第4話 過去 P.10
そして次の日の朝、雨は止み……空から雲は消え気持ちのいい晴れになっていた
健斗はまだ寝ていたから気付かなかった
気持ちのいい朝に、窓から吹き込む優しい風が心地よかった
時計の針は7時半を指していた。そろそろ起きるべき時間だが……健斗は全然起きようとはしてなかった
と思ったら、健斗はゆっくりと目を開けて身体を持ち上げた
しばらくの間ぼ〜っとする。それから朝だということに気が付いた。
健斗は欠伸をしながらベッドから降りて、ゆっくりと立ち上がる
早く顔を洗って支度しないとな……
一階へ降りていって、居間に入ると味噌汁のいい匂いがした
健斗がキッチン覗くとそこには……
制服姿にエプロンを着た麗奈がいた
健斗が起きたことに気がつくとゆっくりと微笑んできた
「おはよー」
「あ、おう……おはよう」
健斗は少々戸惑い気味で麗奈を見ていた
「母さんは?」
「お母さん、今日朝早くから仕事だよ」
そっか……今日はA勤だったっけ?
麗奈は味噌汁をかき混ぜながら、健斗に言ってきた
「すぐ朝ごはんにするから、先に顔と着替え済ませてきたら?」
「うん……」
健斗はドキマギしながらさっさと居間から出ていった。
ちょっと驚いてしまった……昨日あんなことされたから、妙に意識しちゃってるのか……
麗奈がすごく大人に見えてしまった……
そうまるで朝に夫の朝食を用意する妻のように……
変な感じだ……
健斗は顔を洗い、ため息をつきながら制服に着替えて、また居間へと降りていった
居間にはちゃぶ台が出されていて、麗奈はそれに朝食を置いていた。
健斗は恐縮しながらゆっくりと座り、目の前に並べられた朝食を手につける
今日は味噌汁とご飯に、卵焼きだった
朝にしては充分だった。
「いただきます」
健斗は箸をとってまず味噌汁を飲む……
…………
「美味しい?」
麗奈も座って、ご飯を食べながら訊いてきた
「……美味い」
正直な感想だった。普通の豆腐の味噌汁だったけど、美味しかった。
「お前って、本当に料理上手だな」
「えへへ♪」
と麗奈は顔を赤らめていた
健斗はそんな様子を見ながら卵焼きを口に運ぶ
これもまた美味かった。ちなみに卵焼きは甘い味だった
健斗は塩味の卵焼きに慣れてたから、ちょっとびっくりしたけど……問題なく美味しかった
「美味いっ」
「そ、そんなに言わないでよ〜」
麗奈は恥ずかしそうに言うのを、健斗は可笑しそうに笑った
「でも美味いんだもん。お前スゲーな」
「卵焼きなんて誰でも作れるよー」
「俺……作れないんだけど」
健斗が言うと麗奈は可笑しそうに笑った
「料理ダメなんだ」
「料理と言えないもんなら作れるよ」
「何それ。まぁ確かに健斗くんそういうの苦手そうだよね」
「悪かったな」
健斗はむっとした感じで言うと、麗奈は笑いながら卵焼きを食べた。
「知ってる?料理出来る人ってモテるんだよ?」
「……だから?」
「だから健斗くん料理上手になったら、結衣ちゃん気が替わるかもよ?」
「余計なお世話」
健斗はふんっと不機嫌そうに言った
「もう諦めてんのー?」
健斗にそう訊いてきた麗奈は残念そうだった。健斗はそんな麗奈を見て、呟くように言った
「お前……俺の恋愛見て楽しんでんだろ?」
「え……まぁ、それなりに……」
健斗はそれを聞いてカチンときた
不機嫌そうに味噌汁を飲みながら言った
「とにかく、もう俺はきっぱり諦めましたから。残念でした」
「え〜?何で〜?」
「早川に好きな人いるからだよ。しかも相手はあのサッカー部の主将だぜ?学校一イケメンって言われてんのに……勝てるわけねぇだろ」
健斗は味噌汁を置いてご飯を口にした
「それに、そう思ってなきゃやってらんねぇよ……」
そんな健斗を見て麗奈は呆れるようにため息をついた
「まったく……君ってやつは……」
「何だよ」
「何でもない。ごちそうさま」
麗奈は食器を片付けて、キッチンの方へと歩いていった
「何だよ。言いたいことがあんだったら言えよな」
健斗は不機嫌そうにそう言うと麗奈は健斗を見て言ってきた
「そんなことより、早く朝ごはん食べて、学校行く準備してよ。遅れたら健斗くんのせいだからね。ちゃんと歯も磨いて……早くしてね」
麗奈は急に大人びた口調になるとさっさと居間から出ていった
健斗はそれがたまらなくむかついた
苛々が込み上げきた
「あっ」
廊下から麗奈が顔を覗かせた
「ちゃんと食器洗ってよね」
それだけ言うと麗奈は階段を上っていった
「わーってるよっ!!ちくしょう……」
健斗は何だか急に悔しい気がして苛々していた
「ったく……誰の家だと思ってんだよあいつ……」
健斗はぶつくさ一人言を言いながら朝ごはんを着々と食べていった。
「……ちくしょう!!本当に美味いなこれっ!!」
と、麗奈の卵焼きを悔し紛れに一気に口の中に入れた