第1話 嬉しくない出会い P.2
家を出ると、砂利が敷き詰めた道を通った。そしてその家の前には一台の車がとまっている。その傍で煙草をふかし、煙を吐きながら父さんが立っていた。
健斗に気がつくと、煙草を携帯灰皿にしまった。
「やっと来たか。」
健斗は父さんの言葉を無視した。明らかに不機嫌だということを全面に出して、健斗は車のドアを開け、雑な動作で後部座席に乗り込んだ。
「不機嫌だな。」
「当たり前だろ。何で俺まで……」
父さんも車の運転席に乗り込んだ。健斗は未だに納得出来ない気持ちを感じながら腰を落ち着かせてため息を吐いた。
「まぁ、そういうなよ。女の子だぞ?女の子。しかも、ものすごく可愛いぞ。」
「あっそ。たいてい可愛い子ってのは性格が悪いよな。」
健斗がそういうと、父さんは何が可笑しいのか、プッと吹き出して高らかに笑った。
「カッカッカッ。お前もそういうことを言うようになったか」
父さんは車のキーをひねり、エンジンをかけた。そして車を発進させて、その例の女の子との待ち合わせ場所へと向かった。
車は一本道を通り、しばらくするとコンクリートの道へと変わる。車道を走り真っ直ぐ駅の方へと向かう。こっちの道は、建物が比較的多く建つところに出る。
健斗が高校に通うとき、この道を使う。ここから4、5kmくらい離れていて、そのさらに先に行くと駅がある。
父さんの話によると、女の子とはその駅で待ち合わせているらしい。
神乃崎駅には、「神乃崎商店街」がある。さらに「神乃崎神社」という少し大きめな神社もある。毎年初詣で賑わうのが特徴だ。
父さんは車を走らせながら、健斗に言ってきた。
「麗奈ちゃんは、父さんの友達の娘さんなんだ。確か……10年前だったけな、最後に会ったのは。6年前にも会えるかなっと思ったんだが、会えなくてなぁ……でもまぁ、小さいときから可愛い子だったからなぁ……今は凄い美少女になってるんだろうな」
父さんは一人言を言うみたいにそう言った。健斗の方はどうかと言うと、相変わらずまったく興味を抱いていなかった。
でも父さんは構わず、その子のことを色々話してきた。
「とてもいい子だったなぁ。元気いっぱいで明るくて、娘のように可愛がったものだよ。それが本当に娘になるんだもんなぁ」
車を走らせていくと、次第に建物の多くなってきた。この辺になると比較的人も増え、車線には他の車も走っている。
もう少しで神乃崎駅に着くみたいだ。そう思うと、さらに憂鬱になる……
「ちゃんと愛想良くしろよ?じゃないと怖がるからな」
「どうかな」
健斗は深くため息をついて、過ぎ行く町を見ていた