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グッラブ!  作者: 中川 健司
第2話 始まる学校
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第2話 始まる学校 P.12


健斗たちはようやく自宅まで帰ることが出来た


西の空を見ると、日は落ちかけていた。時計はもう五時を指している。


「ただいまぁ〜♪」


麗奈は元気良く家の戸を開けた。


家へ入ると同時に、晩飯のいい匂いがしてきた。今日は……カレーだな、こりゃ


カレーとは母さんもたまにはやるじゃないですか♪


健斗がそんなことを考えていると居間の方から母さんが顔を出してきた


「あら、お帰りなさい」


麗奈は靴を脱ぎ、母さんに駆け寄った


そしてカレーの匂いを感じて、嬉しそうに笑った


「わぁ〜♪今日カレーですか?」


「そうよ。でももう少しかかるから、よかったらお風呂に先に入ってきなさい」


と母さんは麗奈に優しい笑顔を送った


「はい。そうさせてもらいます」


健斗と麗奈はとりあえず部屋へと戻った。健斗は自分の部屋に入り、鞄を置いた


麗奈はまだ何もない自分の部屋に荷物を置くと、健斗の部屋の前で立っていた


健斗は麗奈を見て、促すように言った


「先入れよ。あとから俺は入るからさ」


健斗がそう言うと、麗奈は何も言わず一階へと降りていった


健斗はその様子を見ると少し嫌悪感を感じていた。もしかして……あいつ本当に怒ってんのかな?


健斗はため息をつくと、ベッドにゆっくりと座った


まったく……別にそこまで怒ることなんて言ってないだろうに……


しかも訳の分からないことばかり言いやがって……


『私は、ちょっと人と向き合うのが苦手で不器用だけど……本当はさりげなく優しくって、自由で、しっかりと自分というのを持っている……健斗くんのそんなところが……好きだよ』



麗奈は俺に、そう言った。俺が野良猫みたいでそんな俺が羨ましいって……


俺はずっと、自分がそんな風に思ったことはなかった


やりたいことの見つからない、中途半端な生活……そんな自分に嫌気がさしていた


そんな俺を、どうして羨ましがるのだろうか?


こんな野良猫を……どうして……


まだあいつに会って、二日しか経ってないのに……まるで俺のことを昔から知っていたように見てくる



それとだ。麗奈は自分のことを、飼い猫だと言ったよな……


どういう意味だったんだろう……



健斗は時折麗奈が本当に分からなくなる


あの寂し気な表情を見せているときなんて、一番よく分からないことを言ってくる


だから俺には、本当のあいつがなんなのか……分からない。だから本当に気を許してるわけじゃないし、かと言ってそこまで仲良くなる気はない


ただ……


健斗は考えるのをやめた。何か、最近麗奈のことを考え過ぎている気がする。あまり深く考えなくてもいいよな……


あくまであいつは居候なんだから……深く考えるのはやめよう


健斗はゆっくりと目を閉じて、息を吐いた













「いただきまぁ〜す♪」


そして夕食時、上手そうなカレーが3つ置かれていた


麗奈はそのカレーを見てとても嬉しそうだった。


「美味しそう〜♪カレーなんて久しぶりですぅ〜♪」


「あら〜、もう遠慮なんかしなくどんどん食べちゃってね?あ……でも体重も気にしなきゃね?」


と母さんが言うと、麗奈はクスクスと笑った。


健斗はカレーを頬張りながら、テレビを見ていた


いつも母さんがつけているニュース番組。殺人事件や経済問題などが淡々と出ている


まぁほとんどは都市の事件だが、こんな田舎にはこんな風に日常を壊すような事件なんて起きないんだろうなぁ……


「学校はどうだった?」


母さんがカレーを食べながら、麗奈の表情を伺いながら訊いてきた。けれど麗奈はにっこりと笑って言った


「はいっ!!スッゴク楽しいです。友達も出来たんですよ?」


「あら本当?よかったわぁ〜」


すると麗奈はクスクスと笑いながら言った


「しかも健斗くんと――」


「ちょっ!?待て!!それは言うなよっ!!」


健斗はカレーを食べる手を止めて、麗奈の言葉を遮るように叫んだ。


一体何を言い出すんだこいつ……健斗は麗奈を見ると、麗奈はふふんと言った顔をしていた。その表情を見て、健斗は感じ取った


……わざと……だな……こいつめ……


さっきこいつに言ったことを根に持ってやがんのか……


「あら、何?健斗、何したの?」


「え?……っと……大森と、アイス買ったんだよ。帰りに……」


健斗がそう言うと、母さんは納得するように頷いた


「へぇ〜?二人とも仲良くなちゃって♪やっと健斗にも青春が訪れたのね〜」


「訳分からねぇよ」


健斗はそう呟くと、また麗奈を見た


麗奈はカレーを食べながら健斗を見ると、フンッとそっぽを向いた……


「でも、麗奈ちゃん楽しそうで何よりよ」


母さんが安心するようにそう言った


「はい。もうこの町にずっといたいです」


「本当に?あ、そういえば、部活は決めた?」


母さんが健斗や早川と同じことを訊いた。麗奈は少し考えると、ゆっくりと首を横に振った


「まだ分からないです。やっぱり、バイトかな……」


健斗はそれを訊くと、カレーを食べる手を止めて麗奈を見た


母さんはちょっと困り顔を作りながら、不満そうに言った


「あら〜……バイトなんかやらなくていいわよ〜?こいつだけで充分」


と母さんは健斗を指す。けれど麗奈は少し苦笑いをした


「うん。でも、私がこの家に住む分……ガス代や水道代、光熱費や食料費とかが増えちゃうじゃないですか?だから、私働いて少しでも迷惑を減らしたいから」


その言葉を聞いて健斗は呆気にとられていた。びっくりしたのだ。麗奈がこんなことを言い出すとは思ってなかったから……


それにスッゴク意外だった。こいつが迷惑だとちゃんと考えているということが……


色々考えてるんだな……こいつもこいつで……


少し麗奈を、見直した気がした……



「ちょっと聞いた〜?」


母さんが甲高い声で健斗に言ってきた


「こんなにしっかりしてるいい子っている〜?あんたも麗奈ちゃんを見習いなさいよ〜」


「いや……別に……」


健斗は少し嫌悪感を感じていた。麗奈から目を剃らして、カレーをパクリと食べた


「でも気にすることないのよ?」


母さんは麗奈に優しい笑顔を浮かべた


「生活のことなんて気にする必要なんてないわよ。高校生なんて今だけなんだから、あなたのやりたいことをやりなさい?」


母さんの言葉を聞いて、麗奈は嬉しそうに笑った。それは安心するような表情だった


「はい。ありがとうございます♪」


健斗はその表情を見ながら、カレーを一口食べた。そして、少しだけ小さく笑った



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