表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グッラブ!  作者: 中川 健司
第2話 始まる学校
15/52

第2話 始まる学校 P.3



健斗たちは10分くらい歩くと、看板に確かに書いてある「神乃崎三丁目公園」の言葉


「ここの上が三丁目公園」


と言って、健斗は指を差した。この少し長い坂を登れば、三丁目公園だ


「本当に〜?早く行こう〜♪」


と言って、麗奈は元気いっぱいでその坂を走っていった


健斗は少し呆然として麗奈を見ていた


「……何であんなに元気なんだ?」


時々こいつがよく分からなくなる


健斗はふぅっと息を吐いた


するとゴンタが健斗に甘えた声で鳴いてくる。


「分かったよ……」


健斗はゆっくりと歩き出した。


麗奈なんか、もう上り切りそうだ


「おい……大森!!ちょっと待てよ」


健斗が声に出して呼ぶにも、麗奈はまったく止まろうとしない


それどころか、むしろスキップで坂を上っている


この早朝にどこからあの元気さが出てくるのか……


麗奈は坂を上りきり、何だか感嘆しているようだ


そして振り返り、健斗に大声で叫んだ


「健斗く〜んっ!!ゴンタ〜!!早くぅ〜!!」


「待てっつったのにぃ――うわぁっ!!」


突然ゴンタが麗奈に呼ばれたからか、この坂を一気に走り出した


健斗はゴンタに引っ張られながら、坂を全速力で上っていった。


犬に引っ張られる……人間の走力が犬に勝てるわけないのに……




そしてあっという間に、健斗は坂を上りきった。


いくら緩やかな坂でも、犬と同じくらいの速さで走ると体力が失われ、さらに足がかなり痛くなってしまった



麗奈は健斗を見て、クスクスと笑っていた


「足、速いんだね?」


「……はっ……はっ……はっ……んぐっ……ご……ゴンタのバカやろう……」


健斗は死にそうな思いになりながらも、ゆっくりと身体をあげた


「ねぇ、ここが三丁目公園?いいところだね♪」


三丁目公園は、人工的な木々に囲まれた、少し大きめな公園である。


滑り台やアスレチック、ブランコなどがそろっている


昼は子供が多いが、朝や夜は犬連れの散歩をしている人が多い


今日も犬連れの人が多いと思ったのだが……


「今日は人がいないなぁ……」


今日の三丁目公園は静かな朝だった。決して早すぎるわけじゃないと思ったのだが……


「静かなところだね♪」


「まぁな……ここはゴンタのお気に入り――うわっ!!」


また突然ゴンタが走り出した


さっきのがトラウマになったのか、それとも油断してたのか、健斗は反射的にリードを手から離してしまった


ゴンタは嬉しそうに、公園を駆け回っている。


「アハハ♪ゴンタ、嬉しそうだね」


「ったく――いつもこうなんだよな」


健斗は微笑みながら、ゴンタを見ていた


「でも大丈夫なの?リード離しちゃって」


「いや、いつものことだし……人もいないし、走らせとけばいいよ」


と言って、健斗と麗奈は公園の中を歩き始めた。


「いいところだねぇ〜♪」


麗奈は周りを見渡しながらそう言った


「東京にもあるだろ……」


「けど、こっちの方が好きだなぁ」




健斗たちは、大きな木の下に作られたベンチに座った


するとゴンタが健斗たちに駆け寄ってきて、健斗にいっぱい甘えてくる


健斗は微笑んみながら、ゴンタの頭をゆっくりと撫でてやった


「ゴンタ、健斗くんに甘えてるね♪」


「甘えん坊なんだよゴンタは」


すると今度はゴンタは麗奈に甘えてきた


本当に……珍しいことだと思う


ゴンタが初対面の人にすぐになつくだなんて……


麗奈は笑いながらゴンタの頭やあご、身体などを優しく撫でている。


「お前って……変なやつだよな」


健斗がそう言うと麗奈はにっこりと笑った


「そう?」


「ゴンタ、本当に人になつきにくいんだ。なのにすぐにお前にはなついちゃってさ……」


「だから動物には好かれやすいタイプなの♪」


「あそう……」


健斗は持ってきた袋から、緑色の野球ボールくらいのボールを取り出した


そしてゴンタの目の前までやると、ゴンタはボールを目で追った


「ゴンタ……ほりゃ」


ボールを遠くに投げると、ゴンタはボールを追いかけた


そして口で加え、とことことこっちに戻ってくる


麗奈はそれを見て、子供みたいにハシャイでいた


「すごいすごい♪私にもやらせて!!」


ゴンタから受け取ったボールを麗奈に渡す


麗奈はボールを手にとった


「えいっ!!」


麗奈は少々遠すぎるくらいのとこまで、ボールを投げた


しかしゴンタはまたそれを追いかける


麗奈はそれを見て嬉しそうに笑っていた



「ゴンタよく出来たね〜♪」


帰ってきたゴンタにいい子いい子と頭を撫でる


「それっ!!」




健斗はその麗奈の様子をみながら、あることを思い出していた


昨日から引っかかっていたこと……



昨日の時折見せた、あの寂しげな表情……


一体こいつに何があったんだろう?


こいつはいつも笑ってたり、喜んでたり……嬉しそうにしたり……毎日が楽しそうだ


けど……何でかな……


健斗には麗奈のそんな様子が変に感じていたのだ……


何かが違う……麗奈は何かを隠していて、笑っているような……不思議な違和感を感じるのだ


「……健斗くん?」


「ん……」


「どうかした?もしかして、私に見惚れてたりしてぇ……?」


「バッ……バカ……お前に見惚れるかっ!!ナルシスト」


健斗はそういうとプイッと前を向いた



でも実際、麗奈は男の誰もが一度は振り返ってしまうほどの美少女だ


顔も可愛いし、スタイルもいいし……


きっと、前の学校ではスゲーモテてたんだろう……


それを考えると、健斗は嫌悪感を抱く


東京では男を使って楽しんでたのだろうか……自分はモテると分かったやつは……調子に乗り、人を弄ぶようなやつになる


麗奈も……そんなやつなんだろうな……


だから俺は騙されない……こいつに恋愛感情なんて絶対に持ちたくない


「そうだよね〜……健斗くんは、結衣ちゃんが好きなんだもんね♪」


健斗はそれを聞いて、麗奈を見て顔を赤くした


「なっ……誰もそんなこと言ってねぇよっ!!」


「隠してたってダメだよー♪見てれば分かったもん」


「う……」


健斗はそれ以上言い返せなかった……


麗奈の言う通りだったから……



俺は……早川結衣が……好きなんだ



中学に入って、初めて見て……最初は……そりゃ麗奈と同じこと思ったよ


早川は可愛いし……勉強もスポーツも出来て、スゲーモテてた


だから最初は、人を弄ぶようなやつだと思ってた……


けど……あのときから……



「結衣ちゃん可愛いもんね〜♪そりゃ、健斗くんだって好きになるよ」


「……別に顔で選んでねぇよ」


「ねぇ、どうして結衣ちゃんを好きになったの?」


麗奈が微笑みながら、訊いてきた


健斗は答える気がなく、プイッと眼を剃らした


「別に……」


「優しいから?優しそうだもんね♪それに可愛いくて、勉強もできそうだよね……優等生って感じ♪きっとみんなからモテるんだろうなぁ……それにさ――」


「おいっ……」


健斗は麗奈を睨み付けた


低い声で、少し憤りを持った感じで言った


「人のことを簡単に言うなよ。ちゃんと人のこと分かってから物を言えよな」


健斗がそう言うと、麗奈は苦笑いをした


「別に……悪い意味で言ったわけじゃないよ。ただ、昨日の印象で言っただけ」


健斗はそれを聞くと、何も言わず、ゴンタが甘えてくるのをそっと麗奈に受け流した……


人のことを簡単に言うな……か


よく言うよな……自分だって、麗奈を見た目で決めつけてるじゃん……


健斗は自分の言ってることとしてることの矛盾さに気づき、恥ずかしくなった


麗奈はゴンタを撫でながら静かに言った


「健斗くん……結衣ちゃんのこと、本気で好きなんだね」


健斗はそれを聞いて、またイラッときた


「お前は誰かを好きになるとき、軽い気持ちで好きになるのか?」

健斗は麗奈が次にいう言葉を期待していた


けど麗奈は少し考える仕草を見せた


「どうだろう……そういうときもあったかな……」


健斗はそれを聞いて、少し安堵感を覚えた


やっぱりこいつ、印象通りの女だったんだ……


健斗は下をうつ向いてゆっくりとため息をついた


「……でも、人を本気で愛せない人は……本気で人に愛してもらえないんだよね……」


「え……?」


健斗は麗奈を見た


麗奈は静かな口調で言った


「人をちゃんと愛することって……難しいのかもね」


「……大森?」


何を……言ってるんだ?


するとだった


麗奈は突然健斗を見て、にっこりと微笑んだ


「でも、健斗くんは結衣ちゃんを本気で好きなんだもんね♪すごいよっ!!」


「はっ……?」

麗奈はさらに続けた



「健斗くんが本気で結衣ちゃんが好きなんだから、結衣ちゃんもきっと健斗くんを好きになってくれるよ♪」


と言って、にっこりと笑った


健斗は意味が全然わからなかった


何を言ってんの?


何で……こいつがそんなこと言う?


ただ健斗は恥ずかしくなって、プイッとまた眼をそらした


「うるせぇ……」


恥ずかしさを隠すため、健斗は手を開いたり閉じたりする


そしてチラリと麗奈を見ると、麗奈は微笑んみながらゴンタを撫でていた


「ゴンタいい子だねぇ♪」



訳が分からないよ


何だよ……こいつ……どうして赤の他人が……俺のことをこんな風に……



大森麗奈って……


一体……何を考えてるんだ?



健斗はふぅっとため息をついて東の空を見た


明るい太陽が、まだそこでちょっとずつ西へ傾いていた






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ