第2話 始まる学校 P.11
「ねぇ〜、別にいいでしょ〜?」
麗奈が不満そうに健斗に言ってくる。しかしそれを健斗は何も言わず、無視をしていた
「別にいいじゃん?人に見られてもさぁ〜」
「ダメだ。誤解されると困るんだよ。つーかもうすぐだからちゃんと歩け」
「え〜……?」
麗奈はブスッとした表情を見せた。健斗はそれを見て、少し可笑しな気分になっていた
何をそんなに揉めているのかというと、帰り道のことである
健斗は部活もやってないし、麗奈もまだ部活に入っていない
だからすぐに帰れるんだけど……麗奈が学校から自転車の後ろに乗りたがるのだ
学校の目の前で自転車に乗せてるとこを見られたら何て言われるか……
しかも、未だに噂になってる麗奈だから……よりいっそう噂が広まってしまう
だから、人目がなくなるコンビニまで歩こうと言ってるのに……
「もう疲れたよぉ〜!!まだつかないの〜!?ねぇってばぁ〜!?」
「うるせぇなぁ……」
麗奈はさっきからわめいてばかりである
健斗は深くため息をつきながら、自転車を押して歩いていた
まったく……東京者は歩いたりしないのか?
「もう自転車に乗りたい〜!!乗りたい乗りたい乗りたい乗りたい乗りたぁ〜〜〜い!!」
「だぁ〜っ!!うっせぇんだよさっきからっ!!ちょっとは黙れないのかよっ!!」
健斗は怒鳴りつけるように麗奈に言った
麗奈を口を尖らせてツンッとした様子でいった
「大体さっ!!健斗くん周りを気にしすぎなんだよっ!!いっつも誤解されるとかさぁ」
「お前は周りを気にしなさすぎなんだよ……そもそもお前が自転車を乗れるようになればいいだろ?そしたらわざわざこんな風に……」
「自転車とは無縁なんです」
「東京者はみんなそうなのかよ」
「そうっす♪東京者は自転車を使わないんだよ」
健斗は呆れたようにため息を吐いた
自転車を使わないのはお前だけだろうが……
「……ここら辺なら人目につかないな」
健斗の隣にコンビニがあるところまで歩くと、健斗は自転車にまたがった
「おら。さっさと……」
健斗は麗奈を見ると、麗奈は健斗の後ろにはいなかった……
するとコンビニの自動ドアが開く音がした
健斗はコンビニの方を見ると、何と麗奈がコンビニの中へ入っていくのが見えた
「おい……」
健斗は自転車から降りて、後を追いかけるようにコンビニへと入っていった
入った瞬間、涼しい空気が健斗の顔を包み込むようなものを感じた。
「わぁ〜♪涼しい〜♪」
「涼しいじゃねえよ。何してんだよ」
健斗がそういうと、麗奈は軽い表情を見せた
「いいじゃんいいじゃん♪ちょっと休憩タァ〜イム♪」
「ふざけるな。おいてくぞ」
「待ってよ〜!!――あ!!私アイス買おっと!!」
麗奈は健斗を無視し、アイスの方へと走っていった
健斗はその様子を見て、苛々とした。漫画でいう……あれだ。怒りマークが頭につくような思いだ
「……やっぱし……自己チューなのはてめぇだろっ!!」
健斗たちはようやく家へと続く一本道を通っていた。
何か今日一日がスゲー疲れた。健斗は右手にもったアイスクリームをペロッと舐めた
麗奈はというと、後ろに乗って鼻歌を歌いながらアイスクリームを食べていた
「今日学校楽しかったなぁ〜♪」
麗奈は意気揚々とそういい、健斗に話しかけてきた
「いい人ばかりで、友達も出来たし」
「よかったな……」
「結局健斗くん、アイス買ってるし♪」
「ウルセぇなぁ……別にいいだろ」
健斗は頬を赤く染めながら後ろを振り向いた。
「お前、部活どうすんの?」
健斗が訊くと麗奈は少し考えるような仕草を見せた
「う〜ん……どうしようかなぁ……健斗くんはどこでバイトしてるの?」
「俺?俺は……商店街の中の喫茶店で」
「へぇ〜?どこどこ?今度連れてってよ〜」
「嫌だ」
健斗がそう冷たく言うと麗奈は口を尖らせた。
「何でぇ?」
「お前がいると邪魔だから」
「そう言ってさ、私邪魔したことある?」
「ある。つーかいつも邪魔だし」
健斗がそんなことを言うと、麗奈が健斗の背中を平手でたたいてきた
「いってぇなっ!!叩くなよ」
「私健斗くんのそういうとこ嫌いっ!!」
麗奈は少し怒ってるようだった
「別に。嫌いなら嫌いではっきりしろよ」
「むぅ〜……ふんっ!!」
麗奈はツンッとした態度でそっぽを向いた
頬を膨らませて、何だか可愛いんだけど……明らかに怒ってるような態度だった
「……つーか何、お前バイトする気かよ」
健斗が少し笑いながらそう言った
「…………」
「大森」
「…………」
健斗はゆっくりと振り返ると麗奈はさっきの表情と変わらず、ツンッとした態度で健斗を精一杯無視しているような感じだった
健斗はそれを見て、また前を向いた
「勝手にしろよ……」
健斗はそう呟くと、手にもっていたアイスを一気に食べた