表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/59

11 もう結界名乗っていいよね?


 さて、じゃあアリシアに認めてもらえるように張り切っていこう!

 それからもう1匹だけ、角のついた…なんだろう、狐? たぬき? っぽい、よくわからない四足のモンスターを仕留めた。ルーパとかなんとか言ってたけど、多分地球にはいない系統の生き物だ。

 うん、当たり前だけど、俺たちが知ってる生き物だけじゃないんだな。


 しばらく歩いて日が傾いてきたころ、道の脇の待車場のような広めの場所で野営することになった。

 目的地はすぐそこらしいが、モンスターの巣窟(そうくつ)になっているそうなのであまり近づくのは危険だ。

 アリシアは持ってきた背嚢から乾燥野菜を取り出し、簡易に石を組んだ(かまど)に枯れ木を拾って入れて火を付けた。鍋を取り出して魔法で出した水と野菜を入れ、干し肉のようなものもちぎっていれていく。


「ルイも食べられればよかったのだが」

「うん、見てるだけで十分だよ。遠慮しないでいっぱい食べてね」

「ありがとう」

 

 それから食事の準備をしているアリシアを横目に何か手伝いをしようと、アリシアが出した虫除け? を設置方法を聞きつつ設置する。見るからに香取線香系だな。

 スープと黒パンに載せたチーズの夕食を取るアリシアに、寝る方法を訊く。

 どうもテントなどはなく、毛布をかぶって火のそばで寝るのが一般的らしい。あああ、そういうの聞くとハンモックとか作ってあげたくなる!


「……私が一人の時は、交代できる見張りがいないから徹夜だった。だからダンジョンなどにも日帰りか、徹夜しての2日ほどしか潜ったことがなかった。それがゴールドに上がれない理由でもあった。一人でもパーティメンバーがいれば、野宿ができるのが嬉しい」

「うん、それに俺は眠らないゴーストだから、寝ずの番は一晩ばっちり任せてくれていいよ!」

「ああそうか……半分づつにする必要すらないのか。ルイは疲れないのか?」

「いやー全然。夜中に色々やってるのも楽しいし。頑張ってアリシアの睡眠を守るよ!」

「……ありがとう、本当に助かる」


 できたら、テントじゃなくても何かアリシアを隠せるものがあるといいんだけどな。結界とかってできないのかな。

 そう聞けば、結界魔法というのは魔道具としてあるらしい。魔道具とは、魔石を動力源にして使う道具類らしい。電気の代わりに魔石を使った家電みたいなもんかな。但し、結界は小出力のものは開発できず、10センチほどの魔石を数個使って都市全体にモンスター避け(物理ではなくモンスターが忌避するようなもの)を張るようなものだけだそうだ。


 んー、重力魔法でできないかな、もしかして。

 モンスター避けってのは無理だけど、物理の結界。

 四角の、外向きの重力の箱をイメージする。俺じゃ出入り自由だからわかんないか……、ちょっとアリシアに試してもらうかな。


「ねぇアリシア、ちょっとアリシアの周囲に結界(仮)っぽいの作ってみたんだけど、外に出られる?」

「え、ん? ……どこにあるんだ? 見えないが」

「あそっか、場所はわかったほうがいいかな。光魔法でちょっと透明度を変えて……。うん、磨りガラスっぽい。これでわかるかな。どう、通れる?」


 結界(仮)からそろそろと一度外に出たアリシアは頷いて、次にもう一度戻ろうと結界(仮)に触ってすぐに手を離した。何度か試してルイを振り返った。


「外からだと跳ね返される!」

「やっぱり! これで一応の結界(仮)できたよ、一方通行だけど。アリシアが中にいるときに周囲に張れば、モンスターや虫は跳ね返される。そしてアリシアは出たいときに出られる。これを寝るときに張るのどうかな?」

「す、すごい。これは安心して寝られる…!」 


 アリシアは結界(仮)を触りながら心持ちはしゃいでいる。クール系で無表情っぽいアリシアだけど、ちょっとした感情の変化は見て取れる。


「あ、俺は出入りできちゃうや」

「ルイなら自由に出入りして構わないだろう。安心して寝られるというのは、冒険者にとってこれ以上ない贅沢だ」

「おお、良かった。ちょっと役に立てたかな」

「ちょっとどころじゃない、すごい。誇っていい」


 あんまり褒められると照れる!

 でも、攻撃力のなさを補う何かがあってよかった。

 ていうかさー、やっぱり重力魔法ってすごいチートだよ管理人さん。すごい応用利くもん。


 それからしばらく明日の話をして、アリシアは横になった。

 普段冒険者は木を背にして座ったまま寝て、モンスターの気配があれば飛び起きるらしい。でもそんなの寝た気にならないだろうと、俺の背嚢にあった毛布を地面に敷いて、アリシアには横になって寝て貰った。


「じゃあ一応結界(仮)は二重に張っておくね。大きさは……3メートル四方くらいでいいかな」

「十分だ、ありがとう」


 あ、メートルも翻訳されてる。近い単位があるのかな。

 さて、結界(仮……ってもう結界名乗っていいよね?)内に横になったアリシアの姿は、シルエットしかみえない。

 これくらいの透明度ならプライバシーも守れるし、逆に何かあってもわかる。


「俺はまた剣の練習がてら近くをフラフラしているよ。ちゃんとアリシアの結界が見える位置で見張ってるから、安心して」

「十分安心してる」

「じゃあおやすみ」

「ああ、おやすみ」



 それから、しばしモンスターを探して森に入る。といってもそれほど深いとこには行けない。

 昼間と違って、梟のような声や、狼らしい遠吠えも聞こえる。梟はこっちが近づくと逃げるからモンスターじゃないな。

 ふむ、しかし夜の森はほんと暗いな、月明かりが差して若干見える程度だ。どうするかな、ライト点けたほうがいいのかな。どうせ俺が見えないんなら点けといてもいっか。


 奥まで行くと狼……ウルフだっけ? を見つけた。うわ、今度は集団だ。4匹……行けるかな? 剣1本しかないし……うん? 短剣も使えばいいのか。

 姿を現さないとこっちを認識しないので、これはこれで奇襲できるか。やってみよう。

 構えた剣を昼間のように回転させつつ、短剣も同じように回転させる。両方を斜め上から少し前後にずらしてV字になるように振り下ろす。

 すぱっとウルフの体が斬れた。ウルフたちはいきなり現れた剣にパニックになっている。が、こっちは見えてないだろう。

 傷は……短剣の方が深い!? そのまま勢いを殺さず戻しつつ、今度は8の字を描くようにブーメランをイメージして投げる。

 短剣は正確に同じ傷をなぞってウルフを仕留めた。長剣は背中を斬っているが、浅い。

 短剣、長剣よりずっと使いやすいぞ! 小回りが利くし、回転数もあげられる。何か俺に馴染む気がする。あと切れ味が長剣よりもいいけど、それは短剣自体の性能かな。

 そうと分かったら、いっそ長剣を下げて短剣だけを使ってみよう。

 短剣を、首元めがけて斜め上から振り下ろす。そのまま勢いを殺さず戻し、反対側も斬りつける。

 それでもう一匹も斃れた。

 うん、短剣だけのほうが思い通りに動くな。

 残りの2体も逃げようとするのを追いかけて仕留めた。うーん、モンスター殺すのに、やっぱり忌避感ないや。不思議だなー。


 アリシアが教えてくれたように、短剣で心臓付近を切り開く。手を突っ込めるわけじゃないのでその辺を持ち上げるようにしたら、内蔵と一緒に黒い石が出てきた。

 うん、内蔵は見なかったことにしよう。

 大体の位置を把握したので、他からも石を取り出した。

 石自体は小さい。大体一センチ前後くらい。但し、内臓に埋まっているのではなくするりと出てくることから、体内では何かの皮膜か空洞に覆われているのかもしれない。

 

 短剣を、もう一度回転させてみる。うん、やっぱりかなりの速度が出る。回転数も上がるし、刃が短いぶん手数が増やせるのは大きい。木の間を縫うように縦横無尽に動かしてみるが、ほぼ思い通りに動く。よし、これは使える。

 

 しばらくして一度アリシアの元に戻る。

 うん、何の問題もなく寝てるな。

 じゃあ夜明けまで短剣をもっと習熟するように特訓するとしよう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ