第2話 始まる学校 P.14
健斗は居間で昨日のように眠っていた。
夜、麗奈のことも気になったし……少し寝づらかった。結局俺が寝ようとするまで、あいつは部屋から出てはこなかった……
だから少し気になった……
けれどだった。結局めちゃくちゃ爆睡してしまった……
まぁ、大体こうなるのがパターン的だろう……
しかももう母さんは起きて、朝飯を並べていた
台所から顔を出して、困った顔をした
「ちょっと〜あんたいい加減に起きなさいよ〜?遅刻するわよ」
「う〜ん……」
うるさそうに寝返りをうった。完全に熟睡してしまっている……
するとだった
突然二階からバタバタと大きな音がした。誰かが階段をかけ降りてきているんだ
そして居間へ入ると、突然健斗に大きな声を出してきた
「山中健斗〜!!起きなさぁ〜いっ!!」
「うわぁっ!!」
突然の大声で、健斗は跳ね起きるように起きた。そして周りを見渡すと、麗奈が制服姿で健斗の傍で座っていた。いつもの綺麗な栗色の髪をなびかせていた。
麗奈は呆れ返るようにため息をつきながら、健斗に言った
「もう50分だよ〜?早く用意してよ〜!」
「え…………あぁっ!!」
健斗は時計を見ると、また跳ね起きた。時計は7時50分を指していた。完全に寝坊してしまった!!
すると母さんも呆れ返るように言った
「だから早く起きなさいって言ったじゃない……麗奈ちゃん、朝ごはん出来てるから食べてね?」
母さんがそう言うと、麗奈はにっこりと笑った
「はい。いただきます♪」
「あんたは早く準備――」
「わ〜てるよっ!!朝飯抜かしてたまるかっ!!」
健斗は速攻に二階へと走っていった。麗奈はその様子をクスクスと笑いながら、「いただきます」とあいさつを済ませて、朝飯の味噌汁を飲み始めた
健斗は制服に着替え、すぐに居間へと向かった
「朝ごはんは諦めなさい〜」
「うう〜……」
健斗は居間の目の前で少し戸惑っていた。朝ごはんを選ぶか、学校を選ぶか……
時計を見ると、すでに8時を回っていた。健斗は仕方なく、朝飯は諦めた……
麗奈はすでに鞄を持って、革靴を履いていた。そして戸を開けて、外に出ていた
健斗もすぐに革靴を履いて、外に出ようとした
「ちょっとちょっと。お弁当!!」
健斗はお弁当を受け取り、急いで家を出た
「いってきますっ!!」
母さんはそれを見ると、鼻でため息をついた。
健斗は自転車を塀の外まで出して、鞄をかごの中に入れた。麗奈は塀に寄りながら、健斗を待っていた
「おう。もう行くか」
ふと右を見ると、父さんがゴンタを連れて帰ってきた。タバコを吸いながら微笑んでいた。麗奈がにっこりと笑いながら言った
「おじさん、おはようございます。高校にいってきます。ゴンタもいってきます♪」
麗奈はそう言って、ゴンタの頭をゆっくりと撫でた。ゴンタは麗奈に一回吠えると、健斗の方に甘え出した
「分かった分かった。いってきます」
健斗もゴンタの頭をゆっくりと撫でてやった。するとゴンタは健斗にも一回吠える
それはまるで、「いってらっしゃい」と言ってくれているように……
きっとそうなんだろう
「大森、行くぞ」
健斗は麗奈に声をかけると、麗奈は自転車の後ろに乗る
それを確認すると、健斗はゆっくりと自転車を漕ぎ始めた
「いってきまぁ〜す♪」
麗奈は父さんとゴンタに手を振り続けた
後ろから、ゴンタの吠え声がずっと聞こえていた……
「もう〜、健斗くんって結構ネボスケなんだね?」
麗奈が呆れ返るように、健斗に言ってきた。しかし健斗は何も言えない……
昨日のことが気になっていたからだった
麗奈は昨日とはまったく正反対な態度をとってくる。昨日の怒った態度はなく、いつもの能天気な大森麗奈がそこにはいた
馴れ馴れしく、健斗に話しかけてくる。昨日俺が何を言っても、ずっと無視ししてたのに……
健斗は逆にそれが違和感を感じさせ、小さく訊いてみた
「怒ってないのか?もう……」
健斗がそう訊くと、麗奈はにっこりと笑った
「何が?」
「昨日……俺に怒ってたんじゃないの?」
健斗がそう訊くと、麗奈はクスクスと笑い始めた
「だから怒ってないって言ったじゃぁ〜ん♪昨日はちょっと、苛々してただけ。ゴメンね、怒鳴ったりして」
麗奈はそう言って、また可愛らしい笑顔を見せてきた。それを聞くと、健斗はもうそれ以上……何も聞かなかった……
もう怒ってないようだし、麗奈の機嫌が直ったなら直ったでいいか……
あまり深く考えないことにした
「ほら、そんなことよりも急いで急いで!!」
「わ〜てるよっ!!」
健斗は少しスピードを上げて、学校までの道のりを漕いでいった
本当は麗奈が機嫌を直したのを、どことなく安心していたのだ