかのベッドに寝たくなくなる!」

「……えーと? 気に入ってくれてなにより」


 ちゃっかりアリシアと同じベッドに丸まって寝ていたアッシュも起き出し、俺に体をすりつけてくる。


「はいはい、アッシュもおはよう。ロキもね」


 アリシアが洗顔や食事をしている間、俺はアッシュにいろいろ食べさせてみることにした。昨日アリシアに聞いたようにほんと何でも食べる。クンクン匂いを嗅いでから、もっきゅもっきゅ食べる姿が何とも愛らしくてスマホが欲しくなる。

 ロキはもうとっくに結界内の草を食べ尽くしていたので、慌てて結界を解除する。

 あ、結界って自由に出られるけど、一度出たら入ることはできないから、ロキは夜中も外に出なかったってことか。結界が自分を守るものってわかったのかな、すげぇ頭いい!!



「さて準備いい? これから決戦の地に入るよ!」

「大丈夫だ。私達は向こうの手が届かない位置で待機している」

「うん、お願いそうして」


 ゆっくり朝の支度をしてから出発する。配置や逃げ道なのど話しをしながらロキにまたがり、首刈り峠に向かう登り道を進み始めた。

 人が通らなくなったからか、鬱蒼としていたがなんとかまだ街道らしきものが見える。それを頼りに登って行くこと三時間ほどした頃だった。


「……いる!」


 おれは反射的にロキを止めさせた。

 あの感覚が来た。ぞわっとする、鳥肌案件ーーを、10倍くらいにした感覚。

 まずいぞまずいぞ。これはとんでもないのに当たったかもしれない。


「もう少し下がってて、ここはまずい」

「了解」


 アリシアは直ぐに反応してロキを後退させてくれた。通じるか分からないが、ロキごと覆うように大きめの結界を重ねがけする。

 そうして三重の結界ができてから、俺は奥に向かってひとりゆっくり進んだ。


 ……どこだ? いる感覚があるのに姿が見えない。リッチってことは俺のように姿が消せるわけではないはず……


 「…………ッ!!」


 ゴウっと、自分の首を何かが突き抜けて行ったのがわかった。

 ないはずの汗が、額を伝うような感覚がした。


 そしてすぐに理解した、本当なら俺は()()()()()()()()()()、と。


 振り返ると、俺の斜め後ろにいた骸骨が「ほう?」と声を上げた。


「あれで何故生きているのかね……? うん? 君はゴーストか? ……いや、それでも私の鎌が通用しないなどあるはずがないのだが」

「……いきなりご挨拶だね」


 即死攻撃。

 俺の首を通り過ぎたのはそれだ。

 こいつの鎌は、物理で殺し、魂も殺すものだ。おそらく首を腕などで防御しても、どこかに当たれば即死する、最凶で最悪の攻撃だ。

 しかし、だ。それは俺が相手の場合以外だ。


 俺に効かないのは、もちろん管理人さんが片手間で与えてくださった「状態変化無効」のおかげだろう。最初は意味が判らなかったが、今その凄さを実感した。俺の幽霊としてのあり方を変えてしまうものすべてを無効化してくれるんだ。なんという最強防御! これ完璧チートじゃないですか管理人さん? 即死攻撃にすら対応してみせたよ……。

 そうと分かればこっちの反撃だ。


 俺は、ざっと十本ほどの光の矢を作り出し、骸骨ーーリッチーーに向かってランダムに飛ばす。

 もちろんこれはただの様子見だ。

 しかし、リッチは驚いたように一瞬止まってから矢を避けた。


「ゴーストが光魔法を操るだと……?」


 ああ、そういえばそれは通常ありえないんだっけ。 

 俺は、リッチが矢を避けたことで光魔法が通用すると踏んで、少しずつ攻撃を激化させていく。まずはホーミング……もどき。昨日の夜練習した光魔法の応用だ。しつこく追尾させてやる。


「お前は一体何なのだね?」

「それは俺のセリフだよ、あんた一体なんなの? 何の目的で人の首なんて刈ってるわけ!?」


 お、俺が初対面の他人に敬語じゃないの久しぶりかも。って、こいつを敬う気なんて欠片もないけどね。

 リッチは「ああ」と言いながら俺の質問に答えるように留まった。



「ーー見るがいい、私の体を」


 言い方ァ!!!

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