第3話 想い
第3話のあらすじ
二人の遠かった距離を次第に縮めていく、健斗と麗奈……
そんな中、健斗はヒロからある噂を耳にする……
それは、早川がサッカー部主将を好きだという噂……
落ち込む健斗の傍にいたのは、麗奈だった
次第に想いが募りに募って……あの日、辛い過去のこと、早川を好きになった理由を健斗は自然と話し始める
全てを聞いた麗奈は……
ある日の土曜日、そろそろ蒸し暑くなってきた。ようやく五月の下旬に入ってきたから
「健斗く〜ん、早く早く〜」
せっかくの休みの日、健斗は少し季節早いポロシャツとジーパンを着て、面倒臭そうに家を出た
麗奈は可愛らしい私服姿で、車の前で健斗を呼んでいた
今日は父さんがこの前言ったとおり、麗奈の日常に置いての必需品を買いに行くのだった。
あのときは何も考えてなかったけど、今は正直面倒臭かった
かと言って、今日は昼までやることはないし……とりあえず着いていくことにした
父さんも母さんも、ゴンタも連れて家族そろって買い物に行くのだ
健斗はゴンタをリードに繋いで、ゆっくりと歩いていた
「健斗くんったらぁ〜」
「うるさいなぁ……」
ったく、元気過ぎるんだよなぁ……いつもこいつは
車まで歩くと、ゴンタを車の中へ入れた
あとは母さんが来るのを待つだけだった
麗奈は車に寄りかかりながら、嬉しそうにニコニコしていた
「……嬉しそうだな」
健斗がそう言うと麗奈は健斗に笑いかけた
「うんっ♪私こういうの好きなんだよね」
「あそう」
「今日健斗くんも付き合ってくれるんだね?」
「他にやることがないからな……」
すると車の中から父さんが出てきた。父さんは車からタバコを取り出し、火をつけた
「この前な、ホームセンターに行ったんだがいいのがなくてな……でも知り合いがベッドや机を提供してくれるって言うから、それを取りに行くんだ。気に入ってくれるといいんだけどなァ」
父さんが麗奈に言うと麗奈はにっこりと微笑んだ
「はいっ!!あ……お金って大丈夫なんですか?」
麗奈が訊くと、父さんは肩を震わせて笑った。
「大丈夫さ。ただでくれるらしいから。まぁ、君のお父さんからお金も預かってるんだけど……なるべく使いたくはないしな」
父さんがそういうと、麗奈は少し寂し気な表情を浮かべた
「そうですか……」
「お父さん……今度君に電話するって言ってたよ」
「…………」
麗奈は何も言わず、父さんの言葉を聞いて頷いただけだった
健斗はただそれを黙って見ていた
麗奈のお父さん……か……麗奈はここがお父さんの故郷と言っていて、今は外国で働いてるって言ってたな
この表情には多分なにか理由があるんだろうけど、健斗は特に気にすることはなかった
すると母さんが家の戸の鍵を閉めて、家から出てきた
父さんはそれを見ると、タバコの火を消し、笑いながら言った
「さぁて、そろそろ出発だな」