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グッラブ!  作者: 中川 健司
第4話 過去
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第4話 過去 P.7


健です!!


ユニークアクセス数が10000人を越えました


本当にありがとうございます!!


毎日300人以上がこの小説を読んでくださっています


これからも応援よろしくお願いします


また評価感想等もよろしく



健斗は部屋を出て、一階へと降りていった


早く晩御飯が食べたい……腹ぺこだ。居間に入ると母さんがお膳を出して座りながらため息をついていた


健斗はその様子を見て、少し困ったような表情を浮かべた


「麗奈……まだ帰ってねぇの?」


母さんは時計を見ながら、ゆっくりと頷いた


「遅いわよね〜……大丈夫かしら」


健斗も座りながら少し不安になっていた


「電話は?」


健斗が訊くと、母さんは静かに首を横に振った


「繋がらない……」


「……あいつ……傘持っててないんだよな……」


健斗の不安は徐々に肥大した。母さんも黙り込み、居間は静かだった


時計の針の音だけが聞こえる


健斗は時計を見た


もうすぐ8時半を回る……


辺りはもうすっかり暗くなっていて、灯りなしではまともに歩けない


また雨が強くなっているから、さっきも思ったとおり川が増水してる


雷も凄いし……もし……




走って帰ってるとして、途中で足を滑らせて川に落ちてたら……


健斗はだんだんと不安が押さえられなくなってきた


健斗は立ち上がって、母さんを見た


「母さん、俺麗奈探してくるよ」


健斗がそう言うと、母さんは驚くような表情を浮かべた


「この雨の中?」


健斗は軽く頷くとゆっくりと居間から出た


玄関に置いてある傘を持って、健斗は靴を履き始める


そんな健斗を慌てて追いかける母さんは、玄関で立ち止まると言ってきた


「大丈夫なの?」


「うん……すぐ戻ってくる。あ、懐中電灯ある?」


母さんに言うと、母さんはまた居間へと歩いていった。しばらくすると母さんは懐中電灯を持って戻ってきた


「すぐ帰ってくるのよ」


「分かってるよ」


健斗はそう言うと、戸を開けて走っていった。


外は本当にすごい雨だった。さっきの弱い雨とは比ではない


さらに空には大きな音を奏でる雷……麗奈は雷が苦手って前言っていたことがあった


だから不安はさらに募っていく。雷を怖がってどこかで立ち止まってたり……または川に落ちて流されてたら……


麗奈に対する蟠りなんて忘れていた


健斗は学校へ行く道を走っていく。本当に真っ暗で何も見えない


ここにもちゃんと電灯をつけるべきだと思う。けどないものは仕方がない


懐中電灯をつけて先の方を照らしてみるが、結局は何も見えない



辺りを照らしてみる。川の方、草むららへん……慎重に照らして、麗奈を探してみる


出来ればいないことを願って……


「麗奈!!麗奈!!」


もしかしたら、草むらに滑ってじっとしてるんじゃないか?


色々なパターンを考えながら声に出して呼んでみる


けど、返事は返ってくることはなかった


健斗はため息をつくと、電話を取り出し麗奈に電話をかけてみた


「…………………………ダメか……」


やはり電話が繋がらない……


それがさらに不安を募らせた


「麗奈〜!!麗奈〜!!」


声に出して呼んでみるも、やっぱり返ってはこない


とりあえず、先の方までどんどん進んでいく。


この強い雨では、傘を差していても雨がかかってしまいびしょびしょに濡れてしまった


それでも健斗は麗奈を探し続けた



麗奈への怒りは忘れていた……どうしてだろうか……


あんなにもあいつが嫌いだったのに。


こんなに心配してしまう自分が不思議だった


あいつの、笑ってる顔を思い出す。あいつの寂しそうな顔を思い出す。あいつの怒ってる顔を思い出す



これはまるで、あの日と同じようだった


翔が死んだあの日……走馬灯のように蘇ってくる麗奈との記憶


それが健斗にものすごい不安を与えていた


さっきまでの心配が、不安で押し潰されそうなほど苦しかった


麗奈の顔が見たかった……


別に麗奈が好きだからとか、そんなんじゃない。


ただ、麗奈がいなくなるということを考えたくなかっただけだった。



焦りからか、だんだん小走りになり健斗は息を切らしていた


服やスボンは濡れてしまっている。しかしまったく構うことはない。


不安と戦いながら、麗奈を探していた


「くそっ……麗奈!!麗奈〜!!いるなら返事しろよ、バカッ!!」


すると、目の前から誰かが走ってくるのが見えた


制服を着た女の子……?


それを見た瞬間、頭に浮かんだのが麗奈だった


「麗奈っ!?」


安心感と共に、その人の元に駆け寄る


が、それは麗奈じゃなかった……健斗を通り過ぎて暗闇の中を走っていった


健斗はその女の子を呆然として見て、しばらくの間佇んでいた








それから30分くらいが経過しただろうか


麗奈は見つからなかった……まだどこかで遊んでるのか……


そう思いたかった


気を落としながら、家へと帰っていく。服はすでにびしょびしょだ。帰ったらまた風呂に入らないといけない


健斗は深くため息をついた


家が見えてくるとまた立ち止まって、辺りを見渡してみる


けどいないのは分かっているのだ


健斗はゆっくりと家へと帰っていった


「ただいま……」


小さな声で戸を開けた。


傘と懐中電灯を置いて、びしょびしょになった靴を脱ごうとした、そのときだった


ふと前を見ると、風呂上がりらしき頬をあかく染めて、Tシャツと長ズボン姿の麗奈がいた


目を丸くして驚くように健斗を見ていた


健斗はしばらく何も言えなかった……というより、あまりの安心感にしばらく意識が飛んでいたからである


「……健斗くん……」


久しぶりに聞いた麗奈の声だった。麗奈は苦笑しながら小さく言った


「ゴメン……心配させちゃって……」


「……はぁ〜……」


健斗は深くため息をつきながら、その場で座り込んでしまった


目の前に麗奈がいるという事実に、嬉しさ半分に自分が情けなく感じたからであった


「……大丈夫?びしょびしょだよ……」


健斗を気遣うように、持っていたバスタオルで健斗の身体を包ませる


健斗はそれを受け取ると何も言わず、靴を脱いで、身体を拭きながら二階へと上がっていった


安心しきって、何も言えない……


自分が情けなくって何も言えない



健斗は深くため息をつくと着替えを持って、風呂場へと向かった






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