第2話 始まる学校 P.15
「健斗くん〜、待ってよ〜」
昇降口で麗奈が下駄箱に履き替えながら、健斗にそう言ってきた
しかし健斗はすでに上履きに履き替えていて、下駄箱の近くで麗奈を待っていた
「早くしろ。もう予鈴鳴ってんだぞ」
「う〜ん」
麗奈は上履きに履き替えると急ぐように走ってきた
健斗と麗奈は少し汗をかいて、息をあげながら疲れたように机に座った。けど、まだ先生は来ていない。健斗と麗奈が座ると同時に、本鈴のチャイムが鳴った
「「間に合った〜……」」
麗奈も健斗の真似みたいなことをしてきたので、健斗は少し不快な気持ちになった
「何でお前まで疲れてんだよ。ただ後ろに乗ってただけだろ」
すると麗奈がふふんと笑いながら言ってきた
「健斗くんが間に合うように祈ってたら疲れたの〜」
「何だそれ……」
健斗は呆れ返るように呟いた。まったく相変わらず訳の分からないことを言うやつだ……
健斗は息を落ち着かすと、ふと気になる方を……早川の方を見た
早川は佐藤と楽しそうに会話をしていた。もちろん、健斗の方は見てこない。けどそれでもよかった
昨日……早川が家まで来てくれたのって……夢じゃないんだよな……未だに信じられない……
あの早川がだぜ!?あの早川が……俺のことを気にしてくれて……また弁当を誘ってくれた。スゲー些細なことだけど、健斗にとっては例え親に月1万円のお小遣いを貰うことよりも、何千億倍も嬉しいことなのだ……
健斗は早川を見て昨日早川の笑顔を思い出していた
やべ〜よ♪マジで可愛い……
「麗奈ちゃんおはよう〜♪」
すると、突然ヒロが健斗たちのところにやってきて、麗奈に話しかけてきた
麗奈を心配するように、優しい雰囲気を漂わせている
「昨日はどうした?急にいなくなってさ……心配したんだぜ?」
ヒロがそう言うと、麗奈は少し微笑みながら言った
「あ、うん。ありがとう心配してくれて」
「いや……つーかお前さ、また授業サボったのか?」
ヒロは健斗にそう言ってきた。健斗は少し言いづらそうな様子を見せた
「あ〜……まぁな」
「ったくよ……言い訳するこっちの身にもなれよな」
「ワリィ。サンキューヒロ」
「私ね、昨日健斗くんといっしょに授業サボっちゃった♪」
麗奈が悪戯にそう言った。するとだった。ヒロがかなりショックを受けているようだった……
「えっ!?二人……さん……まさか……そういう関係で?」
「いや、こいつが勝手に……」
「何か授業サボるのて楽しいものだから、クセになっちゃいそう♪」
と麗奈は能天気に笑っていた。健斗はそれを見て呆れ返るようにため息をついた
ヒロを見ると、ヒロは何だか自分に言い聞かせていた……
「大丈夫……二人はまだ……麗奈ちゃんは平気……大丈夫……」
「……はぁ……」
「あっ健斗」
突然ヒロが少しにやつきながら健斗を見てきた
「昨日早川がお前のことスゲー心配してたぞ?」
健斗はそれを聞いて、突然胸が高鳴った
「だ、だから?」
ヒロはさらににやけ、肘で健斗をからかうように押してきた
「照れんなよ〜♪あとでちゃんと話しとけよ〜」
「う、うるせぇなぁ!!」
ちなみに言うとだ。ヒロは健斗が早川のことを好きということを知っていた。早川を好きになったのは中学のときで、真っ先に感づかれたのが、常に行動を共にしてきたヒロだったのだ
以来ヒロは、健斗の恋を応援してくれている。
ヒロは早川をどう思ってるのか……
「早川は確かに可愛いけど……仕方ねぇからお前に譲るよ」
などと言ってきたことを覚えていた……
「ところでさ麗奈ちゃん。麗奈ちゃんって東京から来たんだよな?」
「うん」
「東京っていいよなぁ〜……スゲー憧れる」
「え〜?そんなことないよぉ」
……今ではヒロは、完全に麗奈狙いみたいだ……
しばらくヒロと麗奈は会話をしていた
すると、先生が教室に入ってきて、みんなが席に座り始めた
「じゃあ麗奈ちゃん後でな」
「うん♪」
ヒロはルンルン気分で自分の席へと戻っていった
健斗はそんなヒロを見て、少し羨ましかった……
ヒロはどうしてあんな風に……好きな女の子に話しかけれるんだろうか……
いやヒロに限ったことじゃない。やっぱしみんな、好きな人にはあんな風にアプローチをかけるんだよな
俺もやってみようか、早川にアプローチ……でも……なぁ……
そんなやつらの真似なんかして何になるって言うんだよ
俺は俺だろ?自分なりに早川と仲良くなればいいじゃん……
自分は自分なりに早川と仲良くなっていきたいなあ
無理に仲良くなるよりも、自然と仲良くなる方が全然いいもんなぁ……
健斗は一人でそんなことを考えていた
欠伸をして、背中を伸ばしていた。