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グッラブ!  作者: 中川 健司
第1話 嬉しくない出会い
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第1話 嬉しくない出会い P.11

「大森……」


「……なぁ〜んてねっ!?」


突然麗奈は元気を取り戻したかのように、イタズラな笑顔を見せた


「はっ!?」


「冗談だよぅ〜♪そんな深刻じゃないってばっ!!お父さんとお母さんが外国で仕事をしてる間だけ、居候させてもらうだけなのっ♪」


「え……あぁ……そうなんだ」


「もう健斗くん真面目な顔してんだもん。騙されやすいなぁ君は♪」


と健斗の身体を押してきた。


「別に騙されたわけじゃねぇよ」


「そう?完全に信じこんでみたいだったけどねぇ〜?」


「るっせえなぁ……つーかもう行くぞ。暗くなる前に帰りたいからな」


健斗はコーラを飲み干して、ぐしゃっと潰して立ち上がった


元気じゃないこいつも変だけど、元気過ぎるこいつもうざったいなぁ……



健斗は麗奈を置いていくようにさっさと歩いていく。


でも、健斗は気が付かなかったけど、麗奈はその後ろ姿を、静かな笑顔で見ていた。










一つの買い物袋に収まってよかった……


健斗は買い物袋を買い物籠の中に入れる


そして大森麗奈を後ろに乗せて、ゆっくりとこぎだした


「買い物袋持ってきてよかったね♪」


「そうだなぁ……」


「今夜はパーティーかぁ。楽しみぃ〜♪」


「そんな大げさなもんじゃないぞ?」


と健斗は言ったけれど、麗奈は嬉しそうだった


「どんなに小さくても、パーティーはパーティーでしょ?」


「それは……そうだけど」


ずっと思ってたんだけど、こいつってどんなに小さなことでも本当にオーバーだよな


家でやるパーティーだなんて、別に大それたやつじゃないのに……こんなにはしゃいじゃってさ……


まるで子供みたいだ


それはいいことなのか悪いことなのか……


俺には分からないけれど……





そして、健斗は自転車をあるCDショップに止めた


それに戸惑う麗奈はすぐに訊いてきた


「あれ?ここにもTSUTAYAがあるんだ……っていうか、寄るの?」


「帰りたかったら帰ってれば?」


健斗はそう言って、買い物袋を持ってTSUTAYAへと入っていった


麗奈は口を尖らせて呟くように言った


「いじわるだなぁ……」


さっきも説明したんだけど、ここから家まで歩いて帰ると一時間半くらいかかる。


だから麗奈には選択肢がないのだ……



健斗はTSUTAYAの中の、CDレンタルのコーナーへ向かった


そして、目的のCDを探し始めた


「こういうとこは都会っぽいね」


「そうですか」


健斗は麗奈の言葉を半分聞き、半分流していた。


「どんな曲聞くの?」


「ん〜……色々」


「色々って?」


「色々は色々」


「健斗くん」


「ん〜」


「私と会話する気ないでしょ?」


「ん〜」


「……もうっ!!」


麗奈は少し拗ねた感じで、どこかに行ってしまった


健斗は麗奈がどこかに行ったのかなんてさえ気がついてなかった


そのためか、


「あんまりうろちょろすんなよ。捜すのが大変だから」


と、誰もいないのに一人で話していた





しばらく捜しているとお目当てのものが見つかり、健斗はそれを取り出した


借りたかったのは、Mr.Childrenの1995〜1999年までのベストアルバムだった


こんなかに今聞きたい曲が入ってんだよなぁ……



とりあえず目当てのものは見つかったんだけど……もう少し見てこっかなぁ?


でも遅くなるし……また今度来るか


「うしっ。大森帰る――あれ?」


ここで始めて、健斗は麗奈がいなくなっていることに気がついたのだった


辺りをキョロキョロと見回す


「またかよ……うろちょろすんなって言ったのに……」


いや、今回は八割健斗が悪い……


でも本人はそれに気がついてなかった




CDらへんにはいないってことは、DVDの方にいるのかな?


健斗はそう思い、DVDの方を見に行った





すると、健斗の山勘は当たりだった


新作が並んであるところに、麗奈は退屈そうに眺めていた


健斗はハァっとため息をつき、麗奈に近づいていった


「おいっ!!うろちょろすんなって言ったろ」


健斗がそう言うと、麗奈は健斗を見て口を尖らせた


「だって健斗くんが夢中になってたんじゃん」


「夢中になろうがなかろうが、勝手にうろちょろすんなっつってんの。捜すのは俺なんだぞ」


「何それ。私がお荷物みたいじゃんっ」


「みたいじゃなくってそうなんだよ。第一俺がお前と好きでいっしょにいると思うか?買い物だって一人で行ければ行きたかったよ」


健斗がそう言うと、麗奈は少し頬を膨らませた


どうやら少し怒っているようだった


「ひどいっ!!健斗くんのバカッ!!」


「バカで結構コケコッコ。早く行くぞ」


健斗はそう言って、麗奈を置いてカウンターに向かった


それを不機嫌そうについていく麗奈は、ツンッとしていた


「健斗くんって絶対B型だよねっ!!」


「お前だってそうだろ」


「そうだけど何よっ!!」


「自己チューってことだよ」


「カチン。健斗くんに言われたくないよっ!!一番自己チューなの健斗くんじゃんっ!!」


「ギャアギャア騒ぐな。さっき商店街でお前に振り回されたのは誰だ?俺だ」


「別に振り回してなんかないしっ!!」


するとだった……健斗は見てはいけないものを……いや、会ってはいけない人に会ってしまった……


その人を見た瞬間、健斗は全身の血が引いていった



カウンターで何かを借りている女の子。


ミディアムヘアーに、可愛いらしい私服姿……に青いスカート。一際目立つ、可愛い女の子……


そんな……何であの子がここに……



「お……大森」


「はい何ですか健斗様?」


「お前、ちょっと先外に出てろ。すぐ行くから」


「うろちょろすんなって言われたので、お荷物は動けません」


と言ってツンッとした態度を見せた


健斗は慌てて、麗奈を促す


この光景をあの子には見られたくないっ!!


「頼むから!!なっ!?」


「謝ってくれないと嫌」


そう言われると健斗は顔をしかめた


「ハァッ!?何で俺が謝るんだよ!!」


「何で謝らないのっ?」


健斗はこの糞生意気娘に我慢の限界を覚えてきた


「あのなっ!!こっちだって謝って欲しいんだよっ!!お前のせいで商店街の人には変な誤解を受けるしっ!!お前を乗せて何km自転車をこいだと思う!?」


すると麗奈の方も負けんじと言わんばかりに反論してくる


「自転車は悪いとは思ってるよっ!?けど商店街の人は自分がちゃんと言い訳出来なかったのが悪いんじゃんっ!!」


「そもそもお前がおとなしく家で待ってればよかったんだよっ!!」


「だってこの街のこと知りたかったんだもん!!」


「そら見ろ!!結局自分の都合だろっ!!自己チューが!!」


「違うしっ!!健斗くんのバカッバカッバカッ!!」


「んだと〜!?」



健斗たちはあまりの口喧嘩で熱くなっていたため、気づいてなかったのだが、二人の声があまりにも大きいため、他の人の注目を浴びていた


すると、店員が騒ぎを聞いて駆けつけてきた


「あのお客様……店内でさわがれると他のお客様のご迷惑となりますので……どうか――」


すると健斗と麗奈は声をハモらせて言った



「「うるさいっ!!」」


二人の恐ろしい剣幕に店員はたじろいでしまう……


麗奈がさらに声量をあげる


「健斗くんのトンチンカンっ!!」


「何か悪口の言い方が可愛いですね……」




「お前こそっ!!能天気のネコ型女がっ!!」


「それは誉めてるんですか?」




するとだった……


あまりにもこいつがむかついたから我を忘れてしまっていた……


あの子の存在を……忘れていた……



「あ……あの……」


「あんっ!?あっ……」


声をかけてきた女の子を見て、健斗は絶句してしまった


「やっぱり……山中くん……だよね」


「あ……こんにちわ……」


健斗は感じていました……


全てが終わった


見られて欲しくないところを……



この子に見られてしまった……





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