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グッラブ!  作者: 中川 健司
第2話 始まる学校
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第2話 始まる学校 P.5



健斗はいつも通り、ゆっくりと学校へ行く支度をした


ゴンタの散歩で汗を書いたのでシャワーを浴びて、タオルで髪を拭いていたときだった


台所へ行き、冷蔵庫から牛乳を取り出し、コップについで飲んでいた。すると母さんが居間から顔を出してきた。


いつも外に出るような少しお洒落をして……


「じゃあそろそろ行くけど、家の戸締まりとゴンタのご飯お願いね」


「大森は?」


健斗が訊くと、母さんはしらっとした表情を見せた


「もう車に行ったわよ。あと麗奈ちゃんにちゃんと学校のこと教えるのよ?きっと色々不安だろうから、あんたを頼りにしてんだから……」


「どうだかな……」


あの能天気なバカが不安という感情を持ち合わせているのかさえ、疑問だ


母さんは時計を見て、はっとした


「あらいけない。もうこんな時間だわ。じゃあ、お願いね」


母さんはそう言って健斗の目の前から姿を消した


ふと家のドアが閉まる音と、車のエンジン音が聞こえた


次第に車のエンジン音は遠くの彼方へ消えていった


健斗はそれに安心し、牛乳を飲み干して、居間の方へと行った


時計を見ると、七時半ちょっと過ぎ……そろそろ制服に着替えて、朝飯食って……ゴンタにご飯をあげないとな……


健斗はそう思いながら行動に移す


自分の部屋へと向かい、机の真っ正面に置いてあるクローゼットの中から、白いYシャツと黒い学生服上下セットを取り出す


いわゆる、学ランというものだ。これを着ると、かなり暑く感じる。でも学校の校則上、五月の下旬まで冬服着用なので、着なければならない


今は五月の中旬と言えよう。あと一週間の辛抱だ……


まぁ、ズボンはこっそり夏服を着ている。夏服の方が生地が薄く風通しもよいため、体感温度がかなり違ってくるのだ


またいつも健斗は学ランのボタンを2個外してるから、涼しさはアップだ



健斗は着替え終わると、また居間へと向かう。居間にはちゃぶ台が出されてあり、その上にはトースト2枚とコーヒーが置かれていた。そしてお弁当箱の入った袋……


神乃高は、学食がないからお弁当を持参である。まぁ購買部で買ってもいいんだけど……品揃えが悪いから


これらは全て、母さんが用意していったんだと思う


手際がいいなぁ……


健斗はゆっくりと座ると、トーストを噛み締めてから、コーヒーを飲む。ほろ苦い味が朝をすっきりとさせる


健斗はテレビのリモコンを手に持ち、スイッチをつけた


みのもんたの、「朝ズバッ!!」のニュースと天気予報をチェックするのが日課だ


それにしても、みのさん……よくこんな年まで頑張れるよなぁ


麗奈をみのさんの家に預けたいよまったく……


今日のニュースは、ニュースというよりも特集だった……


最近話題の、デートDVについてだった


聞いたことはある。彼氏彼女の間で、卑猥な暴力が起こること……DVドメスティックバイオレンスの彼氏彼女バージョンってことだろう……



健斗はそれを見ながら、あることをまた思い出していた



今朝麗奈と散歩に言ったとき……麗奈が何気なく言った一言……


『人をちゃんと愛することって……難しいのかもね』


大森はあのとき、このことを言ってたのだろうか?


確かに……このデートDVのように、間違った愛し方っていうのは数多く存在するような気がする



ただの性欲と、好きという感情を間違える人もいるだろう


または……体面だの印象などを気にして、それを好きという気持ちに置き換えたりと……


よく分からないことばかりだ……


それを、俺は早川がマジで好きだと言えてるから……麗奈はすごいと言ったのか?


でも……そう言われると、実際俺だって……早川を本気で好きなのか?


そう思うと自信がない。100%早川が好きなのは自分でよく分かるけれど……


しかしそれが、もしかしたら性欲なのかもしれない……または体面だの印象だのをを気にしているせいなのかもしれない……いくら口で俺は早川を本気で好きだと言っても、もしかしたら実際は違うのかもしれない……


自分のこの気持ちが、果たして真実なのか偽りのものなのか……


それが分からないとなると、麗奈の言う通り……人をちゃんと愛することというのは簡単なものじゃないと言える


しかし、恋愛っていうのはそんなに理屈のこねた考えなんて必要なのだろうか?


好きなら好き……嫌いなら嫌い……大それた言葉のいらない、シンプルな気持ちだけでいいんじゃないだろうか?



どっちも正しく、どっちも間違ってるような気がする……


麗奈は何を感じてあんなことを言ったんだろうな……




――わんっ!!わんっ!!


庭からゴンタの吠え声が聞こえた。この時間帯にこの鳴き方は、ご飯をねだっている証拠だ


健斗はふぅっとため息をつきながら、重い腰を持ち上げた


そしてゆっくりとした足取りで庭へと向かう。


縁側に置いてあるドッグフードを持って、ゴンタに近づいていった


ゴンタは甘えた声と、吠え声を出しながら健斗に餌をねだってくる


健斗はゴンタがいつも使う器の中へとドッグフードを適量に入れた。


「ゴンタ待て」


ゴンタに餌を待つように命令すると、ゴンタは待ちきれないと言わんばかりにソワソワする


健斗はもう一つの器に水を汲んで、餌の横に置く


手を目の前に持っていって……


「よし」


健斗が許可を出すと、ゴンタはご飯に食らいつくように食べ始めた。


健斗はその光景を見ながら、ハァっとまたため息をついた


「お前は恋愛とかしないのか?」


健斗が訊いても、ゴンタは餌を夢中に食べる。


健斗はゴンタの身体をゆっくりと撫でると立ち上がり、また家の中へと入っていった




大森麗奈の言った言葉が頭から離れない……


健斗は洗面所に向かい、自分の顔を見た


――……俺が早川のことを本気で好きなんだから……早川も俺のことを本気で好きになってくれる……か


一体何なんだよ……


あいつ……俺をからかって面白がってるだけなのだろうか


何だか心の中がモヤモヤする。健斗はそのモヤモヤを晴らすように、水で自分の顔を思いっきり洗った





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