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16 早期発見、早期討伐


 次の日俺達は、冒険者ギルドの受付嬢リリーさんに、今後正式にパーティとして組むことを告げて、めちゃくちゃ喜ばれた。一応男(体はないとしても)なのに喜んでくれるってことは、ちょっとはリリーさんからも信頼してもらえてるってことだろうか。


「やったわね、アリシア。仮じゃなくて正式に組むのって初めてよね!」

「そうなの?」

「……ああ、今まで組んでいたのは全部、お試しの仮のパーティだけだ。それですぐダメになっていた」

「ほんと当たりが悪かったんだね……」


 同情を禁じ得ない。美人には美人の苦労があるようだ。ていうか、こんだけのすごい美人を口説くって、男の方も自分に自信があったんだろうか。俺だったら高値の花すぎて見上げるだけで満足するんだけど。


「それで、次のお勧めの依頼はあるだろうか」


 アリシアが本題に入ると、うーん、とリリーが腕を組んだ。

 眉をしかめて、それから横の書類パラパラとをめくるが、ややあって首を振る。


「あるにはあるんだけど、護衛依頼がいくつかね」

「…………無理」

「あー、それ俺もダメです」


 物を食べない、眠らない、を誰にも悟らせず、誰にも触れないとか、難易度高すぎる。アリシアも他人がいると(特に男)、好色な目で見られるだろうし、それが依頼人となると苦労するだろうことは想像に難くない。

 できれば俺達二人だけの方が気楽だよなぁ。

 これから先も俺は他の人と組むのは難しい。俺の正体を知ってて黙っててくれて信頼できる人とか、そうはいないだろうなぁ。


「そうね……、ああ、ダンジョンに行ったらどう?」

「ダンジョンですか!? 地下に伸びるやつですか、塔とかになってるんですか!?」

「主に地下よ」


 異世界ものの定番だ、マジであるんだ。うわーー!

 やばい、テンション上がる!! 

 でも何でここでそれを勧めるのかっていう俺の疑問を汲んだのか、アリシアが説明してくれる。


「ダンジョンは、コッパー以上のランクの者ならいつでも入れる。成果物によってあとからギルドのランク査定もしてもらえるので、いい依頼がない時はダンジョンに潜ることがよくある。宝箱に当たれば一攫千金も狙えるので、ダンジョン専門の冒険者もいるくらいだ」

「へぇ、夢があるね」

「今のアリシアなら二人いれば10階層を余裕で超えられるでしょ?」

「10階層?」

「……私も今までソロで何度もダンジョンには潜っている。だが一日に潜れる階層はせいぜい3~4階層くらいだから、一人だとどうしても7~8階層までしか行けなかったんだ」

「ああ、夜間の見張りの交代要員が必要みたいなこと言ってたもんね」

「それに、金ランクの条件の1つに『1パーティでダンジョンの10階以上をクリアする』っていうのがあるわ。これでうまくいけば金の査定が受けられるわよ!」

「よし、じゃあダンジョンに行こうよアリシア! 俺も一度行ってみたい!」

「そうしようか。連携のいい練習にもなる」



 これで異世界でやってみたいことの一つが叶うな!

 なんて単純に浮かれてたら、アリシアがこそっと「辺境伯領のダンジョンにはアンデッドの階層があるぞ」と教えてくれた。

 うわ、それ覚えててくれたんだ、嬉しいな。俺の目的にも合致するし一石二鳥だ!


「ニー」

「……あ。そうだった。すみません、この子の従魔登録お願いしたいんですが」

「はい、じゃあこの書類を書いてね。……ん? この子、種類はなんていうんですか?」


 渡された書類を埋めながら、リリーさんでもわからなのかと不思議に思う。

 俺の肩の上で大人しくしていたのに、このタイミングで声出すって「わすれないで!」って言ってるみたいで、なんかほんとに言葉通じてそう。うん、話せてもかわいいだろうなー。


「いやそれが、誰も知らなくて。でもすっごく人懐っこいので大丈夫かと思ったんです」

「……うん、確かに攻撃は加えそうもないですね。アリシアとルイさんの連盟で登録するわ。はい、これ登録証」

「ありがとうございます。お願いします」

「うん、頼む」



 さて、すごい今更なんだけど、この国はトレア王国というらしい。そしてここは、王都から見て東の方にあるラフィガルド伯爵領。この東隣はダラート辺境伯領で、その先が別の国らしい。帝国とか言ってた。

 今現在は帝国との停戦協定が結ばれているらしいが、戦争ともなると辺境伯領が防波堤になり、万一抜かれたときはこの街が帝国の防衛を担うことになるのだそうだ。割と需要地点だ。

 ーーどうでもいいけど横文字って覚えづらいよな。人の名前くらいならなんとかなるけど、貴族の姓とか国名とか無理。あとで俺も自分用の地図買って読み込んでおこう。


 この国にはいくつかダンジョンがあるが、一番近いのはそのダラート辺境伯領らしい。そこは割と有用な物が多くドロップするとかで、国中から腕に覚えのある冒険者が集まるらしい。

 ……という説明を、今またアリシアの部屋で聞いていた。


「ダンジョンてどのくらいの深さがあるの?」

「ダラート辺境伯領のダンジョンは、確か現在12階層まで到達しているのが最先端のはずだ。もしかしたら20階層ほどになっているのでは、という見解だ」

「え、割と浅いね。もっと50とか100とかの階層があるイメージしてたよ」

「そんな深いダンジョンは聞いたことがない。10階を超えられたら一流、20階に到達したら超一流だ」


 地球のファンタジーで勝手な想像を膨らませちゃダメだね。


「そもそも、ダンジョンとは一種の魔物だ。有用なものを取ることはできるが、それも宝箱も、すべて冒険者をおびき寄せるための餌だ。見つけ次第討伐せねばスタンピードが起きることもある」

「スタンピード、ってなんだっけ? どっかで聞いたことあるけど」


 ネットでだっけ、ラノベだっけ? 多分その辺だ。


「魔物が迷宮から溢れ出し暴走することだ。街が1つ滅ぶこともある。だからその前に討伐する。どこのダンジョンでも早期発見、早期討伐が推奨されているのはそのためだ」


 病気か!


「内部のドロップ目当てでわざとダンジョンを生かしておいたりはしないの?」

「しない。どれだけ有用でもスタンピードが起きる可能性は残さない。それにダンジョンを討伐できたら、地下にあるダンジョンを支配しているダンジョンコアがかなりの高値で売れる。国家レベルのオークションでたくさんの都市が競合して買っていくレベルだ。ダンジョンを討伐するのが夢の冒険者も少なくない」

「へぇ。で、ダンジョンコアって魔石なの?」

「いや、魔石に近いがより魔力の純度が高く大出力の別ものだ。大体のダンジョンは最初2~3階層でできる。その段階で討伐できればほぼ被害はないし、魔物も弱い。しかしそれでもダンジョンコアは10センチ程度あるから、売れば一生遊んで暮らせる」

「うわーそんなに高いんだ! そりゃみんな狙う訳だね」

「そうだ、浅いダンジョンが一番少ない力で稼げるから、皆できたばかりのダンジョンを躍起になって探す。だから大きく育つまで見つからないものはあまりない。今各地にあるダンジョンは、その初期に見つからなくて成長してしまったダンジョンだ」

「ほう、じゃあまだ討伐されてないってことは、最深部はどこまで育ってるかわかんないってこと?」

「そう、つまり、実力があって下の階層に行ければ、まだ宝箱が残っているとも言える」

「うわーロマンだなぁ! 行こう行こう! すっごい楽しみ!!」


 アリシアも少し嬉しそうに頷いた。


「やっと、まともにダンジョンの攻略をできる……!」

「良かったね。しっかり準備して行こう!」


 二人で地図を覗きながら、ダンジョンの場所を教えてもらう。そこに印がついていたが、アリシアがなぞったダンジョンまでのルートというのが、まっすぐ伯爵領に行く道ではなく迂回するものだったので、不思議に思い尋ねた。


「なんでこっちの道を通らないの?」

「…………あ」


 アリシアは思いついたように地図を見下ろし、それからもう一度俺を見た。


「…………いや、……そうか……」

「え、何か聞いちゃまずいことだった?」

「いや……もうずっと滅多に人が通らない道だから、意識から除外していた。でも今はルイがいる。なんとかなるかもしれない」

「んん? どういうこと?」


 アリシアは、地図なかの、伯爵領に向かう道、その中間あたりに☓を付けた。


「ここは、山の峠になる。山自体は緩やかだし、ここを通ればたしかにかなり早く辺境伯領に着くだろう。ただ、この地点に問題がある……」

「この☓つけたとこ?」

「そう。そこを通った旅人は、首を斬られた姿で発見されることが多い。俗に『首狩り峠』と呼ばれている」

「ヒェ!!」

「もちろん無事通過したものも多少はいるんだが、首を斬られた者は当然生き残らないので、犯人はずっとわからなかったんだ」

「そりゃそうか」

「でもある時、冒険者パーティーが襲われて、皆が首を斬られる中、身を隠しながら逃げおおせたシーフがいた。隠密が得意だったのが幸いしたのだろう。生き延びた男は言ったんだ、『骸骨に黒いローブ、そして大鎌を背負った死神……あれは間違いなくリッチだった』と」

「うえぇええ!! リッチって高位のアンデッドじゃなかったっけ?」

「そのとおりだ。……だが、こちらにはルイがいる。勝算はある」

「え……、いや、俺そんな高位のなんて相手にしたことないけど」


 砦の黒い奴からも逃げたしね。


「確か、ルイの目的はこの世にしがみつく悪霊退治、だったな? リッチはその典型だ。死んでも尚、目的を果たそうと生き続ける、アンデッドの中のアンデッドだぞ」

「あーー確かに。ーーあれ、ねえアリシア。ダンジョンにアンデッド階層あるって言ってなかったっけ? それってみんなそこで死んだ人なの?」

「いや、それが複雑なのだが、一度ダンジョンで死んでアンデッドになったら、ダンジョンコアを外すまで浄化してもリポップするらしいんだ。その場合、魂はあるのかないのか、私にはわからない」

「リポップするんだ……! それ、ダンジョン内だけだよね?」

「もちろんだ。だからアンデッド階層といっても、人がアンデッド化したものかリポップしたただのモンスターなのか、実は判別できない」

「そこは片っ端から浄化しまくればいいけど、問題はその峠の首刈りリッチだな」

「ああ。……どうする?」


 ルイはうーん、と今までのことを考えた。思えば、ちゃんと浄化して還した悪霊って……1人だけ? 黒いモヤはいっぱい取ったけど、戦場でも悪霊はいなかったしな。そう考えると、ここらでちょっと光魔法を鍛えるのも良いかもしれない。


「じゃあ、行くのちょっと待って貰える? 砦の刑場に、結構危なそうなのがいたんだ。それを浄化できたら……そのリッチに挑んでみるよ」



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