第2話 始まる学校 P.4
健斗と麗奈はゴンタを充分遊ばせた後、公園内を一回りし、ゴンタの散歩を終えたという形で、ゆっくりと家路についていた
「楽しかったぁ♪犬の散歩なんて初めてだったよ」
「そりゃよかったな」
「ねぇ、明日もゴンタ散歩に連れてくの?」
麗奈がワクワクした様子で訊いてきた
健斗はブスッとした感じで答えた
「いつもは母さんか父さんが散歩するんだ。今日は何でか知らないけど、早く起きたから……」
「ふぅ〜ん……」
健斗は麗奈を見て、少し困り顔を作った
「ふぅ〜んじゃねぇよ。お前のせいで早起きしたんだぞ」
「えっ?私のせい?私なんかしたっけなぁ?」
と麗奈は不思議そうな顔で健斗にいう
健斗は顔を赤くして戸惑いながら言った
「おっ……お前が……俺の隣で……寝てたからだろうが……」
「えっ?あ〜……だったけ?」
麗奈はそれを聞くとクスクスと笑い始めた
「そんなことで動揺するなんて……健斗くんってやっぱりピュアなんだね♪」
「おまっ……そんなことって……」
健斗にとって女の子が隣でいっしょに寝てるだなんて大問題だった。
こいつは恥ずかしくないのだろうか?
昨日まで赤の他人だったやつといっしょに寝るだなんて……
「とっ……とにかくっ!!もう二度と隣で寝るなよっ」
「はぁ〜い♪ピュアな健斗くん♪」
健斗はそれを聞いてまたカチンときた
「うるさいっ!!」
健斗は麗奈を怒鳴りつけた。さっきから黙ってればいい気になりやがって……東京者が……
「……あれ?おこっちゃった?」
健斗は麗奈を置いて早歩きで歩き出した。
「もうっ……健斗くんって意外と短気?」
「お前がそうさせてんだろっ!?」
家に着くと、健斗はまずゴンタを犬小屋の中へと入らせた
「ゴンタ、戻れ」
ゴンタは健斗から離れ、犬小屋の中へと入っていった
リードを杭に繋ぎ、これでオッケーと……
後ろを振り返ると、麗奈が感心してる様子だった
「へぇ〜……ゴンタ、仕付けちゃんとなってるね」
「あぁ。どっかの誰かさんよりも礼儀正しいしな。手懐けやすい」
「それって私のこと〜?」
「ご名答大森さん。よく出来ました」
健斗はそう言って、家の中へと入っていった。
すると麗奈が健斗の前に立ち、また意味不明な行動をとる
「ワンッ!!ワンッワンッワンッ!!」
「……何やってんの?」
健斗が引き気味で麗奈に訊くと、麗奈は微笑みながら言った
「ワンちゃんの真似っ!!麗奈ちゃんを手懐けてみなさいっ!!」
「…………」
健斗は首をかしげて、麗奈を無視しながら靴を脱ぎ、二階へと上がった
麗奈は健斗を追いかけるように、そして煩く言った
「ちょっと無視しないでよ」
「うるさいなぁ……つーかお前、自分の部屋行って学校の準備してこいよ。今日お前も学校行くんだろ?」
「うんっ!!学校楽しみだなぁ」
「そりゃよかったな……」
健斗は自分の部屋に入ると、そこには母さんがベッドのシーツを持ちながら立っていた
「あらお帰り。ゴンタの散歩に行ってきたの?」
母さんに訊かれて、健斗はゆっくりと頷いた。するとだった
「ゴンタの散歩スッゴク楽しかったです♪」
と後ろから麗奈がご機嫌そうに言った
母さんはそれを見てにっこりと笑った
「麗奈ちゃんも行ったの?二人ともすっかり仲良くなっちゃって♪おほほ〜♪」
「別に仲良くなってねぇし……つーかシーツ自分で洗うからいいよ」
と言って、健斗は母さんからシーツを取り上げた
「あら、そう?別にいっしょに洗っちゃいなさいよ」
「他のと洗うと、匂いがつくだろ」
「つかないわよ。強力な洗剤使ってるんだし」
「市販のは大体当てにならないの」
健斗はそう言って、シーツを自分のベッドの上に置いた
「まったく……細かいとこ気にしすぎよあんた……」
すると母さんは麗奈を見てゆっくりと微笑んだ。
「じゃあ麗奈ちゃん、朝ごはん用意しておくから、着替えたら下降りてきてね♪」
「はぁ〜い♪ありがとうございます♪」
母さんはにこっと笑うと、今度は健斗を見てきた
「あんたも早く降りなさいよ」
「まだ早いんだけど……」
時計の針はまだ七時だった。
全然早すぎるくらいだ。
「だから今日は麗奈ちゃんが早く行かないといけないから、あんたも早く行かないといけないの」
「はっ!?」
「今日あたしと麗奈ちゃんは、校長先生にあいさつしに行くのよ。だから早めに出ないと」
「二人で行けばいいじゃん。俺はあとで一人で行くから」
「車で行った方が早いでしょ?」
「別にわざわざ車じゃなくたって……ガキじゃねぇんだから一人で行くよ」
健斗がそういうと母さんは鼻でため息をついた。
「まったく……ならいいけど、じゃあ麗奈ちゃん、支度しといてね。あっ、健斗。ゴンタにご飯上げといてね」
母さんはそう言うと、部屋から出ていき、階段を降りていった
「……何つったってんだよ」
健斗は立っている麗奈を見て言った
「健斗くん後から行くの?」
「そうだよ。はいこれ」
健斗はそう言ってシーツを麗奈に渡した。麗奈は静かに受け取ると、首をかしげた
「自分で使ったんだから、自分で洗えよ。帰ってからでいいから」
健斗がそういうと、麗奈はにっこりと笑って言った
「分かった」
「つーか、早く準備しろよ。二度も言わせんな」
「うん」
麗奈はにっこりと笑うと健斗の部屋から出ていった。
健斗はそれを見るとため息をついてから、ベッドに腰を下ろした
本当に……あいつがこの家に来てからスゲー疲労が溜まっているような気がする……
だから反対だったんだよ……女の子といっしょに住むだなんて
しかも、性格悪いじゃねぇかよ……
健斗はふとさっきのことを思い出していた
『人を本気で愛せない人は……本気で人に愛してもらえないんだよね……』
麗奈は遠くを見ながら、何かを見ながら……健斗に、そう言った。けど、健斗にはその言葉の意味はわからなかった
いや、言っていることはわかってるんだけど……どうして麗奈が、それにあんな表情を見せてあんなことを言ったんだろう?
『でも、健斗くんは結衣ちゃんを本気で愛せてるんだね♪すごいよっ!!健斗くんが本気で結衣ちゃんが好きなんだから、結衣ちゃんもきっと健斗くんを好きになってくれるよ♪』
何だよ……あいつ……本当に訳が分からねぇ。
いきなりスゲーとかいいやがって……
もしかして……俺のこと応援してんのか?
何で俺なんかを……
…………
健斗はベッドに転がった
まだあいつが来て二日か……
あんな訳の分からねぇやつと暮らしていかないといけないのか……
健斗は憂鬱な気持ちでふぅっとため息をつくのであった