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グッラブ!  作者: 中川 健司
第1話 嬉しくない出会い
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第1話 嬉しくない出会い P.9


健斗たちはさっきもきた、神乃崎駅まで着いた。駅前の駐輪場に自転車を止めて、歩き始めることにした


「ここが神乃崎駅。さっき来たから分かるだろ?んでもって、踏切を渡ったとこに神乃崎商店街がある」


詳しく説明すると、神乃崎駅の踏切を渡ったところが、神乃崎商店街の入り口となっている。神乃崎商店街には商店街とだけあって、事業で営む店が1kmくらいに渡って並んでいる


健斗も幼い頃からこの商店街に立ち寄っているので、ある程度の店には顔も名前も知れ渡っているのだ


健斗は自転車に鍵をかけて、予め持ってきておいた布製の買い物袋を手にとった。地球に優しくてエコロジーだろ?そしてすぐに麗奈を見て言った


「頼むから、うろちょろすんなよ」


すると大森麗奈はにっこりと笑いながら


「はぁ〜い♪」


と答えた。この軽い返事をちゃんと受け止めていいのか分からなかったが……



健斗はポケットから母さんに渡されたメモ用紙を取り出した


豚肉500gに、大根にキャベツ、牛乳2本、その他色々……


結構買うなぁ……麗奈を連れてきて正解だったかもしんない。


「大森、行くぞ――って、あれ?」


健斗が振り向くと、そこには大森の姿はなかった。


いきなり問題発生かよ……


健斗は辺りを見渡した。うろちょろすんなっつったのによ……


「……本当に迷惑なやつ」


健斗が踏切の方へと向かうと、大森麗奈は踏切の前で、何かを見ていた


健斗は安心するかのようにほっと息を吐くと、麗奈に近づいていった


「おいっ!何やってんだよ」


健斗が麗奈に近づいてそういうと、麗奈はゆっくりと振り返った


「ねぇ、ここ改札機ないの?」


「はぁっ?ねぇよそんなもん。第一、この駅使う人そんないねぇんだよ」


つーかそんなことで勝手にきえたのかよ。捜すのはこっちなんだぞ!?


確かにこの駅には改札機がない。駅員が改札口にいて、乗客は出る際に駅員に切符を渡すか、箱に入れればいいのだ。それを珍しがるのか普通……


「へぇ〜……そうなんだ。鎌倉と同じだねぇ……」


「なぁ、ここは東京と違って都会じゃないから気になることはたくさんあるだろうけど、頼むから勝手にいなくなるなっ!!捜すのはこっちなんだよ。冒険したいなら一人のときにしろよな」


健斗はそう言うと怒ったように踏切をさっさと渡ったて行った


大森麗奈は少し戸惑いながら、健斗の後を追っていく。


「私、何か気に障ることした?」


自覚してないのかよ!?


「うろちょろするなって最初に言わなかった?」


「あぁ〜!!ゴメン忘れてた!!」


「……ったくよ……」


もうこいつと歩くの本当に疲れる……


もう本当に帰りたいよ……


訳が分からないし、疲れるし……せっかくの日曜日を返して欲しい……


商店街は今日も人が多かった。いや混雑してる程ではなかったが、結構の人がいる。それぞれの店が店前で人寄せをしている


そのためか、商店街はいつも賑やかだ


「賑やかだね〜」


「そりゃ商店街だからな」


「そういえばさ、この辺って何でも“神乃崎”何だね?神乃崎駅とか、神乃崎高校とか、神乃崎商店街とか」


「地名だから……」


「どうして神乃崎なの?」


「商店街の近くに、神乃崎神社っつう、神社があるんだけど……そこから通っているらしいぜ。何せその神社には昔、崎があって、その崎に雨を司る神様が住んでいたらしいんだ。昔の人々はそれを尊い、奉っていたらしい。神を崇めれば、村は毎日豊作になるんだと。で、その神様が住む崎を人々は“神の崎”……それが時を隔てて、“神乃崎”になったんだってさ。それがこの辺の地名になったんだよ」


ということを、健斗は小学生のときに歴史の勉強で習った


大森麗奈はなるほどと言わんばかりに感心していた


「なるほど……すごいね。良く知ってるね」


「小学生のときに習った。あと、その神社で毎年七月七日にその神様を奉るための祭があるんだ。まぁ、今では“七夕祭”になってるけどな。スゲー規模のでかい祭なんだぜ?店とかもいっぱい並んでさ」


「へぇ〜♪すごい楽しみぃ〜♪私お祭り大好きなんだぁ」



と大森麗奈はにっこりと笑った。


「よかったな。多分スゲー楽しめると思う」


健斗はそう言いながらふぅっと息を吐いた


何か……調子に乗ってベラベラと喋ったなぁ……


ちゃんと説明出来たかもしんないけど……どうでもいいことも話しすぎたかも……


そんなことを思うと、何だか自分が悔しくなってしまう……











健斗たちは、豚肉500gを買うために、いつも使うお肉屋さんに立ち寄った。


「おばさん、こんちわ〜」


健斗が挨拶すると、いつもの元気なお肉のおばさんが店奥から出てきた


「あら、こんにちわ健ちゃん。今日は何を買っていくんだい?」


「あぁ……あの豚肉500g欲しいんだけど――」


「おばさん、こんにちわっ♪」


健斗の後ろからひょこっと顔を出してきた女の子を見て、おばさんは驚いただろう。


なんともまあ、おばさんは口をあんぐりと開けている……


「あら……まぁ……すごく可愛い子ねぇ……こんにちわ」


「私、大森麗奈って言いますっ!!今日から健斗くんといっしょに住むことになりましたっ♪」


「バッ……!!」


健斗が焦りを感じて、麗奈の口を塞ぐ


しかし遅かった……


おばさんはさらに驚くような表情を見せた


「あらあらまぁ……健ちゃん、いつ彼女さんを作ったんだい?」


「いやっ!!おばさん!!違うんだって。これには訳が……」


「それに……いっしょに住む!?こりゃ大変だ!!ちょっとあんた〜!?」


おばさんは大声を出して、店の奥へと入っていった


なんだか嫌な予感がしてきた……


「何〜!?!?」


突然店の奥から驚くような大声がしたと思ったら、突然おじさんが急いで健斗の元へやってきた


「よぉ健坊っ!!やるじゃねぇかっ!!」


とニコニコしながら元気な声で言ってくる


「いや……だからね?」


「その年で結婚とは……お前も出来るようになったか……くぅ〜っ!!おじさんは嬉しいぞ〜!!」


「あのさ……だから……」


「よぉ、お嬢ちゃん!!こんにちわ」


「こんにちわ〜♪健斗くんがお世話になってますぅ」


え?


何でこいつノリノリなの?


「可愛い子だなぁ?やるじゃないか健坊っ!!」


「あの……じゃなくって」


「そうかそうか……よっしゃあっ!!今日は健坊の結婚お祝いとして、サービスしてやらぁ!!お〜い母さんっ!!」


するとおばさんが「ハイハイハイ」と良いながら、何かを持ってきた


「はい、高級な豚肉500とサービスでこれも持ってきな」


と言って、袋に詰めたのは鶏肉と牛肉ともに200gずつをいっしょにつめてくれた


「あのさ……あのさ……」


「もうっ!!お代なんか結構よっ!!大丈夫大丈夫♪気にしないで」


「いやさ……あの……」


何でこうなっちゃうわけ!?


つーか何で勘違いがこんなに激しいわけ!?


これじゃあもう誤解を溶けないじゃんっ!!


「麗奈ちゃん……だっけ?健ちゃんとお幸せにね?」


「健坊っ!!やるときにはちゃんとやれよっ!!」


「あ……」


「ありがとうございます♪健斗くんっ、行こうよ」


麗奈に導かれるように、健斗は放心状態のまま、肉屋から離れていった









「お前どうすんだよっ!?お前が余計なこと言うから、訳の分からない誤解されちゃったじゃんかよっ!?」


商店街で麗奈に怒鳴りつける。しかし麗奈は能天気なのかバカなのか、ニコニコ笑っていた


「良いじゃん良いじゃん♪良い人だったね?おばさんたち」


「良い人だけど、そういうことじゃなくって!!どうすんだよこの肉!!」


「もらえばいいじゃん。サービスって言ってたんだし」


「悪いだろ!?ただの居候なのによっ!?」


「大丈夫だよ♪早く次行こうよ」


と、大森麗奈は楽しそうにいうのであった



はっきり言って最悪だ……


最悪の展開となってしまった……


もう嫌だ……こんなの……














それからだ。次々に買いに行く店で健斗は誤解を広めてしまった


魚屋でも……


「彼女さんかい?可愛いねぇ」


八百屋でも……


「いっしょに住むだって!?おめでとう〜!!」


スーパーでも……


「あらぁ、可愛い女の子ね……えっ!?いっしょに住む!?」



買う店で、次々に誤解を広めてはとこうと努力し、しかしそのエネルギーに負けてしまう……


結局誤解は広まっていくのであった……





母さんから渡されたメモ用紙の物を全て買い終わったころには、健斗は全力で疲れきって、一言も喋らなくなっていた


一方大森麗奈とは言うと、楽しそうに周りを見渡したり、嬉しそうにはしゃいだり、元気100倍アンパンマン状態だった……



健斗は最強に不機嫌で疲労困憊のまま商店街を歩いていた


「ねぇ、健斗くん」


大森麗奈が話しかけても返事をしない。


「健斗く〜ん?お〜い?」


「……何だよ……」


「大丈夫?すごい疲れてるよ?」


「……そうだな……」


本当なら、怒鳴りたい。


「お前のせいだろっっっ!!!」


って怒鳴りたい


けど、何も言う気がしない


帰りたい……



「健斗くん、ちょっと休もうか。神乃崎神社なら落ち着くでしょ?」


そう言って無気力、無反応、放心状態の健斗を神乃崎神社へと導いていく麗奈であった





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